『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第18話「みんなの迷惑 夏バテ君」(1985年8月11日放送 脚本:浦沢義雄 監督:冨田義治)

【ストーリー】

 朝食をとっているパパ(石井愃一)とママ(大橋恵里子)、伸介(岩瀬威司)、マリ(林美穂)、カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。

ママ「最近評判いいわ、あの子」

マリ「だあれ?」

ママ「ほら、ネモトマンとかっていう変な子」

 カミタマンは伸介に合図。

ママ「理由はわかんないんだけど三丁目の角の山田さんのおばあちゃんがね、お寿司に襲われたとき」

 

 天井に寿司が貼り付いている。驚愕する山田さん(山本緑)。寿司は山田さんの顔に吸着。そこへネモトマン(岩瀬威司)が現れ、天井や壁の寿司を次々と食べる。

 

ママ「ネモトマンに助けてもらったんですって。あの子、なかなかやるじゃない?」

 伸介は照れ、カミタマンは「おやおや」。

マリ「そういえば2組の伊藤さんって人が、やっぱり理由は判らないんだけどおそばに襲われたとき」

 

 そばが宙を飛んで近づいてきて、悲鳴を上げる伊藤さん(河端純子)。ネモトマンが来て、黙々と食べる。

 

マリ「やっぱりネモトマンに助けてもらったんだって。いま小学生の間で結構アイドルしちゃってるのよ」

 口笛を吹いて得意げな伸介。「あーあ」と顔を背けるカミタマン。

パパ「理由は判らないが、会社に今年入った女子社員の村山くんが入浴中におでんに襲われたとき」

 

 浴槽に浸かっている村山さん(楊静恵)が顔をしかめる。腕に吸いつくおでん。いつのまにか浴槽はがんもどきやちくわなどに占拠されていた。

村山さん「厭、厭!」

 ネモトマンが猛然とおでんを食べる。

 

パパ「ネモトマンに助けられたそうだ。それ以来、村山くんすっかりネモトマンの大ファンになっちゃって、ネモトマンのかっこで出勤してくるんだ」

 村山さんが、ネモトマンの扮装で人混みを歩く映像がインサートされる。

 伸介は口笛を吹いてどしんとひっくり返る。みなは無表情。ひっくり返って「ピースピース」と調子づく伸介にカミタマンは呆れ顔。

 

 「ああ、言いたい」とつぶやきながら公園を歩いてくる伸介。主婦など通行人は不審げ。伸介は大声で「全国のネモトマンファンの諸君、何を隠そうこの根本伸介こそ」と言いかけるが、カミタマンが飛んできて口を押さえる。通行人は「親の顔が見たいよ」と行ってしまう。いつのまにか伸介の姿がない。カミタマンが歩いてくると、伸介は木を相手に「えい!やあ!」とトレーニングに励んでいた。

カミタマン「ようやく伸介も正義のスーパーヒーローとしての自覚が」

 嬉しさに号泣するカミタマン。

伸介「感動して泣いてる場合じゃない!」

 道でポリバケツ(声:篠原大作)が主婦(三谷侑未)に襲いかかっていた。ネモトマンのBGMが流れる。

主婦「あ、あの歌は」

 ネモトマンが現れる。

主婦「ネモトマン!」

 主婦は思わず拍手。ポリバケツは猛獣のような唸り声を上げる。

ネモトマン「血迷ったか、ポリバケツ。なるほど、そうか」

 ネモトマンは一旦飛び上がって、生ゴミを持って戻ってくる。

ネモトマン「お前はやっぱりお腹減ってたのか。はい、よしよし」

 生ゴミを入れられたポリバケツは急に大人しくなる。主婦はお礼にネモトマンにジュースを差し出し、飲み干すネモトマン。

 

 ネモトマンが広場に降り立つと、幼い子どもたちがたくさん集まって来てサインを求める。

ネモトマン「並んで並んで。こら、きみたち! きみたちはネモトマンの言うことが聞けないのか。ネモトマンはそういう子どもは嫌いだ。ネモトマンはそういう子どもにはサインはできない。ネモトマンはきみたちが立派な子どもたちに立ち直るその日を待っているんだ。しかし忘れないでほしい。ネモトマンはいつも君たちの心の中で生きているんだ」

 ネモトマンは歩み去っていき、幼い子どもたちは「ネモトマーン」とコール。

 

 住宅街に来たネモトマン。

ネモトマン「しかし忘れないでほしい。ネモトマンはいつも君たちの心の中で生きているんだ。あーっ、やったー。かっこいい!」

 ネモトマンが臆面もなく自画自賛していると、突如怪しい初老の男性(谷しげる)が出現し、ネモトマンの肩を叩く。男性は「夏バテだす」と名乗るのだった。

夏バテ「あんさんの体力をいただきます」

 でかい注射器で体力を奪われるネモトマン。

夏バテ「あんさんなんぼ暑いからいうても、あないにジュースやコーラを飲んだんじゃねえ」

 ネモトマンは呆然となる。

夏バテ「まだ思い出しまへんか。助けてもろうたお礼に出される、ジュースやコーラのことでおます」

 確かにネモトマンは山田さんや伊藤さん、村山さんにジュースやコーラをもらってぐいぐい飲んでいた。

夏バテ「あないに飲んだら、夏バテに襲われるのも当然だす」

 倒れるネモトマン。

 ネモトマンはヘルメットを外して部屋で寝込んでいた。

カミタマン「お礼のジュース飲み過ぎて夏バテになる正義のスーパーヒーローどこにいるの!?」

ネモトマン「そんなこと言ったって……」

カミタマン「せっかく正義のスーパーヒーローとしての自覚が出てきて喜んでたのに。うちにパパやママやマリがいなかったからよかったよ。いたらネモトマンの正体、ばれちゃったよな」

 カミタマンが小ごとを言っていると電話が。

カミタマン「なんだ、横山。なんか用か。え、この暑さで台所に変な虫が湧いた? んなくだらないことで電話してくんな」

 だがネモトマンはヘルメットを装着してふらふらと向かう。

ネモトマン「正義のスーパーヒーローとしての自覚がネモトマンを事件に行かせる」

 驚いたカミタマンは「ネモトマン、きみこそ真のスーパーヒーローだ」とまた大げさに号泣。

ネモトマン「カミタマン、感動して泣いてる場合じゃない。早くネモトマンを夏バテから救ってくれ。それが真の神様というもんじゃないか…」

カミタマン「判った。ネモトマンの夏バテはカミタマンが治す!」

 

 カミタマンはネモトマンに焼肉を食べさせた。

カミタマン「ハーイ、夏バテにはスタミナをつけることがいちばん。ネモトマン、さあもっとじゃんじゃん食べて。スタミナつけろ! お、レバ刺しがスタミナつくようだぜ」

 

 薬局で何やら飲むネモトマン。

カミタマン「赤マムシのドリンク、ローヤルゼリー、それからユンケル。よーし、最後はスッポンエキスだ。どうだ?」

 ネモトマンは「おー」と吠える。

カミタマン「横山を変な虫から救え!」

 

 横山(末松芳隆)の家では変な虫(声:篠田薫 スーツアクター:高木政人)がチャーハンをがつがつ食べていた。横山は「変な虫消えろ」と殺虫剤で攻撃するが、全く応えない。駆けつけるネモトマン。

横山「ネモトマン、早くこの変な虫を退治してくれ」

 だがネモトマンはおなかが痛くなってトイレへ。

ネモトマン「すまない、夏バテで戦う体力がないんだ…」

 横山は「ええっ」と驚愕。

ネモトマン「せめてきみを、横山くんを応援させてもらおう」

横山「ああ?」

ネモトマン「フレーフレー横山、頑張れ頑張れ横山…」

 ネモトマンは変な虫に倒れかかる。

変な虫「おおお? 何すんでえ何すんでえ、すっとこどっこい」

 

 変な虫はネモトマンをおぶって、自宅まで届けた。

 

 ダイニングでダウンしているネモトマン。変な虫もテーブルについている。

カミタマン「どうも、うちのネモトマンがお世話になっちゃって」

変な虫「まあまあ、いいってことよ。おっ、麦茶だね。いただくよ」

 飲み干す変な虫。

変な虫「ああ、うめえ。夏は麦茶に限るぜ」

 カミタマンは変な虫の元気さに感心。

変な虫「てやんでえ。あたぼうよ。こちとら毎朝、新聞配達して体鍛えてるんだからねえ」

カミタマン「新聞配達?」

変な虫「おう、そうよそうよ。どうでい? あの夏バテ野郎にも新聞配達させて体鍛えてやっちゃどうだろうねえ?」

 朝、ネモトマンは投げやりに新聞配達をする。横を歩くカミタマン。

カミタマン「頑張れ、頑張るんだ。体力をつけて、真のスーパーヒーローになるんだぞ」

 そこへ「牛乳でーす」と変な虫が自転車に乗って牛乳配達。

カミタマン「やっぱり体力をつけるためには新聞配達の他にも牛乳配達をしなくちゃな」

ネモトマン「えー」

 

 引き台車に牛乳とカミタマンを乗せて運ぶネモトマン。

カミタマン「ネモトマン、頑張れ。夏バテに負けない体力をつけるためだ」

 すると今度は変な虫が自転車に乗ってタクアン配達。

変な虫「えータクアン。えータクアン。ぽりぽり」

カミタマン「うーん。やっぱり体力をつけるためには新聞配達や牛乳配達の他にもタクアン配達もしなくちゃな」

 ネモトマンは怒って「お前がやれ!」

 

 公園に来たカミタマンは、ネモトマンの体力のなさに懊悩する。すると「体力はいかが。さあさあいろいろありまっせ」と関西弁の声が。

 見ると夏バテが「相撲取りからプロレスラー」「夏の暑さはネモトマンの体力で乗り切ろう」「ひと吸い1000円だっせ」と体力を売っていた。アントニオ猪木やダンプ松本、小錦、タケちゃんマン、ネモトマンなどののぼりが並ぶ。

客「ネモトマンください」

夏バテ「ひと吸い1000円だ。はい、そこまで。1000円いただきましょ」

 客たちには「ようし、もりもり働くぞ」「元気出てきたみたい」と好評。カミタマンは「あいつが夏バテ!」とカミタンブーメランを発射。よける夏バテ。

夏バテ「おおお、何や何や。何ぞわてに恨みでもあんのんかいな」

カミタマン「こら夏バテ! よくもネモトマンの体力を奪ったな」

 夏バテは「あんさんは、正義のスーパーヒーローの、何だす?」と出てくる。

カミタマン「親友のカミタマンだ!」 

夏バテ「へへへっへ、あんさんも体力失うて、夏バテになりたいみたい、でんな」

 夏バテはカミタマンに注射器を刺す。「ああああ」とカミタマン。だがカミタマンは木槌を振り上げて季節を冬にしてしまう。急に降り出す雪。

夏バテ「わわわわては冬には弱いんだす」

 夏バテは自分の頭に注射器を当てると、砕け散った。ネモトマンの体力は袋に入っている。カミタマンは回収。

 

 カミタマンが奪還した体力は赤いゼリー状で、ネモトマンは自宅でぱくぱく食べる。ネモトマンは椅子を平気で持ち上げる。

カミタマン「夏バテは?」

ネモトマン「治ったみたい」

 「やったやったー」と喜ぶカミタマン。そこへ横山から電話が。

カミタマン「え、また変な虫が出た?」

ネモトマン「よし、今度こそネモトマンに任せろ」

 「とお」と飛び立つネモトマンだが、カミタマンは「なんか心配」とつぶやく。

 

 横山の家では変な虫がとうもろこしを食べていた。庭から入ってくるネモトマン。

横山「あ、ネモトマン!」 

ネモトマン「横山くん! 今度こそ」

横山「変な虫をやっつけてくれるの?」

ネモトマン「いや、きみを元気いっぱい応援してあげる! フレーフレーよっこやま! 頑張れ頑張れよっこやま! わー」

 呆れる横山。カミタマンも現れ、嘆く。

カミタマン「これだもん。これだもん。ねえ?」

【感想】

 第11話ではスーパーヒーローの慢心がピンチを招き、今回はヒーローが夏バテになる。第15話からずっと暑さが強調されていたので夏バテは順当だといえなくもないが、それにしてもおでんやそばが人を襲撃したり変な虫と称する江戸っ子のモンスターが現れたり、全体に突飛なアイディアに彩られた怪編で酷暑のさ中に見た幻覚のようにも思える。

 不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)ではシューマイとチャーハンが駆け落ちし、『どきんちょ!ネムリン』(1984)ではバス停の彷徨や除夜の鐘の苦悩が描かれた。本作でもそろそろ無生物の活動が始まってもおかしくないタイミングであったけれども、それまでの無生物路線では前段的なドラマが少々あってからおもむろに無生物が動き出したのに対して、今回は冒頭から寿司やおでんが平然と人を襲っているのには驚愕する。浦沢義雄脚本では『ネムリン』に「広域暴力団おでん組」が、本作の翌年のオリジナルビデオ『妖怪天国』(1986)での浦沢先生の担当エピソードでは「おでん神社」が登場しているが、寿司やそばはこの時期にはまだあまり出てきていなかった感がある。次回の第19話で麺類が主演しているほか、不コメでは3年後の『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第16話「お寿司の恩返し」では寿司がメインで扱われることになる。

 ポリバケツが主婦を襲う場面ではネモトマンが登場する定番のBGMが流れると、主婦は「あ、あの歌は」と口にする。浦沢脚本では『ネムリン』の第20話「モンローの純愛物語」では井上陽水のメロウな曲を耳にした主人公は恋愛模様が進行中だと知る。映画『仮面ライダー 世界に駆ける』(1989)では『仮面ライダーBLACK』(1988)の主題歌が流れ、主人公が「この歌は『仮面ライダーBLACK』の…!」などと言い出す。恋愛の場面ならばバラードが、ヒーロー物ならば主題歌が流れ、もはや慣例?になっているので、ならばそれを劇中で登場人物に言わせて展開を動かす方便にしてしまうわけで、剛腕といえば剛腕であり、パターン化した演出への醒めた眼も感じられる。

 横山の家にいる変な虫は、電話口では虫としか言われないゆえ小さな害虫かと思いきや人間の大人サイズの怪人で、造形はこの前年の『宇宙刑事シャイダー』(1984)に出てきた不思議獣を想起させる。変な虫は横山の家で勝手に何か食べたと思ったら、実は親切な江戸っ子で、しかも新聞や牛乳、タクアンの配達も精力的に行っており(タクアン配達など聞いたこともないので耳を疑った)、やがて横山宅に再度上がり込む?という支離滅裂な行動をみせる(彼の出自が何だったのかは説明が全くない)。

 敵役の夏バテは人間態が存在するが、後年の『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)でお年玉袋やあじさい、紫外線などを俳優が顔出しで演じており、その萌芽を思わせる。

 今回はゲストキャラクターや寿司などの衝撃が大きいけれども、全編食べる演技の多い岩瀬威司氏の力演は特筆に値する。根本家の面々はネモトマンの活躍を白けた顔で語るシーンが印象的。この段階では伸介がネモトマンだと半信半疑なのだと推定される。

 演出は冨田義治監督で、不コメでは『ロボット8ちゃん』(1981)や『ペットントン』、『もりもりぼっくん』(1986)を撮った。他に『ジャイアントロボ』(1967)、『キイハンター』(1968)、『超人機メタルダー』(1987)などを手がけており、特に『帰ってきたウルトラマン』(1971)での演出作品は評価が高い。今回はさすがベテランと言うべきか、クレージーな浦沢脚本に全く動じずにまとめ上げた印象で見ていて敬服した(冨田監督による、今回と同時撮影の第19話も力のこもった怪作)。苦悩するカミタマンの顔が池に映るのは『ペットントン』での冨田演出の第37話「ガン太は根本のお兄様」や本作の第21話にも同様のシーンがあった。

 夏バテ役は吉本新喜劇の谷しげる氏。テレビ『てなもんや三度笠』(1962)や『てなもんや一本槍』(1968)といったバラエティなどに出演し、そのイメージでの起用であろう。老け役で知られ、今回も当時まだ40代とは思えない風貌と存在感であった。

 変な虫のスーツアクターは高木政人氏。声は篠田薫氏で、氏は不思議コメディーシリーズには『ロボット8ちゃん』や『バッテンロボ丸』(1982)などに声の出演、『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)や『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)には俳優として出演。本作の第19話や第46話にも異なる役で登場する。

 寿司に襲われる山田さんは東映作品に多数出演している山本緑氏。この後の第26話にも出てくる。

 そばに襲われる伊藤さんの河端純子氏は『星雲仮面マシンマン』(1984)の第20話、『巨獣特捜ジャスピオン』(1985)の第33話、『スクール・ウォーズ』(1984)の第1話、『うちの子にかぎって…スペシャル2』(1987)などに出演。

 おでんに襲われる村山さんの楊静恵氏は『3年B組金八先生スペシャル2』(1983)や『巨獣特捜ジャスピオン』の第7話に出演。

 ポリバケツに襲われる主婦の三谷侑未氏は映画『式部物語』(1990)、テレビ『喰いタン』(2006)や『相棒 Season7』(2009)などに出演しており、筆者には『電光超人グリッドマン』(1993)のレギュラーが印象に残る。

 ポリバケツの声は篠原大作氏。テレビ『ウルトラセブン』(1967)の「史上最大の侵略(後編)」や映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998)などに俳優として出演し、『ハリーポッター』シリーズなどの吹き替えを務めた。本作では第25話にも出演している。

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