『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第43話「ただいまモスガ冬眠中」(1986年2月2日放送 脚本:浦沢義雄 監督:佐伯孚治)

【ストーリー】

 カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)がマリの部屋へ「マリ!」と起こしに来る。顔をつかんだり枕で叩いたりするが、マリ(林美穂)は起きない。

 パパ(石井愃一)とママ(大橋恵里子)、伸介(岩瀬威司)はマリを残して出かけることにする。

伸介「マリの奴、低血圧だから。一旦起きないと、テコでも」

 ママはカミタマンに、マリが昼ごろ起きたら何かとってあげてと頼む。パパは物置の掃除も依頼。

 

 ほうきで掃除するカミタマン。物置には巨大なタマゴの殻があった。目覚めたマリが庭へ来ると、カミタマンは殻にはたきをかけている。マリは思わず咳き込む。カミタマンは、他のみなは親戚のおばさんの家に行ったと告げる。

マリ「行っちゃったの? あれほど起こしてくれって言ったのに」

カミタマン「マリも伸介も普段それほど行きたがらないのに、どうして行きたがるの?」

 マリによると、お正月に会っていないから行けば必ずお年玉をもらえる約束になっているという。

 マリが卵の殻を見て「なあに、それ?」と尋ねるとカミタマンは「モスガの入ってた卵!」と答える。するとモスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)が空から墜落してくる。

モスガ「痛い」

 

 居間でカミタマンはモスガの手当てをする。

カミタマン「体の調子が悪いってお前、モスガのくせしてまさか成人病に」

 モスガは「あり得る。モスガ最近、ちょっと塩分取りすぎ」と反応。マリはトーストを食べながら「中学校の裏にある病院、あそこなら日曜日も見てくれるって」と助言する。

 

 公園でブランコをこぐマリ。

マリ「いいのかな。こんな美少女が春ももう間近い日曜日に、ひとりでブランコに乗ってぼんやりしちゃって」

 そこへ横山(末松芳隆)が歩いて来る。「横山」と顔をしかめるマリ。横山は一旦通り過ぎると「こんなところで何してんの」と話しかけてくる。

マリ「もっと哀れになる」

横山「何が?」

マリ「でもひとりでぼんやりするよりましか」

 

 モスガとカミタマン産婦人科から出てくる。

カミタマン「ほら、お医者さん何でもないって言ってただろ。ただの寝不足だって」

モスガ「ううん、あの医者ヤブ!」

カミタマン「うーん、しょうがない奴」

 

 公園でカミタマンはモスガに肉まんを食べさせる。

カミタマン「食欲はあるんだろ。やっぱり気持ちの問題じゃないのか」

モスガ「気持ちの問題ちゃう。モスガ病気」

カミタマン「なあ、医者が何でもないって言うんだからな」

モスガ「モスガ、絶対お病気。自信持ってお病気」

 カミタマンはそんなに言うなら飛んでみて、墜落したら病気だと認めてやるとモスガに告げる。モスガは飛び上がるが墜落。

モスガ「ほら、やっぱりお病気」

カミタマン「ああモスガ、だいじょぶか」

 見ると落ち葉が盛り上がり、地中からモグラが出てくる。

カミタマン「ああいや、違う違う。まだ春じゃない」

 カミタマンは「ごめんごめん、冬眠中のところ」と謝罪。モグラは潜っていく。

カミタマンモグラの奴、モスガが墜落した音でびっくりして冬眠してたの目覚ましちゃって」

 モスガは「体の悪い原因判った」と言い出す。

カミタマン「モスガ、冬眠するのを忘れていた」

 驚くカミタマン

モスガ「遅ればせながら、モスガ冬眠する」

 モスガは「冬眠!」と叫んで爆睡。カミタマンは慌てて起こそうとする。だが強風が吹き、モスガは起きる、吹っ飛ぶカミタマン

モスガ「だめだ、ここ寒くて。うう、寒い」

カミタマン「だろ?」

 

 ビル街の近くでマリは横山に尋ねる。

マリ「横山さん、本当に私に変なことしようなんて気持ちないわね?」

横山「あるわけないじゃなん」

マリ「本当にないわね?」

横山「ないって」

マリ「絶対よ」

横山「絶対」

マリ「信じるわよ」

横山「信じて」

 マリは何度も「本当ね?」と念を押す。横山が「そりゃ少しは」と言いかけると、マリは横山をひっぱたく。横山は「違うよ違うよ」と逃げ出す。

マリ「これでようやく退屈しないで済みそう」

 マリは棒を取ると「待て横山」と追いかける。

 

 根本家のこたつでカミタマンはモスガに毛布をかけ、ストーブをたく。

カミタマン「いま子守唄歌ってやっから、ぐっすりと冬眠しろ」

 カミタマンは「東京音頭」を歌う。すると「助けてー」と声がして、金属バットを持ったマリと横山が靴のまま室内に入って来て追いかけっこを展開。

カミタマン「ここじゃ冬眠はちょっと無理だな」

 

 公園にある滝のそばにストーブを3台置いて冬眠する。

カミタマンカミタマンがモスガの頭上をジャンプするから、数えるんだ」

 カミタマンはジャンプ。

モスガ「カミタマンが1匹、カミタマンが2匹、カミタマンが3匹…」

 「だんだん眠くなってきた」と寝入るモスガ。しかし「助けてー」と横山が逃げて来て、トンカチを持ったマリが追いかける。マリは勢い余ってトンカチでモスガを殴打。

モスガ「もう痛いのにー」

カミタマン「もう、せっかく冬眠できそうだったのに!」

 

 静かな公園の丘に歩いて来たカミタマンとモスガ。

モスガ「早く冬眠させてくれ」

カミタマン「落ち着いて落ち着いて。この木槌でコキーンと殴れば、一発で冬眠できるはず」

 カミタマンは木槌でモスガを殴るが、モスガは意識を失わずに「痛いー」。

カミタマン「ああモスガ、わりいわりい」

 

 根本家に戻って、カミタマンはモスガの手当てをする。

モスガ「モスガ、どうやれば冬眠できる?」

 考えるカミタマン。「助けてー」とまた横山が逃げて来る。

カミタマン「あいつら、まだ」

 今度は箒を持ったマリが横山を追いかける。横山は植木鉢で防御し、植木鉢を放ってしまって割れる。割れた鉢に、カミタマンは卵の殻を思い出す。

カミタマン「卵の殻に入れればいいんだ」

 

 庭でモスガは「懐かしいなあ」と殻に入る。

モスガ「モスガが生まれたとき以来だもん、この卵の殻」

カミタマン「よく持ってたよな」

モスガ「モスガ、物持ちいいもん」

カミタマン「よし、それじゃ瞬間接着剤でくっつけるからな」

 モスガは「ここならモスガ、冬眠できそう」と嬉しげ。殻がくっつくと、卵はごろりと動き「なんかうとうとしてきたよ」。

 そこへ横山が「大変だ大変だ」と来る。

横山「マリが!」

 カミタマンは「えい」と横山にキック。

横山「何すんだ」

カミタマン「親戚でもないのにマリを呼び捨てにするな」

横山「カミタマン、お前だって親戚でもないのに呼び捨てにするじゃんか」

カミタマンカミタマンは居候だ。マリの親戚みたいなもんだい!  ところで何が大変なんだ?」

横山「マリちゃんが女の子たちに囲まれちゃって」

 公園で女の子5人がマリを包囲する。ひとりは「ほらほらほら」と後ろからマリを突き飛ばす。代表格の女の子・マドカ(横山香里)が「ちょっとあんた、何よその目は」とにらむ。

マリ「何よあんた」

 カミタマンと横山が駆けて来る。

カミタマン「マリ、やめろって」

マドカ「何よこれ」

マリ「何だっていいでしょ」

 カミタマンは止めようとするが、「うるせえ」とマドカに蹴られる。マドカは「そこの小さいの」とカミタマンを挑発。

横山「そりゃないよそりゃないよ。カミタマン、これでも神さまやってんだよ」

マドカ「おだまり!」

 横山は「はい」と萎縮。カミタマンは怒り、横山は「じゃネモトマンに」。

カミタマン「それがいないの。しょうがないのでこの木槌を使って…あっ」

 木槌はなくカミタマンは「木槌がないわ。あらら、どうしましょ」と動転。

 

 木槌はモスガの頭にくっついていた。

カミタマンの声「しまった。木槌をつけたまま冬眠させちゃった」

 

 カミタマンと横山は庭に戻る。

カミタマン「横山、モスガを起こすんだ」

 「起きろ」「早く起きないとマリちゃんが!」と卵を揺する。

カミタマン「横山、この卵を部屋に」

 

 カミタマンと横山は、部屋に運び込んだ卵にヘッドホンを装着。大音量の音楽を聴かせるが、ヘッドホンが爆発。

カミタマン「うーん、ダメか」

 つづいて卵を2階のベランダから落とすが、卵は割れない。

カミタマン「そんな」

横山「よしカミタマン。あの手で」

 

 今度はバーナーで卵を炙るが、やがて火が止まってしまう。

カミタマン「もうガスがないや」

 横山は「早くカミタマンの木槌を出さないと、マリちゃんが」と淡々と言う。

カミタマン「春にするんだ」

 この庭を春にすればモスガは冬眠から目覚めると、カミタマンは主張。

横山「本当かよ」

 しかし他に方法がないのでやってみることに。横山はスキップしながら「雪の降るまちを」を唄う。カミタマンは「この野郎」と横山に飛び蹴り。

カミタマン「横山、お前ってどうしてそういうあざとい勘違いするの? そんなに受けたい?」

横山「判る? 判っちゃった?」

カミタマン「だ?」

 

 カミタマンは卵の周囲に花を植え、横山は「♪ 雪が溶けて川になって 流れて行きます」と振り付けも交えて「春一番」を歌う。

カミタマン「横山、ダメだ。歌を変えろ」

 横山は、今度は「♪ラララ 赤い花束 車に積んで 春が来た来た 丘から町へ」と「春の唄」を歌う。カミタマンは実際に台車に花束を載せて運ぶ。やがて卵にひびが入る。

カミタマン「そうだ、その調子だ」

 だが横山は「♪すみれ買いましょ あの花売の」まで歌ったところでフリーズ。

横山「この歌の文句、これ以上知らない」

 カミタマンは唸り、「文句なんて何だっていいんだよ!」。横山とカミタマンは「♪ちゃんちゃんちゃーん」とごまかす。やがて卵は完全に割れ、モスガが起きる。

モスガ「春ー!」

 カミタマンは「あったー」と、モスガの頭に付いた木槌を取る。

横山「さっきちらっと聞いたんだけど、きょうネモトマンいないんだって?」

カミタマン「うん」

横山「じゃあぼくにやらしてもらえないかな」

 横山は妄想。

 

 妄想の中でマリが女の子たちに袋叩きにされている。 

マリ「やめてよ」

 駆けてくるヨコヤママン(末松芳隆)。ヨコヤママンは女の子たちをくすぐり、引っかき、マドカの臀部に触る。女の子たちは逃げ去り、マリは「ヨコヤママン、素敵」と抱きつく。

 

 妄想する横山。

カミタマン「ま、いいだろう」

 横山はヨコヤママンに変身。

ヨコヤママン「爆発!ザ・ヨコヤママン」

 飛び立つヨコヤママン。

モスガ「カミタマン、いままでモスガが冬眠している間になんかあったのか?」

カミタマン「ああ、悪いモスガ。実はよ、いま春じゃないんだ」

 「えっ」とモスガは周囲の花々を見回す。

モスガ「判った。夏なんだ」

カミタマン「は?」

モスガ「そうか、モスガ冬眠しすぎちゃったのかあ」

カミタマン「はあ?」

 

 マリは女の子たちと和解していた。 

マドカ「え。じゃああの病院で、あたしが産まれたとき、隣のベッドにもう産まれてたマリちゃん!?」

マリ「そうよ、マリ。じゃあやっぱりマドカちゃんだったのね」

マドカ「うん。覚えてる、私の泣き声? おぎゃあおぎゃあ」

マリ「思い出した。私のはおんぎゃあおんぎゃあおんぎゃあ」

マドカ「そう。泣き声にちょっと訛りがあって」

マリ「そう、ママ栃木だから。それにしてもマドカちゃん、随分大きくなって」

マドカ「あら、マリちゃんこそ変わっちゃって」

 後ろのほうにヨコヤママンが。

ヨコヤママン「ヨコヤママン参上!」

 マリは露骨に迷惑そうな顔をする。

マドカ「なあに、あれ?」

 マリは「しっしつ」と追い払おうとする。

マドカ「知り合い?」

マリ「違うわよ」

マドカ「じゃあふたりでやっつけちゃいましょうよ」

マリ「そうね」

 ヨコヤママンは「そんなあ」と逃亡するが、マリと女の子たちに暴行される。

 

 モスガは浮き輪を持って海へ入ろうとする。

モスガ「よーし、モスガ泳ぐぞ」

 カミタマンは「違うんだモスガ、まだ夏じゃないんだ」と止めるが、水しぶきがかかる。

カミタマン「うわああ、ひゃっこい」

【感想】

 第39話以来、久々にモスガが登場。モスガが冬眠し、暇を持て余したマリが横山を虐待し、後半では双方の騒動が一応からみ合う。本作の第26話や『TVオバケてれもんじゃ』(1985)の第6話など浦沢義雄脚本ではふたつの揉めごとが平行して描かれてほぼリンクしないというケースもあるが、今回は成功だと言えよう。ただ騒ぎ自体に必然性はあまり感じられず、全体としてはゆる目の回だけれども個々に面白いポイントはある。スケジュールの都合か今回も伸介の出番は序盤だけでごく短く、マリと横山とモスガがメインで、第42話につづいてシリーズの番外編(スピンオフ)的な印象を与える。

 浦沢脚本には「冬眠」が出てくることが多く、本作でも第25話で既に扇風機が「冬眠」しており、他に『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第42話では幽霊が、『激走戦隊カーレンジャー』(1996)の第29話では宇宙人が、『ビーロボカブタック』(1997)の第39話ではロボットがそれぞれ冬眠に走った。今回は冬季だから冬眠という発想だが『カーレンジャー』に至っては9月初旬放送で夏季であるにもかかわらず冬眠していて、浦沢先生は「俺としては宇宙人が冬眠するっていう行為が面白いだろうっていうことだけなんだよね。それについて理由とかあまりつけたくない」と後年に述懐している(「東映ヒーローMAX」Vol.13)。

 モスガが冬眠を思い立つのはモグラと偶然に遭遇したからだけれども、不思議コメディーシリーズの前作『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第27話「イビキのガイコツ作戦」でも唐突に地中から冬眠中のモグラが出現していた(今回は『ネムリン』と同じモグラのパペットが使われている)。

 モスガは体調不良で何故か産婦人科を受診し、看板がしっかり映っているのにヤブ医者呼ばわりしている。

 モスガの入った卵にヘッドホンを付けてロックを聴かせる光景には、映画『アタック・オブ・ザ・キラートマト』(1978)でトマトがヘッドホンで音楽を聴くさまを想起した(『キラートマト』を意識した趣向だろうか)。

 モスガを目覚めさせるために花を植えて春を捏造するシーンでは、横山が「春一番」と「春の唄」を熱唱。前者は1975年の楽曲でまだ10年程度しか経っていないけれども、後者は1937年に「国民歌謡」として発表されたもので、この時点で半世紀近く前の曲を使用したのには驚かさせる。今回の佐伯孚治監督は1927年生まれであり、佐伯氏の選曲なのかもしれない(倍賞千恵子がカバーしていて知られる)。

 終盤で伸介の不在ゆえに横山がヨコヤママンに変身するが、その動機は性欲に基づく打算でセクハラ行為を妄想。伸介も第26話でネモトマンに変身した際は女の子の臀部に触っていたにもかかわらず看過されたのに対し、今回の横山は妄想しただけで実際の行為には及んでいない。とは言えヒーローが(主役でないキャラにしても)性的欲望を動機として変身すると描いてしまったのは、驚くべき到達点だと言えなくもない。そのような不純な発想に過去のセクハラが加算されたのか、横山は多人数にボコられる(ラストで横山が殴られるのは以前にもあってやや食傷気味)。

 マドカ役の横山香里氏は他にテレビ『赤い関係』(1982)にも出演している。

 モスガとカミタマンが受診するのは板橋区の楠医院で、現存する。同院は撮影に協力しただろうに劇中では先述の通りヤブだと言われている(現実のGoogleレビューの評価も低い)。

 マリが横山と遭遇する公園は新宿中央公園で、本作の第37話でも使われている。モスガが冬眠しようとしたり、横山がリンチされたりするのは大井ふ頭中央海浜公園。ラストで海に入ろうとするのもこの付近であろうと想像される。