『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第46話「のばなし怪人ハル一番」(1986年2月23日放送 脚本:浦沢義雄 監督:冨田義治)

【ストーリー】

 木枯らしの吹きすさぶ中を買い物から買ってきたママ(大橋恵里子)は、凍った水たまりに滑って転ぶ。

ママ「ああ、いったーい」

 バケツの水も凍っている。ママは「こたつこたつ」と言うが、居間でマリ(林美穂)がこたつを修理中。

マリ「壊れちゃったらしいの。全然あったかくないもん」

 

 空き地ではカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)の神社に子どもたちが集まっていた。

子どもたち「どうかもうすぐ春が来ますように」

カミタマン「はい、何とかしましょう」

 

 道を歩くカミタマン

カミタマン「この寒さだもん。子どもじゃなくたって早く春が来てもらいたいよな」

 「何とかしましょうなんて調子のいいこと言っちゃったけど」とカミタマンは神社に行って「どうか神さま、もうすぐ春が来ますように」と祈る。

 

 夜になって根本家ではパパ(石井愃一)、ママ、伸介(岩瀬威司)、マリが寄せ鍋を囲む。カミタマンが神社でお参りした話をすると伸介が「それはちょっとずるいんじゃないの」と突っ込む。

カミタマン「しょうがないさ。春を呼ぶなんてそう簡単にできることじゃないし」

伸介「でも他の神さまに責任を押しつけちゃうなんて」

カミタマン「ああ、だいじょぶ。あそこ大きい神社だったから春くらいすぐ呼んでくれそう」

 寄せ鍋がおいしいと呑気なカミタマンに伸介は呆れ顔。

マリ「パパ、こたつ壊れちゃったから新しいのに」

パパ「ダメダメ、もうすぐ春だっていうのに。秋になったら買ってやるから」

マリ「もうすぐ春って言うけど、あと1週間ぐらいはこの寒さが」

パパ「我慢しなさい」

マリ「でも…」

パパ「デモもストライキもない。戦争中はこんな寒さぐらいみんな我慢したんだ」

マリ「ママ、うちのパパって珍しい性格ね。戦争行ったこともないのに、すぐ戦争の話したがるんだから」

パパ「いや私は、死んだパパのお父さん、いやお前たちのおじいさんから」

マリ「ママ。悪いけどこんなパパ私、認知しない」

パパ「何!」

カミタマン「やめなさいよやめなさいよ。興奮すると糖尿が出るから」

 パパは「カミタマン、飲みに行くぞ!」。カミタマンは「まだ寄せ鍋が」と言うが、パパは「いいから来い」と強引に連れて行く。

ママ「マリ、言いすぎよ」

マリ「判ってる」

 伸介は「ママ。最近おれ、色っぽくなったと思わない?」と唐突に言い出す。

ママ「バカ」

伸介「やっぱりおれ、ママの子じゃなかったんだ」

ママ「何言ってるの!」

 伸介はガラス戸を開け、外へ向かって「おれの本当のママはどこにいるんだー!」と叫ぶ。慌てて伸介の口を押えるママ。マリは黙々と寄せ鍋を食べる。

 

 パパはカラオケで「時代おくれの酒場」を歌う。見ているカミタマンは「実の娘にあたし認知しないなんて言われちゃうんだもんな」と涙を流す。パパも泣き出す。

カミタマン「パパ、いっしょに歌おう」

 カミタマンは歌本をめくって「Cの81番。「雨の西麻布」」。店の女性は「はい」とカセットをかける。

カミタマン・パパ「♪ふたりの西麻布 」

カミタマン「♪そして 女は濡れたまま」

パパ「♪そして 男は背中を抱いた」

 デュエットしたふたりは、やがて席に戻った。

パパ「カミタマン、やっぱりこたつぐらい買ったほうが」

カミタマン「何言ってんの。その分でパーっと行きましょう、パーっと」

パパ「そうね、パーっと行こう、パーっと」

 カミタマンは「北国の春」を熱唱。

パパ「さあ帰ろう。もう32曲目だよ。他のお客さんに迷惑だから」

カミタマン「次はZの4。「お富さん」。これだけ、これだけだからさ」

 パパは女性に「すみません、どうも」。カミタマンは「お富さん」を熱唱。

 

 屋台で酔っぱらうパパとカミタマン

カミタマン「毎晩毎晩飲んでばっかりで。パパ、しっかりしろって」

パパ「バーロー、こたつでもセントラルヒーティングだろうが何だって買ってやろうじゃないの。おれにはマルイのクレジットカードがついてんだ!」

カミタマン「大丈夫、春はこのカミタマンがあした連れてきてやっから。パパはなーんも心配しないでいいの。な、モスガ?」

 屋台の親父はモスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)だった。

モスガ「モスガ、春すぐ見つける。モスガ、春見つける名人」

 

 翌日、電車に乗っているモスガとカミタマン。モスガは窓を開けて「くんくん」。

カミタマン「どうだ?」

ハル「うん、春はあの山の向こう」

 

 駅前にいるモスガとカミタマン

カミタマン「モスガ、春はいそうか?」

モスガ「うん、絶対にいる」

 

 春の匂いをたどって林の中を行くモスガとカミタマン

モスガ「このへんに春が」

カミタマン「どこだ?」

 モスガは「ここだ」と唇を地面に発射。「ぎやー」と声をあげて、落ち葉の中からピエロのような怪人が出現する。それこそがハル(篠田薫)だった。ハルはモスガの唇に噛みつき、モスガは「痛い痛い」と唇を戻す。

カミタマン「お前がハルだな」

ハル「ハル」

カミタマン「よーし、モスガ。つかまえるんだ」

 モスガは口から糸を吐くが、ハルは「ハル」と言いながら受け身を取ったりして身軽にかわす。そしてハルは「ハルハルハル」と糸をぐるぐる巻きにして跳ね返してしまう。カミタマンは「何やってんの」とブーメランを放つが、ハルは木の枝にぶら下がって避ける。ブーメランはモスガに当たり、モスガは倒れて、ハルはモスガの下敷きに。

カミタマン「何はともあれ、これでいいんだ」

 ハルはカレンダーをめくる。

カミタマン「というわけで春にしてもらいたいんだけど」

 ハルは「ハルー」と困惑した顔。

カミタマン「そりゃまだ春には少し早すぎるのは判ってるんだけど」

ハル「ハルー」

カミタマン「ちょっとぐらい春が早くったって、そう世の中が変わるもんじゃ」

 ハルはうんざりした様子。

カミタマン「ようし。そば、ごちそうしちゃおう」

 ハルは急に喜んで「ハルハル」とうなずく。

モスガ「全くもう」

 

 駅でそばを食べるハルとモスガ、カミタマン。ハルは「ハルー」と喜んで食べる。やがて電車が来る。

 

 他の駅の前に降り立った3名。

カミタマン「さあ、ハル。早く春にしてくれ」

 「春が来た」の流れる中で、ハルは「ハルー」と言いながら光線を振りまく。

モスガ「モスガ、もう行く」

カミタマン「うち行ってコーヒーでも飲もうよ」

モスガ「え、アルバイト行く」

カミタマン「お前、昼間もアルバイトしてんの?」

モスガ「うん」

 ハルの光線のおかげで公園の花は咲き乱れる。

 

 カミタマンが「春はそこだよー」と言いながらひとり帰宅すると、バケツの氷はかなり溶けていた。

 カミタマンが「ハルハル」と言いながら部屋に入ると、パパとスタッフが暖房セットを設置中。

パパ「いやあ、どうせ秋には買わなくちゃいけないんだし、思い切ってマルイのクレジットで」

カミタマン「買っちゃたの!?」

パパ「これでマリも認知してくれるだろう」

 カミタマンはがっくり。

カミタマンカミタマンがせっかく苦労して世の中を春にしたのに」

パパ「ええ?」

カミタマン「パパ、庭見てごらん」

 パパとカミタマンは庭に出る。

カミタマン「ほら、バケツの氷はすっかり溶けてしまったし。あっ、植木鉢から草の芽が」

パパ「何?」

カミタマン「もうすっかり春なんだよ」

パパ「そんな」

 

 パパの想像の中で、マリはパパを手厳しく非難する。

マリ「いったい何考えてんの!?」

パパ「パパはただ」

マリ「いまはもう春よ」

パパ「でも買ったときは確かに冬だったんだし」

マリ「それはいいわけってもんでしょ。うちはサウナじゃないんだから返してきて」

パパ「しかし買っちゃったものは」

マリ「あなたはあたしのパパじゃない。ただのおじさんです」

 

 想像したパパは「ああ!」と苦悶。

パパ「ただのおじさんになりたくない。カミタマン、頼む! 世の中をもう一度冬に」

 カミタマンは「そんなこと言われたって」と困る。

パパ「私にただのおじさんになれと言うのか」

カミタマン「いや、そういうわけじゃ」

 パパは「カミタマン」と泣く。

カミタマン「しょうがない。何とかハルを説得して帰ってもらおう」

 

 ハルは謎のスプレーを噴射し、桜の木は満開に。

カミタマン「というわけで、春はもう少し後で」

 ハルは「ハル!」と言いながら首を振る。

パパ「哀れなひとりの父親の気持ちを察して」

ハル「ハル!ハル!」

パパ「そこを何とか」

 ハルは「ハル!ハル!」と首を振りつづけ、カミタマンにスプレーを噴射。

 カミタマンの体中に花が咲く。帰宅してバケツに映った自分を見て驚愕するカミタマン

 カミタマンは床屋で花を切ってもらう。

カミタマンカミタマンひとりじゃダメだ」

 

 アルバイト中のモスガは「いらっしゃい」と女学生の手相を見ていた。

モスガ「えーどれどれ。生命線がまっすぐモスガ」

女学生「それで?」

モスガ「近いうちに恋人できるモスガ」

 カミタマンが来る。

カミタマン「モスガ!スケベ根性で女学生の手相なんか見てる場合じゃない」

 

 花が咲いて蝶が飛ぶ公園でハルはうたた寝

モスガ「全くとんでもない奴。そばごちそうしたのに」

カミタマン「まあ春にしろ、いやしなくていいって言うほうも言うほうだけど」

モスガ「んん、モスガ許せない。モスガ、ハルやっつける」

 息巻くモスガにカミタマンは「待てよ、お前ひとりじゃ」。だがモスガは「だいじょぶだいじょぶ、見ててくれよな」と浮かび上がる。

カミタマン「おい、やめろって」

 モスガは「こらっ」と飛んでくる。「あ?」と目覚めるハル。

モスガ「お前って奴はそばごちそうされた恩も忘れて。こうしてくれるわ」

 ハルはモスガにスプレーを噴射し、モスガの体は花だらけに。木陰で見ているカミタマンは「だからやめろって」。モスガは「はっくしょん」とくしゃみが止まらなくなって倒れる。

カミタマン「しまった、モスガは花粉症だったんだ」

 ダウンしたモスガにハルはじょうろで水をかける。カミタマンが近づこうとするとハルは「ハル!」とスプレーを向ける。「モスガ、必ず助けに来るからな」と退散。

 

 根本家の居間では気まずい雰囲気に。

パパ「いや、このあたたかさは一時的なもので」

マリ「ママ。もう厭、こんな人」

 マリはママに抱きつく。

パパ「こんな人…」

ママ「あなたっ! よくもママを呆れ返らせて傷つけたわね」

パパ「私は何も呆れさせるつもりは」

 ママは「あーた!」と激怒。

 

 モスガの体に果物ができ、ハルはもりもり食べる。むしられる度にモスガは「いた!」と反応。

 

 カミタマンは「どうすればハルを倒してモスガを助けることが」とドラム缶の上をごろごろ転がって悩む。

 すると空き地をパパが「助けてー」と逃げ、ママが追ってくる。

パパ「カミタマン、早くしないと私の命が」

カミタマン「ちょっと待ってよ」

 

 食べすぎたハルは寝ていて、モスガは「ひどい。こんなのってひどいよ」と泣く。カミタマンが駆けてくる。

モスガ「ハルったら、モスガに花咲かせ実をつけ、全部食べちゃった」

カミタマン「あ?」

モスガ「モスガに水かけたら実がなった」

 「助けて」とパパが逃げ、ママが追う。カミタマンは「よし」と寝ているハルにスプレーをかける。今度はハルの体中に花が咲いた。追いかけていたママは「素敵な香り」と立ち止まる。カミタマンがじょうろでハルに水をかけ、ハルの体にはぶどうやバナナなど果物ができる。

カミタマン「ママ、ハルの実とってもおいしいよ」

ママ「ほんと?」

 ママはいちごを取って食べる。ハルは「ハル!」と反応。

ママ「おいしい!」

カミタマン「遠慮しないでどうぞどうぞ」

 ママはどんどん食べる。ハルは逃げ出し、ママはハルを追いかける。

カミタマン「大人しく冬にするなら」

 ハルは「ハル!ハル!」とうなずく。ママはハルを追うが、やがて急に寒くなる。花はなくなり、空は厚い雲に覆われ、雪も降ってきた。パパもママもモスガもハルもくしゃみをする。

 夜になってパパとママ、伸介、マリ、モスガはこたつに入ってトランプをする。

マリ「パパ、来月から大変ね」

パパ「何が?」

マリ「クレジット」

パパ「何とかなるさ」

ママ「いざとなったらあたしがパートにでも出るし」

モスガ「モスガも働く!」

 みなは談笑する。

 

 スナックではハルが「♪ハールハールハルハルハルハル」と「丘を越えて」を愉しげに歌う。

カミタマン「よーよーハルさん。大統領!」

 カミタマンは嘆息する。

カミタマン「どうしてカミタマンがハルのご機嫌取らなきゃいけないんだ。あ?」

【感想】

 カミタマンがパパの尊厳を守るために季節を春にしようとして、そのためにハルと称する怪人が召喚される。第18話では「夏バテ」が初老男性として実体化したが、今回は「春」がピエロのようなおっさんとして現れる。

 まずパパがこたつの購入をめぐってマリと対立し、カミタマンとスナックに行った末にモスガも交えてハルを検出、やがてハルと争うに至るという流れは面白く根本ファミリーの罵り合いも笑えるけれども、マリがパパを認知しないと言い出してパパがショックを受けたり、カミタマンとパパが飲みに行ったり、モスガが森や潜む神?をさがし出したりと、それぞれの趣向は既出のねたの反復ではある。春になった後でカミタマンが冬に戻してくれと依頼していたが、不思議コメディーシリーズの前作『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第16話「肉まん・アイス大戦争」にも同様に主人公が季節をどんどん変えるように頼んで怒られる展開があった。ただし謎のスプレーによってカミタマンやモスガに花が咲いたり、終盤でママが事実上ハルを倒したりするのは過去になかった趣向で目新しさを感じる。またモスガが屋台や手相占いのアルバイトをしているのも意外で、いままでモスガが不自然に出てこないエピソードがあったのはバイトも一因なのかと想像することができた。

 演出は「夏バテ」の第18話やパパが落ち込む第20話も手がけた冨田義治監督で、筋が焼き直し的な今回はかえって冨田氏の手腕が光った感もある。18話の「夏バテ」は初老の男性で第34話の神々は男女混合だったけれども、それらの系譜に属するのであろうハルはピエロのようなおっさん。林でハルと戦う場面では、ハルが枝にぶら下がったりモスガの糸を跳ね返したりするのには笑わされるが、演出の領域かと思われる。カミタマンが苦悩してドラム缶の上を転がるシーンでは、ちゃんとごろごろという音がしていて芸が細かい。ハルの力で花が広範囲に咲き乱れたり桜が一挙に開花したりするのは、合成で無難に処理していた。

 ハルに果物がなってママが食べる場面ではヨハン・シュトラウス2世「春の声」が流れる。同曲は『ネムリン』の第5話「アキカン怪物の大逆襲」でも終盤に使われた。

 怪人ハルを好演したのは、第18話や第19話に声の出演をした篠田薫氏。18話では変な虫役で滑舌の良さに感服したけれども、今回の台詞は「ハル」のみで、言い方のみならず顔芸の面白さも光る。篠田氏は、不コメでは『ロボット8ちゃん』(1981)や『バッテンロボ丸』(1982)などに既に声の出演をしており声優の印象が強いが、今回は落ち葉を撒き散らして出現し、アクションもして駅前で踊るなど俳優としての身のこなしに驚かされる。不コメではこの後に『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)や『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)に俳優として出演した。

 モスガのスーツアクターを務めた高木政人氏は1986年1月10日に、本作と平行して出演していた作品の撮影現場に向かう際に交通事故で急逝(氏の出演する第43話と今回は、逝去後に放送された)。今回のエピソードは遺作なのだろうけれども、終盤でモスガと根本家の面々がこたつで愉しくトランプをする場面は舞台裏の仲の良さを感じさせるだけに、この直後の永訣を思うと胸が痛む。

 スナックの女性やこたつを設置する作業員、女学生などのキャストは、台詞はあるがノンクレジット。

 カミタマンやモスガがハルをさがしに行くのは古里駅(この3か月後に放送された『時空戦士スピルバン』〈1986〉の第5話には同じ青梅線日向和田駅が映される)。

 ハルが光線を振りまくのは東伏見駅前で、第3話にも出てくる。

 モスガが手相のバイトをしているのは成増駅前。