
【ストーリー】
早朝、居間の戸を開けるカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。小鳥のさえずりが聞こえて、カミタマンは「もう春か」と季節の移ろいを感じていた。
カミタマン「渋いねえ」
だが「大変大変、大変」ととらばる聖子(小出綾女)が庭に現れる。
土手でジョギングするとらばる聖子。まばゆい光が差し、朝日から横山に似た若さま(末松芳隆)が歩いて来る。
聖子「あんた、横山じゃないの」
若さまは振り向く。
聖子「どうしたの、そんなかっこして」
若さま「余は横山じゃない。お城の若さまじゃ」
訝しむ聖子に、若さまは「近う寄れ」「近う寄れと言っておるのに!」。若さまは自分から聖子に近づいて行き、聖子の臀部を撫でさする。「うふふふふ」と満更でもない聖子。
若さま「余は満足じゃ。あっぱれあっぱれ」
聖子はカミタマン相手に嬉しげに「やんなっちゃう。横山ったら、あたしのおしりを。あた知って小学生に好かれるタイプなのかしら」。
カミタマン「でも横山が何で若さまのかっこして」
聖子「さあ」
突如「近う寄れ」と声がして、見ると庭に若さまが立っている。驚くカミタマン。若さまはまた聖子の臀部を撫でる。聖子はまた嬉しげに「助けてきゃあ」と言いながら逃げ、若さまは聖子に触る。
カミタマン「やめろやめろ。お前たち朝っぱらから何やってんだ」
「近う寄れ」「ああやだあ」「近う寄れ」「はずかしー」などと言うふたりの痴態にカミタマンは「あーあーあ」。
パジャマ姿のマリ(林美穂)が窓を開けて「静かにして!」。
聖子「あ、マリちゃん。横山ったら、あたしのこと」
マリを見た若さまの目からハートが飛び出す。
若さま「苦しゅうない。近う寄れ。近う」
若さまはマリの臀部に触る。マリは若さまに平手打ち。若さまは聖子とマリとを見比べて「やっぱりおなごは若いのに限る」。
聖子「それ、どういう意味よ!」
若さまは「近う寄れ」とマリを追いかける。聖子は「あたしの立場はどうなるのよ」とカミタマンをこづく。
カミタマン「あじゃ、ばばあ」
マリはパパ(石井愃一)とママ(大橋惠里子)の寝室に逃げ、若さまは追ってくる。マリは「えい」と枕で応戦。枕が当たって起きたパパとママは驚く。
おしりを動かして不機嫌なとらばる聖子。
聖子「じゃあこういうことなの? 私のおしりよりもマリのおしりのほうがチャーミングだと!?」
カミタマンは「そうじゃなくて」と困惑。
マリは伸介が寝ている部屋にも逃げて来る。「苦しゅうない」「近う近う」と追う若さま。伸介はベッドから転がり落ちる。
庭でカミタマンを背中に乗せて馬になっている聖子。
カミタマン「そんなに興奮しないで、どうどうどう」
マリが「カミタマン、何とかしてよ」と来る。カミタマンはブーメランを発射し、若さまは「無念じゃあ…」と倒れる。
居間で電話するカミタマン。みなは気絶している若さまを囲む。
カミタマン「じゃあ、横山んちには横山そっくりな親戚はいないんだな」
自宅で眠そうな横山(末松芳隆)。
横山「何回言わせんの。ぼくそっくりの親戚なんかいないって言ってるだろ!」
カミタマンは「ごめんごめん。じゃあまた飯でも食いに来いよ」と切る。
マリ「じゃあその人、本物の?」
聖子「そうかもしれない。何しろ、朝日から現れたんだもん」
カミタマン「太陽の光がタイムマシーンになって、江戸時代から」
伸介「そんなことってあんの?」
パパ「太陽のエネルギーは無限っていうから」
ママ「そうね。タイムマシンの役目ぐらい」
マリ「そんなことより、その若さまどうすんの?」
カミタマンが若さまを起こすと、気がついた若さまは急に「父上の仇、覚悟ー」とカミタマンに斬りかかる。カミタマンは逃げ、「ちょっと待ってよ」と思わずしゃもじを持つが、そのしゃもじも斬られる。みなは「おやめくだされ、若君どの!」と慌てて止める。
カミタマン「冗談じゃないよ。どうしてカミタマンがお前の親父の仇になんなくちゃいけないんだよ!?」
マリは「ここは私たちに任せてカミタマンは外に」「若さまにはカミタマンが父上の仇じゃないことを言っておくから」とカミタマンを逃す。
若さまは振り払うが、伸介が庭にロープを張って若さまを転ばせる。みなが若さまを取り押さえると、若さまは「無念じゃ」と泣く。
マリ「あんたどっから来たの?」
若さま「よくぞ訊いてくれました、姫君」
マリは「姫君?」と喜ぶ。若さまは「余の父はお城で殿さまをやっておられた」と身の上話を語り出す。

池のほとりで殿さま(渡辺寛二)は腰元(渡部るみ)たちと「殿さまこちら、手の鳴るほうへ」と目隠し鬼をして遊んでいた。対岸で忍者(上田弘司)が様子を窺う。
「見ーつけた」とはしゃぐ殿さま。忍者がささっと走って来る。
忍者「殿、お命頂戴する」
忍者は手裏剣を放ち、殿さまの胸に命中する。
伸介「じゃあ若さまの父上、お殿さまは忍者にやられたっていうわけなんだね」
若さま「おお、何ともの判りのよい少年」
伸介「いやあ。それで父上の仇をさがし回っていたら、太陽の光に吸いつけられ、江戸時代から現代に来たっていうわけなんだね!」
若さま「一を聞き百を知るその心。いやあ、伸介殿。余は素晴らしいものを見せてもらえました」
若さまは合掌する。マリは、それならカミタマンは父上の仇ではないと言明。
マリ「カミタマン、忍者じゃないもん」
若さま「しかし、あの怪しげな術は」
マリ「カミタマン、神さまだからあのくらい」
みなは頷く。「せっかく父上の仇を見つけたのに」と若さまは泣く。
若さま「余は信じない」
マリ「しつこい人ね」
若さま「余は余の手で、あの者が仇かどうか調べるのじゃ」
伸介「カミタマンのことか?」
若さまは、あの者を捕らえら褒美を取らすと言い出す。パパは新しいゴルフクラブ、ママは毛皮のコート、とらばる聖子は美食を想像。みなは俄然やる気になる。
マリ「みんないいの? そんな約束しちゃって」
伸介「だから大人って嫌いなんだよ」
パパ「嫌いで結構。パパはパパなりの信念を持って」
ママ「そう! 信念を持てば何をやってもいいの」
マリは「それはないでしょ」と抗議。
聖子「お黙り、小娘」
マリは怒る。パパは「まあまあまあ、ここは私の顔を立てて」。
ママ「マリ、大人には大人の考え方があって、ねえ」
公園のベンチにいるカミタマンと横山。
横山「じゃあぼくそっくりの若さまがカミタマンのことを?」
カミタマン「ああ。何が父の仇だよ。全くいい迷惑だ」
庭でマリは「何なの、あのとらばる聖子とかいうおばさん」と不快感を示す。
伸介「しょうがないだろ、ああいう年ごろなんだから」
若さまは「姫君、ちと話が」。
横山は、若さまは自分の先祖かもしれないと言い出す。
横山「うち帰って調べてみる。おれ前から思ってたんだ。おれってどっか品がいいだろ。だから先祖は偉い殿さまじゃないかと」
「殿さま殿さま殿さま」などと歌いながら横山は行ってしまう。
カミタマン「バーカ」
すると虫取り網が飛んでくる。カミタマンを捕まえようとするパパだった。カミタマンは逃げて木に抱きつき「ツクツクボーシツクツクボーシ」。
パパ「このカミタゼミ」
後ろからママがパチンコで狙う。カミタマンはパチンコの玉をかわし、玉はパパの顔に命中。網はママにかぶさる。
「いったい何考えてんだ、パパとママは」とカミタマンが逃げて来ると、今度は漁師の格好をしたとらばる聖子が漁網でカミタマンを捕まえる。
聖子「エンヤトットエンヤトットエンヤトット。大漁だ」
だが網は銅像に引っかかり、聖子はこける。
若さまとマリは、甘味処であんみつを食べる 。
若さま「甘露、甘露」
マリ「お話って?」
若さま「別に。ただ」
マリ「ただ?」
若さま「姫君といっしょにいたかっただけ」
「正直なんだ」とマリは微笑む。
ふたりが店を出ると、横山が通りかかる。
マリ「あ、横山さん」
若さまと横山は対面する。
若さま「姫君、この御仁が噂の横山殿?」
マリ「そう。そっくりでしょ?」
若さま「全く全く」
横山は「もしかしてこいつ、ぼくの先祖かも」と言う。
マリ「それは違うわ。若さまには横山さんにないナイーブな心があるかも」
若さま「いやあ、判る判る」
横山「この野郎。いつのまにかマリちゃんの心に入りやがって!」
横山は若さまにつかみかかる。若さまは「無礼者!」と払いのける
横山「よーし、うちに帰って調べてやる。もしお前がうちの先祖なら、もう金輪際、お墓参りしてやらないからな!」
走り去る横山。マリは若さまの着物を直してやる。
カミタマンは庭に帰宅。家の中から「どうしたの?」と伸介が現れる。
カミタマン「パパとママと聖子が」
伸介は「何、そりゃ大変だ!」と急に激昂。
カミタマン「あ?」
伸介「カミタマン、すぐぼくをネモトマンにしてくれ!」
ネモトマンになってカミタマンを助けるのだという伸介に、気押されたようにカミタマンは呪文を唱える。変身したネモトマン(岩瀬威司)は「よし、これで」捕まえたぞ」とカミタマンを捕獲。ネモトマンは「望遠鏡はおれのもの」と夢想する。
伸介はカミタマンを縛り上げる。
カミタマン「伸介、お前って奴は」
伸介「いいじゃないの。ちょっと調べられるだけなんだから」
そこへパパとママ、聖子が帰ってきて驚く。
伸介「ダメだよ! カミタマンはぼくが捕まえたんだからね」
4人はカミタマンをめぐって取っ組み合いに。
マリと若さまは「若さまこちら、手の鳴るほうへ」「姫君どこじゃ」と目隠し鬼をしながら愉しそうに帰宅。

パパとママ、聖子、伸介はカミタマンを縛って献上し、若さまは「あっぱれあっぱれ」。
伸介「若さま、カミタマンはぼくが」
ママ「私たちで一生懸命」
若さまは「みなに褒美を取らす」とのたまい、4人は「おありがとうございます」。カミタマンは「浅ましい奴ら」と呆れる。マリもため息。
だが若さまの褒美とは「あっぱれあっぱれ」と言って頭を扇子で撫でることだった。4人は怒って「この野郎」とつかみ合いに。
マリ「このままじゃ若さまが」
カミタマン「知らないよ、あんな奴」
マリは「それはないでしょ」と、縛られているカミタマンを殴る。
カミタマン「ああ、ほどいて」
カミタマンはブーメランを発射してパパとママ、聖子、伸介を倒し、「ついでにお前も」と若さまにも直撃させる。
マリ「何すんのよ、カミタマン」
日暮れどきの土手に来た若さまとマリ、カミタマン。
若さま「カミタマン殿、すまなかった」
カミタマン「いや。父上の仇でないこと、判ってもらえればそれでいいの」
マリ「江戸時代に帰っちゃうのね」
カミタマン「タイムマシンもなくて大丈夫?」
若さま「朝日に乗って来たんだから、夕日に乗って帰ることもできるはず」
カミタマン「うん、明快な理論だ」
マリは「さようなら若さま」と頬にキス。
若さま「さらばじゃマリちゃん。カミタマン」
夕陽に向かって消えていく若さま。
夜になって、根本家でみなは横山も交えて寿司を食べる。
横山「やっぱりあいつ、うちの先祖じゃないって。うちの先祖は立派なお百姓さんだったんだ」
ママは「やっぱねえ」ととらばる聖子にビールを注ぐ。
マリ「それにしてもそっくりだった」
カミタマン「マリなんかお別れのキスなんかしちゃって」
横山「ええ?」
マリ「頬にちょっとね」
横山は「ぼくもしてぼくもして」と厭がるマリを追い回す。
【感想】
第40話以降は出番の少なくなった伸介を補うように、存在感を発揮したマリ × 横山コンビの決定編的なエピソード。
横山にそっくりの若侍が江戸時代から20世紀に現れるという浦沢義雄脚本にはよくあるタイムスリップ編で、横山役の末松芳隆氏が一人二役を務めて全編出ずっぱりで活躍(普段の奇人ぶりとは若干異なるトーンで好演している)。不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)の第31話「クリームあんみつ小百合姫」はレギュラーのひとりそっくりの姫(レギュラーの子役が一人二役)が現代にタイムスリップするという今回を彷彿とさせる趣向で、忍者に命を狙われていた。その次作『どきんちょ!ネムリン』(1984)では準レギュラーのひとりがタイムスリップおじさんで時間旅行が行われ、第25話「出た!ベートーベン」ではベートーベンが現代に召喚された。ただし『ネムリン』のタイムスリップおじさんはタイムスリップと銘打っていてもファンタジーの世界と行き来することが多く、同様に本作の第24話でもかぐや姫が絵本から現代に飛び出して、パパ役の石井愃一氏がかぐや姫を一人二役で演じていた。他に『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第6話「光源氏のバレンタイン」もフィクション(「源氏物語」)と現代とがつながっていた。一方で『ペットントン』の31話や『ネムリン』の25話が本来的な意味でのタイムスリップで、今回はそれらの系譜に属する。しかも時間移動の原理に関して「太陽の光がタイムマシーン」「太陽のエネルギーは無限」などと登場人物が真面目な顔で論じ、強引に押し切るのは笑える。そういえば江連卓脚本『仮面ライダーBLACK RX』(1988)でも太陽の光で不思議なことが起きて主人公がパワーアップする超展開があり、浦沢先生は江連脚本を「理屈っぽい」などと批判していたが、今回のタイムトラベルも似たようなものではないかという感がある。
前半では早朝にいきなり若さまがとらばる聖子とマリにセクハラしてしまい、特に聖子のくだりは平生よりも強烈。だが後半ではマリと若さまが甘味処でデートしたり目隠し鬼をしたりして、マリ役の林美穂氏はいつも通りだが末松氏は若さまの姿で別人の雰囲気があり、過去のマリと横山の抗争を思うとパラレルワールドではこんなふたりもあり得たのかと面白く、幾ばくかのせつなさも感じさせる(次回の第50話ではまた暴行が)。本作の序盤からやり取りの多かった末松・林両氏は相性の良さを感じさせて、伸介役の岩瀬威司氏とはまた異なるコンビの味わいがある。
『ペットントン』の31話(坂本太郎監督)ではレギュラーの一人二役で早着替えの場面があったけれども、今回の佐伯孚治演出は両者の対面を合成で処理。
タイムスリップの場面は朝日と夕日に歩いていく映像で、同時期の『時空戦士スピルバン』(1986)のタイトルバックに酷似していて同じ太陽であろう。
若さまをめぐって騒ぐ根本家の面々ととらばる聖子は、本作も終盤だけにカミタマン一座の息の合ったパフォーマンスといった趣きで笑わせる。第3話から登場したとらばる聖子は今回がラストで、小出綾女氏は興奮して馬になるという凄まじい怪演で有終の美を飾った。若さまが伸介を激賞する場面では、みなは困惑する文脈だがママ役の大橋惠理子氏は何故か微笑ましい表情を浮かべている(息子が誉められて嬉しかった?)。
若さまの父の殿さま役の渡辺寛二氏は、今回の時点ではまだ20代で意外に若い。テレビ『まんが道』(1986)の寺田ヒロオ役で知られ、他に映画『ゴジラvsスペースゴジラ』(1994)や『リング0 バースデイ』(2000)に出演。不コメでは『もりもりぼっくん』(1986)の第22話と『じゃあまん探偵団 魔隣組』(1988)の第49話にも登場する。
忍者役の上田弘司氏は大野剣友会所属で仮面ライダーシリーズに多数出演したほか、不コメでは『ロボット8ちゃん』(1981)のレギュラー(スーツアクター)を務め、『バッテンロボ丸』(1982)の第31話、『ぼっくん』の第23話などに登場した。
腰元役の渡部るみ氏は第19話、第48話にも異なる役で出演した。
マリと若さまがデートする甘味処は練馬区光が丘のゆりの木商店街の店で、第44話でも使われた。
前回で佃煮博士が退場し、今回でマリと横山にある意味で決着?がつき、本作もいよいよ完結が近い。



