『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第50話「ネモトマンは伸介」(1986年3月23日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

 クラシック音楽の流れる中で、根本家ではパパ(石井愃一)とママ(大橋惠里子)、マリ(林美穂)、カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)が朝食を取る。伸介(岩瀬威司)が「いただきまーす」と遅れて来る。

ママ「ちゃんと起きてこなくちゃ」

伸介「いいじゃん、春休みなんだから!」

 パパが「伸介!」と言うと伸介はにこやかに「なあに?」。

パパ「お前パジャマで」

伸介「春休みだもん」

 カミタマンが「伸介!」と言うと伸介はにこやかに「だから?」。

カミタマン「顔ぐらい洗って」

伸介「春休み春休み」

 伸介はマリのほうを見て「食べていいのかな、マリ?」。

マリ「どうぞ」

 猛然と食べる伸介。

 

 洗った食器を拭きながら、ママとマリは呆れた表情を浮かべる。

マリ「珍しいわよ。朝ごはん食べすぎて、動けなくなる人なんて」

ママ「ほんとに」

 ママは「何であんな子に育っちゃったのかしら」と泣き出す。マリは食卓で動けない伸介を「お兄ちゃん、いつまでそんなところにいるの! 早く着替えなさい」「しょうがない子ね」と2階へ追い立てる。

ママ「せめて普通の小学生に育ってほしかった」

マリ「ママ、同情してあげる」

 ママは号泣し、マリはママの頭を撫でる。

マリ「よしよし」

ママ「マリ」

マリ「いい子ね」

 

 伸介は部屋で着替えて、また寝る。

 

 カミタマンは電話を受ける。

カミタマン「3丁目の蟻地獄公園? 判った。すぐネモトマンを行かせる」

 

 カミタマンは、寝ている伸介をネモトマンに変身させる。

カミタマン「起きろ起きろ。何やってんだ。リクエストリクエスト」

 寝たままのネモトマンを、カミタマンは木槌でぽこぽこ殴る。仕方なく起きるネモトマン。

カミタマン「帰りにチーズバーガー買ってきてくれたまえ」

ネモトマン「おっけ」

 

 公園に来たネモトマンは少年(石井孝明)に「あの子が泣かせたのか」と訊く。少年が指した先にボールを蹴っている子がいる。

少年「あの子がひがんで。うちのパパ、大きい会社の社長なの。それに外車も持ってて、ママはいつも綺麗な服を着ているし、おいしいものなら何でも食べられるし、まあぼくは女の子にもてるし」

 ネモトマンの表情が険しくなる。

少年「もう少し貧乏したい」

 ネモトマンは「この野郎、勝手なこと言いやがって」とつかみかかる。ボールを蹴っていた子が止めに入る。

ネモトマン「お前だって腹立たないのかよ!」

 

 横断歩道を渡っていたマリは、ネモトマンが「チーズバーガー3つ」と注文しているのを見かける。

マリ「ネモトマンたら」

 

 帰宅するマリは、チーズバーガーの袋を持ったネモトマンが家に入るのを見る。

 

 庭では伸介とカミタマンがチーズバーガーを食べている。

マリ「まさか」

カミタマン「マリちゃん」

 マリは「うん?」と動揺した声で返事する。

カミタマン「どう、食べない?」

 伸介は「チーズバーガー3つ、お兄ちゃんが買ってきたんだぞ」。その言葉にマリはショックを受ける。

カミタマン「どうしたの?」

マリ「いえ別に」

伸介「食べないのか?」

マリ「いらない」

伸介「変な奴」

 

 マリは自室に入る。「チーズバーガー3つ、お兄ちゃんが買ってきたんだぞ」という伸介の声が思い出される。

マリ「お兄ちゃんがネモトマン?」

 マリは「まさか」と首を振って「もしもし根本と申しますが。あ、横山さん?」と横山にに電話する。

 

 横山(末松芳隆)は電話を受ける。

横山「え? マリちゃんが突然ぼくを好きになって、デートしたいって?」

 

 受話器を持ったマリ。

マリ「そうなの。突然で何か企んでいるなあってお思いでしょうけど」

 

 笑顔の横山。

横山「そんなことはどうでもいいの。ぼく何企まれても平気だから」

 

 横山は公園の地面に寝そべる。

横山「さあどうぞどうぞ、マリちゃん。さあ早く企んで! 早く早く」

マリ「横山さん、そういうことじゃなくて」

横山「ぼくは平気。何企まれても平気だから」

 マリは「横山さん、いい加減にしないと怒るわよ」と横山を蹴る。横山は「ああ!」と悲鳴を上げ、マリは笑顔になって何度も蹴る。

 

 公園のベンチでマリと横山は缶ジュースを飲む。横山が「マリちゃん、きょうは忙しいんだね」と近づくと、マリは「何が?」と離れる。

横山「優しくなったり、怖くなったり」

マリ「そうかしら」

 見ると強面の男(手塚英明)が来る。

マリ「横山さん、ヤクザよ」

横山「しっ、声が大きい」

 マリは男に駆け寄り「かっわいい」。男は「何だと」とマリを捕まえる。マリは「助けて」「ああ」と声を上げる。驚く横山。

マリ「横山さん、ネモトマンをリクエストして」

横山「うん」

 男が何だろうという顔をしていると、マリは「あーっ」とわざとらしく叫ぶ。男は「しーっ」と言って逃げ、マリは追いかける。

 

 テーブルでカミタマンはマンガのお色気シーンを読んでいた。横山が来る。

横山「マリちゃんがヤクザに」

カミタマン「な、何!」

横山「ネモトマンリクエストだって!」

 

 ベッドで伸介も同じマンガのお色気シーンを読んでいた。カミタマンが来る。

カミタマン「マリがあぶない」

 カミタマンが伸介を変身させようとすると、何故か2階の窓の外から横山が。

横山「お前たち何してんの?」

 白目でおどけてごまかす伸介。

 廃車置場に来る伸介とカミタマン。

カミタマン「誰もいないな。よし、ここなら」

 カミタマンが伸介を変身させようとすると、何故か車のトランクの中から横山が。

横山「お前たち、なんか悪いことでもやってんだろう?」

 伸介とカミタマンは「♪そんなことないやい」と歌ってごまかす。

 

 神社に来る伸介とカミタマン。

カミタマン「よし、ここまで来ればだいじょぶだ」

 カミタマンが伸介を変身させようとすると「やっほー」と何故かパラシュートで横山が降りて来る。

横山「お前たち、妹がヤクザにやられそうだっていうのに何やってんだ?」

伸介「カミタマン、もうしょうがないよ」

カミタマン「ああ」

 カミタマンはブーメランで横山を気絶させる。

 

 逃げた男が「やれやれ」と公園で来ると、木の陰からマリが「ヤクザさん」と現れる。マリは男の足を踏み、「助けてー」と悲鳴を上げる。通行人が集まってきて、男は「おれじゃないから。おれ何もしてないから」と逃亡。

 

 男は「助けてくれ」と交番に駆け込み、警官に助けを求める。マリはスキップしてきてウインク。男は怯える。

マリ「ほんと、最近のああいう人たちって根性ないんだから」

 マリが歩いているとネモトマンが駆けつける。

ネモトマン「あ、マリさん」

マリ「ネモトマン」

 

 マリはソフトクリームを買って来て「いろいろご心配かけまして」とネモトマンに差し出す。いっしょに食べるふたり。マリが「おいしい?」と訊くとネモトマンはうなずき、マリは「嬉しい」。

マリ「嬉しいついでに、もうひとつお願いしていいかしら?」

ネモトマン「どうぞどうぞ」

マリ「お顔見せて?」

 ネモトマンが振り向いた瞬間、マリはネモトマンのヘルメットを取る。伸介とマリは思わず見つめ合ってしまう。

マリ「やっぱり」

 「お兄ちゃんのバカ」と言い捨てて、マリは行ってしまう。

 

 食卓のテーブルでカミタマンは泡立て器で伸介をぽこぽこ叩いて「バカバカ」と叱責。

伸介「そんなに叩くなよ。それでなくても頭悪いのに。カミタマン、これ以上頭悪くなったら責任取れよな!」

カミタマン「伸介、お前って奴はどこまで」

 

 池のほとりにいるマリ。

マリ「お兄ちゃんがネモトマンだなんて」

 カミタマンが来て、水面に映る。

マリ「どうして黙っていたの?」

カミタマン「正義のスーパーヒーローはその正体を明らかにしちゃいけないんだ」

 マリは「うちのパパとママは、お兄ちゃんに普通の小学生になってもらいたかったのよ」と語りかける。

カミタマン「普通の小学生?」

マリ「そうよ。頭がいい子とかスポーツのできる子とかじゃないのよ。普通の小学生になることを望む両親だなんて、あたしパパとママがかわいそうで」

カミタマン「マリ」

マリ「それと言うのもカミタマン、あんたがお兄ちゃんにネモトマンなんかやらすから、お兄ちゃんその気になって。あんたの責任よ」

 「マリ」とネモトマンが来て、仮面を外す。

ネモトマン「お兄ちゃん、ネモトマン辞める。お兄ちゃん、パパとママの望むような普通の小学生になる」

 仮面を外した伸介とマリは笑顔で抱き合う。カミタマンは号泣。

カミタマン「よし、ネモトマンの正義のスーパーヒーローとしての引退式はこのカミタマンに任せなさい」

 

 フルーツを食べているパパとママ。

パパ「何、今度うちでネモトマンが正義のスーパーヒーロー引退式をやる?」

マリ「そうなの」

ママ「じゃあようやく伸介も正義のスーパーヒーローに飽きて?」

マリ「えっ!?」

パパ「まあ、そろそろ飽きるころだろうと思ってたけど」

 「飽きるころって?」と驚くマリ。

ママ「これで少しは勉強でもしてくれれば」

パパ「それはないだろう」

マリ「ちょっと待ってよ。ふたりとも知ってたの?」

パパ「何を?」

マリ「お兄ちゃんがネモトマンだってこと」

ママ「当たり前でしょう。あんなもんやるの、この町内じゃ伸介ぐらいっきゃ考えられましぇーん」

マリ「あんなもん…」

パパ「何も引退式なんてくだらんもんやんなくても」

 

 公園で伸介は引退式の練習をする。

伸介「きょう限り、根本伸介はネモトマンを引退し、普通の…普通の…えっと、あれ?」

 カミタマンは「もう一度!」と指導。

伸介「きょう限り、根本伸介はネモトマンを引退し、普通の根本伸介として普通に生きていきます」

 「迫力ないよ!」などと細かく指示するカミタマン。

伸介「きょう限り、根本伸介は正義のスーパーヒーロー!爆発!ザ・ネモトマンをやめて、根本伸介として普通に生きていきます」

 マリが来る。

伸介「マリ。お兄ちゃん、イカしてる?」

 マリは「う、うん」と言って、パパとママが正体を知っていたとカミタマンに告げる。

マリ「これじゃ引退式やっても感動なんて」

 

 引退式でパパとママが白けた顔で拍手する。

 

 想像するマリ。

マリ「傷つけることに」

カミタマン「なるなるなる」

 伸介は真面目に練習している。

マリ「どうしよう」

カミタマン「どうしようったって、パパとママに感動してもらうより」

 

 テーブルでお茶を飲んでいたパパとママは驚く。

カミタマン「パパとママが感動してくれなきゃ、伸介は傷ついてやがて非行に。それもただの非行じゃないんだ。ネモトマンの非行」

 パパとママは、ガラの悪いネモトマンが「おらおらおら」「邪魔なんだよ」などと言って街を歩く姿を思い浮かべる

パパ「ママ、あの格好で非行に走られちゃ」

ママ「ええ、ご近所の笑いもんよ」

パパ「よし、感動しよう」

 

 公園ではまだ伸介が練習中。

伸介「パパ、ママ、マリ」

 カミタマン不在なので、マリが「もう1回!」と棒を持って厳しく指導。

伸介「パパ、ママ、マリ。ありがとう」

マリ「感謝の気持ちが足りない。もう1回!」

 マリが「お兄ちゃん、もういい加減にして」と行こうとすると伸介は「見捨てないで」。

 

 食卓ではカミタマンがパパとママを指導。

カミタマン「それでは、はい感動」

 パパ、ママ、カミタマンは「あああああ」とゴリラのように感動の練習。

 

 マリは枝で伸介を叩いてスパルタ指導する。

 引退式の本番でパパ、ママ、マリ、カミタマンはゴリラのように感動を表現し、紙吹雪を投げる。

伸介「普通の小学生として普通に生きていきます」

 パパとママは感極まって「感動!」と伸介を持ち上げる。笑うカミタマン。

マリ「ちょっと感動しすぎじゃないの」

カミタマン「いいのいいの、このくらいやって」

伸介「知らなかった知らなかった。パパとママが、そんなにぼくがネモトマンだったということに感動してくれるなんて」

 無言で見ているマリとカミタマン。

伸介「よし、ぼくはやる」

パパ・ママ「え?」

伸介「ぼくはやっぱりネモトマンとして生きる」

カミタマン「何?」

マリ「やっぱり」

 パパとママは「ダメだこりゃ」と頭を抱える。伸介はネモトマンの仮面をかぶって「正義のスーパーヒーロー!爆発!ザ・ネモトマン」とポーズ。マンガのような集中線が走る。

カミタマン「こら、やめろ伸介」

 飛ぶネモトマンにみなは茫然となるのだった。

【感想】

 遂にネモトマンの正体が伸介だと明らかになる回だが、既に第11話でみなに一旦知られ、また第32話でマリが横山を疑っているだけに今回はどうなるのかと思ったらマリが正体を改めて知るくだりはシリアスに描かれた。序盤で伸介に関して普通の子になってほしかったと悲嘆に暮れるママをマリが慰め(ネモトマンとしてそこそこ多忙であるわけなので私生活がだらしなくてもやむを得ないのでは、とも思うけれど)、パパとママは伸介が平凡な子になることを望んでいたのだと、マリは両親の心を慮ってカミタマンをなじる。だが子の心親知らずで、つい先刻まで嘆いたママとパパは既に伸介がネモトマンだと気づいていたのだとへらへら認め、その反応にマリが驚き困惑するのは第11話と同様であった(第38話でパパは正体に気づいていなかったが、いつ確信したのかと考えると愉しい)。脚本の浦沢義雄先生もスタッフも、第11話や第32話でネモトマンの正体をめぐる応酬があったのをおそらく失念していたのだろうけれども、似たような情況が反復されたことで今回のシリーズ総まとめの感は強まった。

 スーパーヒーローの正体を明かす話としては『ウルトラセブン』(1967)の最終話「史上最大の侵略(後)」が悲愴感あふれるメロドラマとして盛り上がり、『ウルトラマンタロウ』(1973)の最終話や『ウルトラマンティガ』(1996)の終盤なども感動的であった。しかし本作では、パパとママが正体を知っているだけならまだしも、白けていては伸介がショックを受けるのでみなは感動の芝居に努め、「よし、感動しよう」「それでは、はい感動」などと信じ難い台詞が飛び交う。最終的にパパとママが「感動」したせいで伸介は引退を翻意し、試みは完全に裏目に出てしまうが、不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)や『どきんちょ!ネムリン』(1984)で既に感動を揶揄する兆候はあった。今回はその集大成で日本的でウェットな「感動」を徹底的に茶化す異端ぶりには敬服する。浦沢先生は本作の20年後のインタビュー記事でも「感動しない事が美しい」「(感動シーンは)比較的、避けてるよ」と述べていて、感動拒否の思想に象徴されるドライさが浦沢作品の魅力である。

 タイトルロールは伸介でもむしろ今回出ずっぱりで存在感を見せつけるのはマリで、ママを慰めたりネモトマンの正体に驚いたり両親に当惑したりするのはいいとしても、横山を狂気の笑顔で蹴りつけ(横山は蹴られて喜ぶ)、強面の男を翻弄するトリックスターぶりを発揮。事実、横山には「マリちゃん、きょうは忙しいんだね」「優しくなったり、怖くなったり」と言われているけれども、ひとりの人物と思えないほど感情が変転しているが、林美穂氏が自然な演技で驚異的にねじ伏せてしまう。一方で平静を失ったり困惑したりもする、氏の台詞回しの上手さも特筆すべきであろう(今回のみ三つ編みになっている)。

 伸介とマリが公園でソフトクリームを食べたり、池のほとりで和解したりする場面では兄妹らしくさわやかで好ましい。このあたりは坂本太郎演出の面目躍如で、不コメでは今回の他に『ペットントン』の第25話「根本君のガールハント」、『ネムリン』の第29話「ママは恋のライバル」、『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第32話「輝く南十字星伝説」、『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第36話「お彼岸ライダーの謎」などのエピソードが坂本演出による少年少女ドラマの逸品として挙げられる。

 強面の男役の手塚秀彰氏は『ミッション・インポッシブル』シリーズなど多数の吹き替えで知られ、不コメの浦沢脚本では『じゃあまん探偵団魔隣組』の第7話「フランケンと少女の夢」でフランケンシュタイン役を好演。『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)の第40・41話での総司令役も印象深い。

 ネモトマンに自慢する少年の石井孝明氏は不コメでは『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)にレギュラー出演。2024年に『覇悪怒組』のイベントに登場し、打ち上げの飲み会では筆者も握手してもらった。

 少年が自慢したりマリとネモトマンがアイスを食べたりするのは、光が丘の夏の雲公園。マリと横山が強面の男に遭遇するのも同じ光が丘の赤塚新町公園。

 ネモトマンが引退式の練習をするのは石神井公園のステージで、第28話でも使われた。