
【ストーリー】
公園で横山(末松芳隆)と少年(大島和徳)とがにらみ合って対峙。
横山「うちの父ちゃんなんかサラリーマンやってんだぞ」
少年「うちの父ちゃんだってサラリーマンだ」
「かかってこいよ」と挑発し合った後で互いに味方が来るぞと言い合う。ネモトマンのテーマが流れ、横山は「あ、この曲は」。ネモトマン(岩瀬威司)がアスレチックの上に現れ、滑り台を滑り降りる。
ネモトマン「横山くん、きみをいじめる奴ってこの子かい?」
横山「うん、そう」
ネモトマン「よし、このネモトマンのおじさんがやっつけてやる」
少年は「こっちだって。父ちゃん!」と呼ぶ。公園の茂みから「アワワワワ」と半裸の野人が出現。
横山「ずるいぞ。お前んちの親父、さっきサラリーマンやってるって。お前んちの親父、『野生の王国』じゃないか」
うなずくネモトマン。
「花の首飾り」の流れる野原に佇むパパ(石井愃一)とカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。パパはかぐや姫のことを考えてた。
パパ「そう、私の理想の女性」
カミタマン「理想の女性?」
パパ「かぐや姫こそこの世でいちばん美しく、清らかな女性だ」
カミタマンがモスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)にどう思うか訊くと、すすきを取っていたモスガは坂を転落。石に頭をぶつける。
モスガ「死んでまったわ」
モスガの頭に輪が発生。「天国に行く」と浮かんでいくモスガ。
カミタマン「バーカ、行ってまえ」
パパ「かぐや姫、かぐや姫」
根本家ではママ(大橋恵里子)とマリ(林美穂)が団子をつくり、パパはすすきをセットし、月見の準備をする。
カミタマン「雨雲が気になるな」
モスガが雨雲を追っ払うと言い出し、伸介(岩瀬威司)は「無理だよ、無理」。カミタマンは「任しときなって」と木槌でモスガを叩く。
モスガ「死んでまったわ」
モスガはまた昇天。
カミタマン「行ってらっしゃーい」
ママとマリが「お待たせ」と、団子とフルーツを持って来る。
パパ「夜は長いんだ。今夜は庭で食事しながらじっくり月を待とう」
暗くなって、ママは「浪花節だよ人生は」を歌う。パパ、伸介、マリ、カミタマン、モスガは踊る。雨雲は流れて、満月が姿を現した。やがてみなが寝ていると、巫女姿のとらばる聖子(小出綾女)がカミタマンを起こす。聖子は「ちょっとこれ見てよ」と絵本を見せるのだった。
カミタマン「これは、かぐや姫の」
絵本の中にタタリが描いてあった。
聖子「おたたりしてんのよ」
カミタマン「どうして? かぐや姫がなんか悪いことでもしたの?」
かぐや姫が育ててくれたおじいさんとおばあさんを置いて月に帰ったので、タタリは無責任だと怒ってかぐや姫をたたっているのだという。
カミタマン「なーるほど」
聖子「カミタマン、感心してる場合じゃないわよ。早くタタリを止めないと、全日本昔話保存会の人たちが押しかけてくるわよ」
カミタマンは絵本の中へ突入。
カミタマンは「ここが、かぐや姫が住んでるうちか」と家の前へ。そこへタタリ(花房徹)が逃げてくる 。
カミタマン「こらタタリ、お前かぐや姫をおたたりしてたんじゃ?」
タタリ「そのかぐや姫が」
見るとパパによく似たかぐや姫(石井愃一)が「おたたりしてえ」と迫って来た。驚くカミタマン。かぐや姫は「だんだん」と歌舞伎ふうの動きでタタリを追いかける。
畦道でカミタマンが「かぐや姫ってのは確かものすごい美人のはずじゃ? それがパパそっくりということは」と困惑。そこへおじいさん(岩瀬威司)とおばあさん(林美穂)が歩いて来る。
おばあさん「おじいさんや。これで私たちもかぐや姫の苦労から逃れられる」
おじいさん「タタリさまのおかげじゃ」
かぐや姫は「酒よ酒」とおじいさんやおばあさんをこき使っていたのだった。
くやしがるおばあさんを、おじいさんは「もうこき使われないで済むんだから」となだめる。
そこへふらふらのタタリが「あんな化け物かぐや姫をおたたりしようとしたおれがバカだった」と来て嘆く。

エクササイズするかぐや姫にタタリは巨大入れ歯で噛みつくが、かぐや姫は「もっと。もっと」と迫ってくる。「何だこいつ」と驚くタタリ。
かぐや姫「もっとおたたりして」
つかまったタタリはかぐや姫のご飯をよそう。
さらにかぐや姫はタタリを蹴って遊んだ。
タタリ「おれはタタリだ。蹴鞠じゃないっていうの」
泣くタタリ。カミタマンはかぐや姫を月に送ってしまえと言う。
かぐや姫は「早くお月さまへ連れてって」と言うが、月(声:西尾徳)は「ベー」と拒否。
かぐや姫「じゃあお星さまでもいいわ」
星たち(声:太地琴恵)も「ベー」。

カミタマン「めっちゃくちゃな嫌われ方だな」
タタリ「それをどういうわけだかおれだけ好かれちまって」
カミタマン「ああ、おたたりの味を知ってしまったんだねえ」
そこへかぐや姫が「おたたりして」とカミタマンとタタリの所へ走ってくる。カミタマンは木槌で絵本の世界から脱出。
台所にいるママとモスガ。カミタマンは昨夜からどこへ行ったんだろうと話すふたり。
モスガ「もしかしてこの家の待遇が悪くて家出なんてことも」
ママは鍋でモスガをぶん殴る。
居間にカミタマンとタタリ、かぐや姫が。かぐや姫はたまたま見たモスガにひと目惚れしてキスする。「どうなってんの」と見ているカミタマンとママ、タタリ。
公園でサッカーをしているかぐや姫とモスガ。モスガがこけると、かぐや姫は駆け寄って「モスガ大丈夫? 痛くなあい?」。
カミタマン「全く変わったかぐや姫だよ」
タタリ「ああいう派手なのがかぐや姫の好みなのか」
タタリの様子を見てカミタマンは「お前もしかして」と双眼鏡のような機器でタタリの胸を注視。
タタリ「なんか見えたか?」
カミタマン「ジェラシー」
カミタマンは「そ、日本語で焼きもち」と説明。
タタリ「嘘?」
カミタマンはタタリに光線を当てる。ジェラシーが実体化し、「モスガにかぐや姫を取られて悔しい」と音声が。
カミタマン「ジェラシー、ご苦労」
物質化したジェラシーは消える。
カミタマン「嫌いだ嫌いだと思いながら好きになっていく。よくあるパターンだ」
タタリは「こうなったら決闘するしかないだろう」と歩き出す。
採石場でタタリとモスガと向かい合う。扇子で煽いでいるかぐや姫。
かぐや姫「それではこれより世紀の美女、この私かぐや姫をめぐってタタリとモスガが決闘いたします」
カミタマンは両者を呼んで「ふたりとも、落ち着いて考えるんだ。かぐや姫をよーく見てみろ」。
かぐや姫「何よ?」
カミタマン「この顔がめぐって決闘するような顔か!?」
思わず凝視するタタリとモスガ。
かぐや姫「カミタマン、何ごちゃちゃ言ってんの。早くめぐってめぐって。このかぐや姫は勝利者のもの」
かぐや姫が吹いた笛により、決闘開始。タタリとモスガは戦う。
カミタマン「ようめぐってるわ」
ランドセルを背負った横山が歩いて来る。
横山「何してんの?」
カミタマン「ちょっとね」
かぐや姫「私をめぐって決闘してんの」
横山は「おれ帰る」と行ってしまう。かぐや姫は横山を見て、意味ありげに笑う。
カミタマン「お、お前もしかして」
カミタマンはさっきの双眼鏡でかぐや姫の胸を見る。
かぐや姫「エッチ。何すんのよ」
カミタマンは「気が変わったな」。かぐや姫は「あたいはそんな女じゃないわ」と反論。カミタマンはまたさっきの要領でかぐや姫に光線を当てて本音を実体化。
カミタマン「これが証拠の気変わりだ」
気変わり(声:太地琴恵)は「いまは横山がいちばん」。
タタリ「かぐや姫、おれたちのことを見捨てるつもりなのか」
モスガ「んだんだ」
気変わりは「そのつもりそのつもり」。怒ったタタリは巨大入れ歯で噛みつき、モスガは糸を吐いて攻撃。かぐや姫は「あああ」と何故か嬉しげ。
カミタマン「何だか頭が痛くなるような世界だ。見てはいけないものを見てしまったような気分だ。ああ、頭が痛ーい」
夕食を取るパパとママ、伸介、マリ。カミタマンは食べずに部屋で寝込んでいた。
カミタマン「あいつら、今ごろどうなってんだ。悪夢じゃ」
夕暮れの町で、タタリとモスガはかぐや姫を追いかける。
かぐや姫「横山くーん」
「わあ」と横山は逃亡。 少年と野人の父親が歩いて来る。
横山「おじさん、このかぐや姫引き取って!」
少年と父親も逃げ出す。夕焼けの野原でパニックはつづくのだった。
横山「助けて助けて。気持ち悪い!」
【感想】
この時期の不思議コメディーシリーズではレギュラー陣に童話の役柄を割り振るパラレルワールド編が定番で、『ペットントン』(1983)では白雪姫や浦島太郎、『どきんちょ!ネムリン』(1984)ではシンデレラや桃太郎が扱われた(『ネムリン』では石井愃一氏が桃太郎役でゲスト出演)。今回はかぐや姫で、パパがかぐや姫で伸介とマリがおじいさんとおばあさん役。『ペットントン』『ネムリン』を既に視聴していれば見慣れた内容ではあるのだが、石井愃一氏の怪演するかぐや姫とタイツ姿のタタリ、奇獣・モスガが揃い踏みした映像はなかなかに強烈である。『ペットントン』の第42話「エッ? ガン太が乙姫様」ではガキ大将的な少年が乙姫で騒動を巻き起こしており(「予告編でブスな乙姫さま」と言及された)、パパがかぐや姫というのはそれを連想させた。
かぐや姫がタタリや横山に恋する、というのは理解できてもモスガにひと目惚れするのは意外といえば意外であろう。第26話ではそのモスガが佃煮博士にひと目惚れする、今回の反復のような展開がある。誰かに付きまとわれてうんざりしていた人物が、その者が他に目を向けるとジェラシーを覚えるのは浦沢義雄脚本では『ネムリン』や『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)などで何度か描かれているけれども、今回のタタリのように男性が男性の演じるかぐや姫に対して、という展開は異色かもしれない。
浦沢脚本ではこの後も『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第37話「ノボルのかぐや姫」や『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第35話「かぐや姫の宝」などかぐや姫を何度か取り上げており、『魔隣組』は少年がかぐや姫役だったが、全編けたたましい騒動が描かれた今回とは趣向を若干変えてシュール感が際立っていた。『ポワトリン』では家族一同で中秋の名月を見ていたけれども、今回の根本家はみなで踊っており、本作レギュラー陣のバラエティ的なチームワークがよくも悪くも不コメ随一であることが窺える。
序盤でネモトマンがいつもの音楽とともに登場し、横山が「あ、この曲は」と指摘するのは本作の第18話や映画『仮面ライダー 世界に駆ける』(1989)などでもあった(詳細は第18話の項参照)。ネモトマンは「ネモトマンのおじさん」を自称しているが『月光仮面』(1958)の主題歌で「月光仮面のおじさん」と歌われるのを意識したのであろう(第20話ではパパが月光仮面の格好をしていた)。
野人に関して横山が「野生の王国」だと呼称するのはドキュメンタリー番組『野生の王国』(1963~1990)を指しているのだと思われる。
前半でモスガが頭を打って昇天するギャグが2回繰り返され、そのすぐ後のシーンで普通に生きているので笑わせられるけれども、演じる高木政人氏が本作の放送中に急逝したことを思うと予言的に感じてしまう(昇天ギャグは次回の第25話にもある)。
坂本太郎演出で追いつ追われつのパニックが描かれるのは『ペットントン』の第20話などでもあり、手慣れたものを感じさせる。今回はかぐや姫がタタリを蹴鞠にして遊ぶシーンではトランポリンを用いていて、さりげなく斬新な印象に映った。
少年役の大島和徳氏は『宇宙刑事シャイダー』(1984)の第16話、『ネムリン』の第3話、『もりもりぼっくん』(1986)の第16話などの東映特撮ドラマにゲスト出演。『逆転あばれはっちゃく』(1985)ではレギュラーを務めている。
月の声の西尾徳氏は『ロボット8ちゃん』(1981)や『バッテンロボ丸』(1982)、『ペットントン』など不コメや戦隊シリーズなど東映特撮ドラマに多数出演したベテラン。第25話、第30話にも登場する。
星と気変わりの声の太地琴恵氏も『8ちゃん』や『ロボ丸』、『ペットントン』といった東映特撮の他に『ウルトラマンレオ』(1974)の第28話などに出演しており、やはり本作の第30話にも出てくる。



