『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

最終話「さらば!カミタマン」(1986年3月30日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

 「うわあ」と吹っ飛ばされるカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。伸介(岩瀬威司)と横山(末松芳隆)が、カミタマンをサッカーボールにしてヘディングの練習をしているのだった。

カミタマンカミタマンぐらいだぞ。サッカーボールやってくれる…神さまなんて!」

 カミタマンは「いたーい」と目を白黒させる。

 

 テーブルでは、パパ(石井愃一)とママ(大橋惠里子)はナガセや駿台四谷大塚などのパンフレットを見ていた。マリ(林美穂)が来て「やだ、進学塾の入学案内じゃない?」と反応。

マリ「あたし行かないからね。絶対行かないから。もし強引に行かせるつもりなら」

 マリはテーブルの上に乗って「あたし、非行に走るから」とお菓子を使ってタバコを吸う真似。

ママ「誰もマリを進学塾に行かせるなんて言ってないでしょ」

マリ「じゃあ?」

伸介「4月から伸介も6年生だし、来年はいよいよ受験だから」

マリ「まさかパパもママも、お兄ちゃんを有名一流私立中学へ親の見栄で?」

 何の衒いもなくうなずくパパとママ。

マリ「お兄ちゃんかわいそう」

 

 入学案内を見せられた伸介は「じょ、冗談じゃないよ!」と拒否。パパは「スカンク博士の進学塾」、ママは「ハンサム学習塾」を「ハンサムな先生、いっぱいいんのよ」と勧める。

パパ「お前はな、若い先生がいいと思ってんだろ」

ママ「何言ってんのよ、あんたのほうも」

パパ「浮気をしたいとそういう気持ちが」

 揉めるパパとママ。

 

 カミタマンが来て「パパもママもやめなされ。伸介を一流私立中学に上げなようなんておそろしい計画はやめなされ」と祈祷。ママは「あんた黙ってて」とカミタマンの口にテープを貼り、パパは「うるさいんだよ」とカミタマンの窓めがけて投げつける。窓ガラスにぶつかったカミタマンにはこぶができてしまう。

 そこへ「こんちは、宅急便です。あのうカミタマンさまは?」と庭から荷物が届く。パパとママは窓辺でひっくり返っているカミタマンを指す。

配達員「カミタマンさま。カミタン島から宅急便です」

 パパとママが荷物をのぞこうとするとカミタマンは「ダーメ! 見ちゃダメだって言ってるでしょ」。中身はカセットテープだった。再生するとカミタマンの父(声:増岡弘)のメッセージが流れる。

カミタマンの父の声「カミタマンよ。カミタン島に帰ってきんしゃい。お前の三流神さまとしての修行は終わった。これからは一流の神さまとなるべく教育をカミタン島で受けて、一流の神さまを目指すんじゃ」

 階段の踊り場で伸介も聞いていた。

ママ「すごいじゃない?」

パパ「おめでとう、カミタマン

カミタマン「あーちっともおめでとうじゃないんだよ。みんなは一流の神さまになるための勉強がどんなにつらいものか知らないから、そんなこと言うけど」

 

 カミタマンは伸介の部屋に「聞いてくれ」と来る。

伸介「一流の神さまになる教育受けるんだって? すごいじゃん」

カミタマン「うん?」

伸介「そっか、カミタン島に帰っちゃうのか。別れがつらいなあ」

カミタマン「どうしてそれを?」

伸介「カミタマン、おれたち友じゃないか。友の気持ちぐらいわかんなきゃ、友じゃないよ」

カミタマン「伸介…お前、いつの間にそんなに成長して」

伸介「よし、早速お別れパーティーだ」

 

 パパとママはテーブルにビールなど飲み物を用意し、居間に飾りつけをしてパーティーの準備。

カミタマン「違うんだって。カミタマンはまだカミタン島に帰ると決めたわけじゃ」

パパ「よし、学校行って万国旗借りてこよう!」

 ママはケーキを買いに行く。庭からマリと横山が来る。

マリ「見損なったわ。一流の神さまになるためにカミタン島に帰るなんて」

カミタマン「い、いやあ。それが」

横山「裏切り者!」

カミタマン「違うんだって」

 マリは「私、悲しい」と顔を背け、カミタマンは「マリ…」。横山はマリに歩み寄り、マリは横山に肩を寄せる。だが横山の手はマリの臀部を撫でさする。

マリ「横山さん。あんた、こういうドラマチックなときでも考えてることは!」

 マリは横山につかみかかり、横山は「誤解だよ、誤解」。そこへ「マリ、横山!」と伸介が。

伸介「どうしてみんなカミタマンの気持ちを判ってあげないんだよ。カミタマンだって、帰りたくて帰るんじゃない。おれたち子どものためを思って、一流の神さまになるんだよ!」

カミタマン「何?」

伸介「一流の神さまになって、一流のお願いを聞いてくれる」

マリ「お兄ちゃん、それどういう意味?」

カミタマンカミタマンも聞きたい」

伸介「例えば横山がカミタマンに、ガールフレンドがほしいってお願いした場合」

横山「うん!」

 

伸介の声「いままでのような三流神さまなら」

 横山の周囲を高齢の女性が取り囲む。

高齢女性「お達者クラブでーす」

 高齢女性たちは「かわいい」と横山を触り始め、横山は「やめて、気持ち悪ーい」。

 

 一方、一流神さまならば手を合わせた横山の周囲を、マリをはじめ若い女性が取り囲む。

若い女性「おニャン子クラブでーす」

 若い女性たちは「かわいい」と横山を触り始め、横山は嬉しげ。

 

 興奮した横山は「カミタマン、おれカミタマンに一流の神さまになってもらいたい!」

 夜になって居間でお別れパーティーが開かれる。

伸介「誠に僭越ながら、この私が乾杯の音頭をとらせていただきます。カミタマンの健康と幸せを祈って、乾杯!」

 みなはビールやジュースを飲む。

カミタマン「どうしてこんなことに」

パパ「パパは望んでるんだ。カミタマンが世界に通じる一流の神様になって、この根本家に帰ってきてくれることを」

カミタマン「まあ、そんな大げさなこと望まれちゃっても困るけど」

パパ「しっかりな、しっかりな」

カミタマン「パパ!」

 

 パパは「矢切の渡し」を歌い、伸介とマリと横山は踊る。テーブルにはママとカミタマンが。

ママ「ごめんなさいね」

カミタマン「何が、ママ?」

ママ「もっとおいしいもん食べさせてあげたかった」

カミタマン「おいしかったよ、ママのお料理」

ママ「優しいのね、カミタマン

カミタマン「本当だってば」

 

 パパとママ、伸介、マリは「ミス・ブランニュー・デイ」のメロディーに合わせて踊る。テーブルには横山とカミタマンが。

 花束を持ったカミタマンは「何だよ、やめてくれよ」。

横山「判ってんだ」

カミタマン「何を?」

横山「おれの気持ち」

 横山は「男は黙って」とセロリをかじる。

カミタマン「よせよ、気持ち悪いな」

 

 パパとママ、伸介、横山はカミタマン福笑いをする。テーブルにはマリとカミタマンが。

 マリはカミタマンにペンダントを贈る。

マリ「私だと思って」

カミタマン「マリ」

 マリはペンダントをつけてあげる。カミタマンは涙する。見ている伸介。

 

 伸介はカミタマンを自室に連れて行く。

伸介「やばいよやばいよ。カミタマンが泣いたら、みんな別れがつらくなって」

カミタマン「判ってるって」

伸介「泣くんならここで、目えいっぱい泣いて」

カミタマン「判ってるってば」

 

 伸介が居間に戻ると、みなはしんみりしていた。

伸介「どーしたのどーしたの。みんな、そんな顔しちゃって。カミタマンだって別れたくったって、別れられないじゃん。ここはもっと別れやすいようにして飲んで酔いつぶれるとか、食べて寝ちゃうとか。もっと気使わなくっちゃ」

 伸介はママやパパのビールを注ぐ。

伸介「ママ、早く飲んで飲んで。はい、パパ」

 パパは「そんな飲めねえよ、おれ」。

伸介「早く食えよ。はい、ママ。マリ、早く食えよ!」

 

 カミタマンは伸介の部屋で激しく大泣き。

カミタマン「よし、これでいいだろう」

 

 カミタマンが「さあ、飲もう飲もう!」と戻ると、居間でパパは朦朧とした状態で、ママもマリも横山も寝ていた。カミタマンはひとりひとりに別れの挨拶をする。

カミタマン「パパ。あんまりお酒飲まないように」

 寝ているママ。

カミタマン「ママ。ママのお料理ほんとにおいしかったよ」

 寝ている横山。

カミタマン「横山。マリもそのうち判ってくれるよ」

 寝ているマリ。

カミタマン「マリ。このペンダント、カミタマンの大切な宝物にするからね。伸介は? 伸介はどこ行ったんだ?」

 リュックを持った伸介が来る。

伸介「おれもカミタン島へ行くよ」

 

 外でモスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:竹神昌央)が待っていた。

モスガ「カミタマン、カミタン島へモスガに乗って帰る。遅いモスガ、何してモスガ」

 「おーい」と伸介とカミタマンが来る。

モスガ「伸介、見送りありがとう」

 カミタマンは「それが、伸介も行くことになった」。

モスガ「え!」

伸介「よろしく、モスガ」

 伸介とカミタマンはモスガの背に乗り、モスガは「よし、行くぞ」と飛び上がる。夜のビル街を飛ぶモスガ。

カミタマン「伸介。やっぱりカミタマンと別れるの、そんなにつらいか」

伸介「それもあるけど、カミタン島に行けば進学塾に行かないで済むから」

 カミタマンは「何!」と驚く。

 

 朝になって伸介とモスガ、カミタマンは海岸にいた。

伸介「あの水平線の向こうにカミタン島があんの?」

モスガ「ああ」

伸介「果物なんかいっぱいあって」

モスガ「カミタン島、ほんといいとこ」

伸介「そっか。おれも早く行きてえなあ」

モスガ「うん、早く行こう」

 後ろで見ているカミタマン

カミタマン「カミタン島に行けば、進学塾行かないで済むから…。なんかカミタマンと伸介、ふたりいっしょにいるとダメになってくみたい」

 カミタマンは思い浮かべる。

 

 カミタン島でがつがつとバナナを食べる伸介とカミタマン。伸介は倒立しようとして失敗。カミタマンは笑う。「バーナナバナナ」と怠惰なふたり。

 

カミタマン「そりゃふたりでいれば愉しいかもしれないけど」

 ふざけ合う伸介とモスガ。伸介が水をかけると、モスガは「濡れると飛べなくなっちゃうってば」。

カミタマン「よし、ここは心を鬼にして」

 カミタマンはブーメランを発射し、伸介は気絶。

 

 根本家ではみなが伸介をさがしていた。パパは押入れを開け、ママは慌てて電話する。

 部屋でマリはゴミ箱をひっくり返し、横山は棚を開ける。横山は「伸介」とさがして、どさくさに紛れてマリのスカートをのぞこうとする。マリは「何よ」と横山をキック。

 

 海岸で伸介が目を覚ますと、カミタマンとモスガの姿はない。カセットが置いてあり、再生するとカミタマンの声が流れる。

カミタマンの声「伸介、カミタマンはひとりでカミタン島に帰る。カミタマン、カミタン島に帰って一流の神さまになる勉強する。だから」

 

 マリのペンダントをつけて語りかけるカミタマン

カミタマン「伸介もうちに戻って一流の私立中学に入る勉強して。カミタマンと伸介、ふたりになると遊んでばかりいて、それはそれで愉しいけど、世の中愉しいことばかりじゃお互いバカになっちゃうし。伸介。カミタマン、伸介と別れたくて帰るんじゃない。カミタマン、伸介のこと…」

 伸介は海に向かって「カミタマーン!」と叫ぶ。

 

 モスガに乗って飛ぶカミタマン

カミタマン「伸介ー!」

 

 根本家で「伸介」「お兄ちゃん」とみなはさがしていた。何故かママは八つ墓村、パパは探検隊のような格好でマリは白衣、横山は蜘蛛の巣だらけ。

 「ただいま」と伸介は帰宅。

伸介「おれ、一生懸命勉強して一流の私立中学入る!」

 笑う伸介にみなはズコー。

 

マリの声「それから3か月…」 

 夏になって、伸介はアイスを食べて縁側でだらけていた。

マリ「お兄ちゃん、アイスばかり食べて全然勉強してないじゃない? 一流の私立入れないわよ」

伸介「おれが入れるわけねえだろ」

 空を見上げるマリ。

マリ「カミタマンいまごろ、一流の神さまになるため一生懸命勉強してるっていうのに」

 

 カミタン島で、カミタマンはアイスを食べて「あちあち」とだらけていた。モスガは「そんなことじゃ一流の神さまなれないモスガ」と注意。

カミタマン「いいの! カミタマンはどうせ三流の神さまなんだからほっといてよ」

モスガ「ああ、もうモスガ知らない!」

 浅黒い神さまが「カミタン島いいとこ、一度はおいでよ」と飛んで来る。カミタマンの父は眼鏡をかけて計算していた。

カミタマンの父「1足す1は1である。違ったかな」

 ますみと名札をつけた神さまはしんごと名札をつけた神さまに「ねえ、しんご。もっとこっち来て」と無理やりキス。ターザンのような神さまは「カモーン」と遊ぶ。カミタマンはアイスを食べつづけ、自堕落な人生はつづくのだった。

【感想】

 前回でネモトマンに関しては決着がつき、今回で伸介とカミタマンは別れのときを迎える。そもそもカミタマンが島を離れて東京へ来た理由は修行のためなのかモスガから逃れるためなのか、あいまいではあったが、島の父から帰還を命ずるメッセージが届く。不思議コメディーシリーズの前作『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第30話(実質的な最終回)は寺田憲史脚本だけれども、やはり父に帰って来いと言われて主人公が帰る展開で、それを浦沢義雄脚本の今回も踏襲したような形になった。

 この時期の不思議コメディーシリーズはホームドラマの体裁であるゆえ敵との戦いがあるわけではなく、最終話はお別れパーティーになることがあり、『ペットントン』(1983)も今回と同様で、みなで飲み食いして「矢切の渡し」を歌い、寝てしまったみなの顔がひとりずつアップになるなども共通する(『ネムリン』でも寝ている家族に主人公がひとりずつ別れを告げた)。

 今回出色なのはカミタマンが伸介と別れる理由で、いっしょにいると「遊んでばかりいて、それはそれで愉しいけど、世の中愉しいことばかりじゃお互いバカになっちゃう」から、ということであった。『ペットントン』や『ネムリン』に感じられたシリアス性が減じて、シュールなギャグを追求した本作も、最終話に至ってシビアな視点が導入された。浦沢先生は後年のインタビューで「俺は日常の中でもそんなに笑う方じゃない」と話していて、その発言は映画などでも面白いものは少ないのだという文脈であるが(「東映ヒーローMAX」Vol.14)、眼前の現実とは決して愉しいものではないというシニカルな視座が窺える。

 そして伸介とカミタマンは別れ別れになったわけだけれども、ラストでは東京とカミタン島とでそれぞれ締まりのない生活をしていて、ダメな奴はどこまでもダメだという落ちで本作は幕を閉じる。既に第44話でも、カミタマンと離れた伸介が頑張って勉強しても成績はさらに下がってしまう事態が描かれたが、今回はその再演で両者は離れても怠惰なままである。浦沢先生は作品を「ヒューマニズム」に持っていくのが厭だとも語っていて(「東映ヒーローMAX」Vol.13)、成長して終わるような人間像(神さま像)は拒絶したのであろうか。また『ペットントン』の最終話では宇宙へ帰ると思われたペットントンが(視聴者へのサービス的に?)地球に舞い戻って変わらない日常がつづき、だが今回は訣別したにもかかわらずカミタマンも伸介もそれぞれ進歩がなく、つまり現実認識は深化しているように感じられる。『ペットントン』のラストが不本意だったのか、本作以降の浦沢作品の最終話では『もりもりぼっくん』(1986)や『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)など、情況の大きな変化や登場人物の別離が描かれた。

 第40話以降は出番が減っていた伸介は最終話だけにほぼ出ずっぱりの活躍ぶりで、カミタマンを明るく送り出そうとしたり、みなに発破をかけたり、結局は怠惰だったりと岩瀬威司氏のしたたかな演技力に重ねて感嘆する。

 今回の坂本太郎監督は『ペットントン』、『ネムリン』そして本作と不コメの最終話を立てつづけに演出しており(『ネムリン』は本編最終話を撮り、総集編は担当していない)、卓越した手腕で盛り上げた。坂本氏はこの後の『もりもりぼっくん』や『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の最終話も撮っている。

 カミタマンがアップでひとり語る場面は田中真弓氏の声も素晴らしいけれども、人形操作の田谷真理子・杉田智子・日向恵子・中村伸子の各氏の功績も改めて特筆される。終盤の島はラストシーンのためにつくられたセットで、複数のカミタマンが登場して一挙に演技しているのに驚かされる(本作のカミタマンの操演は、どうやって動かしているのか判らない場面が多かった)。

 第46話以来に登場したモスガは、スーツアクターの高木政人氏が急逝したゆえ竹神昌央氏が代役を務めた(最終話だけの参入は大変だっただろうけれども、違和感はあまりない)。竹神氏は不コメの次作『ぼっくん』のぼっくんや映画『ゴジラvsビオランテ』(1989)のビオランテスーツアクターを担当している。

 カミタマンの父の増岡弘氏(ノンクレジット)は第5話以来の久々の登場となったが、前回が厳しい声だったのを失念したのか、とぼけた演技だった。

 森羅万象を笑いのめす『勝手に!カミタマン』も今回で完結。カミタマンは自堕落に過ごしながら、根本家の人びとや横山などを遠く南方から見守っているのであろう。

 スタッフ・キャストのみなさま、本当にお疲れさまでした。カミタン島を覚えている者は幸せである。心、豊かであろうから。