『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第48話「これが噂の佃煮マン!」(1986年3月9日放送 脚本:浦沢義雄 監督:佐伯孚治)

【ストーリー】

 マリ(林美穂)はパパの肩を揉み、パパ(石井愃一)は気持ち良さげにお茶を飲む。伸介(岩瀬威司)はゲームをして、カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)はテーブルの上で雑誌を読む。洗い物をしているママ(大橋惠里子)は「さあ、きょうは誰から1番にお風呂入んの?」。

パパ「伸介、入りなさい」

マリ「ダメよ。あれやったら、何にも聞こえないんだから」

 ゲームに夢中の伸介。

ママ「マリ、入っちゃえば」

マリ「私、ちょっと風邪気味だから」

パパ「じゃあママ」

ママ「ダメなのよ。これから町会の寄り合いがあって」

パパ「私も寝る前に入るから」

ママ「もったいないなあ、せっかく沸かしたのに」

カミタマン「判りました判りました。カミタマンが入ればいいんでしょ」

ママ「そう? たまには1番でお風呂に入るのもいいものよ」

 カミタマンは雑誌を閉じて「調子のいいこと言っちゃって」と振り返る。「これで沸かしてなくて水だったりして」とカミタマンが部屋を出て行くと、ママはカミタマンがテーブルに乗っていた部分を拭く。

 

 「♪いい湯だな」と歌いながら浴室に入るカミタマン。

 

 ママは「いけない! ほんとに沸かしてなかった」と思い出す。驚くパパとマリ。

 

 湯船に飛び込んだカミタマンは「だから言わないこっちゃ!」

 

 翌朝、「ああ遅れる遅れる」「また拳骨食らうぞ」と急いで登校する小学生たち。やがて下校の時刻を迎える。

 

 カミタマンは風邪をひいて寝込んでいた。

カミタマン「きのうのお風呂のおかげで、ああ寒い」

 「ただいま」と帰宅した伸介はランドセルを放り出してすぐゲームを始める。

カミタマン「伸介の奴、最近すっかりコンピューターゲームに凝っちゃって」

 

 ゲームに没頭する伸介。

 

カミタマン「カミタマンが風邪引いてるの知ってるんだから、ちょっとお見舞いに来たって良さそうなもんだけど」

 

 庭からマリが「大変大変。変なおじさんが」と入って来るが、伸介は無視。

マリ「お兄ちゃん、遊んでいる場合じゃないのに。公園で!……いいわよ、もう」

 

 マリは寝ているカミタマンのもとへ来る。

マリ「カミタマン、大変なの。私の友だちが公園で」

 

 下校中のマリと友人(東山美鈴)の前に、公園で頭から紙袋をかぶった男が現れる。

男「食べちゃうぞー」

 男はマリの友人をつかみ、手を食べようとする。

 

マリ「カミタマン。早く行かないとあたしの友だちが」

 カミタマンは「判った、何とかする」と起き上がる。

マリ「でもその体じゃ」

カミタマン「大丈夫。カミタマンには正義のスーパーヒーロー・ネモトマンがついてるから」

マリ「そうね」

カミタマン「さあ、マリは早く公園に行って」

マリ「判った。すぐネモトマンを来させてね」

 

 マリは階段を降りながら伸介をにらむ。マリは「あ、ごめん」とゲーム中の伸介をお盆で殴る。伸介はひっくり返って「何すんだよ!」。マリは笑顔で「ごめんごめん」と行ってしまう。

伸介「あの野郎」

 階段の上からパジャマ姿のカミタマンが「ネモトマンになってマリの友だちの女の子を助けてやってくれ」と伸介に依頼。

伸介「だーめ。いまおれ忙しいの」

カミタマン「忙しいってテレビゲームしてるだけじゃないの」

伸介「そのテレビゲームに忙しいの」

 伸介は「いいよ、いつでもネモトマン辞めてあげるから」とやる気ゼロ。怒りつつ咳き込むカミタマン。

 

 マリが公園に戻ると、男が倒れている。

マリの友人「おじさん、おじさん。大丈夫?」

マリ「どうしたの?」

マリの友人「それが」

 

 男は調味料を持ってマリの友人を襲うが、友人が「厭ー」と紙袋をねじると前が見えなくなって「夜になっちゃったぞ」と混乱し、鞄で殴られる。

 

マリ「意外に根性ないおじさんね」

 マリに軽く蹴られた男は起き上がり、決まり悪そうに自分に塩とこしょうをかける。マリと友人が顔を見合わせると、男は自分の腕を食べようとする。マリと友人は「おじさん、何やってるの」と止める。

 マスクをしたカミタマンが公園に来る。

マリ「あのおじさんが自分を食べようとして」

 驚くカミタマン。

マリ「ネモトマンは?」

カミタマン「ああ、ちょっとトラブルがあって」

マリ「何でもいいから止めて」

 カミタマンはブーメランを発射。体調不良だけにふらふらしたブーメランは男に命中し、男は卒倒。

マリの友人「何なの、この人?」

 紙袋を破ったマリは驚く。

マリの友人「知り合い?」

マリ「佃煮博士!」

 紙袋の中の佃煮博士(及川ヒロオ)は目を見開いている。カミタマンも驚愕。

 

 カミタマンは佃煮博士に鍋焼きうどんをおごる。

カミタマン「それじゃあ、あまりの貧乏生活に遂に食べ物がなくなり、おいしそうな女の子を食べようとして反対にやられ、仕方ないから自分を食べようとしたと」

佃煮博士「そうだ! 悲惨だろう?」

 佃煮博士は「それにしてもうめえな、この鍋焼きうどん」と旺盛に食し、ライスも大盛りで頼む。そして「あれ、ほら」などと言ってカミタマンの注意を引き、その隙にカミタマンの天ぷらも取ってしまう。だがカミタマンは怒りもせず、静かに佃煮博士を見る。

カミタマン「佃煮、お前働くつもりは?」

佃煮博士「あるある」

 佃煮博士はご飯を頬張りながら「そういえばカミタマン。お前ネモトマンとトラブルを起こしたとか何とか…」と言い出す。

カミタマン「ああ。あんな奴、もう正義のスーパーヒーロー失格だ」

佃煮博士「うん。おれにできるかな?」

カミタマン「何を?」

佃煮博士「正義のスーパーヒーロー」

 驚くカミタマン。

佃煮博士「正義のスーパーヒーロー佃煮マーン。なーんちゃって」

 カミタマンが「お前、ほんとにやるつもりあんの?」と確認すると佃煮博士は「あるある」。だが懸念もあるという。

佃煮博士「正義のスーパーヒーローって生活できんのか?」

カミタマン「そりゃまあ、何とか。伸介、あ、いやいやネモトマンだってときどきケーキとか」

 

 ネモトマン(岩瀬威司)は悪人を倒す。少年が「助けてくれてありがとう。これはほんのお礼です」とケーキを渡す。

 

 佃煮博士の自宅で、カミタマンは「どうしよどうしよ。佃煮の奴、すっかり正義のスーパーヒーローやるつもりになっちゃって」と困惑。やがて佃煮博士は「こんなもんでいいかな」とヒーローの格好で出てくる。

 佃煮マン(及川ヒロオ)は自転車に乗って「ご町内のみなさま。こちらは毎度お馴染みのちり紙交換、こちらは正義のスーパーヒーロー!爆発!ザ・佃煮マンでございます」と宣伝。

カミタマン「カミタマン知らない。知ーらないっと」

 電柱や段ボールなどそこここに佃煮マンのポスターが貼られている。

 

 自宅で待機する佃煮マンとカミタマン。

佃煮マン「こうして電話の前にすわって待っていれば、向こうから正義のスーパーヒーローとしての仕事が」

カミタマン「そんなに甘いもんじゃ」

 電話のベルが鳴り、池で溺れているとのこと。

佃煮マン「判った。すぐ行く!」

 

 カミタマンと佃煮マンは、走って池に向かう。池の付近では佃煮マンはばて気味で、カミタマンに「早く早く」引っ張られる。佃煮マンはポーズをとるが、こけてしまう。

カミタマン「ダメダメ。早く溺れてる人を助けなくちゃ」

 佃煮マンは「どこだ、溺れてる者は」「沈んじゃったかな」とさがす。すると茂みから少年(粟野竜二)が現れ、指差した先は池に浮かぶサッカーボール。

カミタマン「え、溺れてるってあのボールのこと?」

少年「早くぼくのボール取って」

佃煮マン「この野郎、ボール取って? どういう性格してんだ」

 怒る佃煮マンをカミタマンは止める。

カミタマン「やめろ佃煮。これも真のスーパーヒーローになるための修行のひとつだ」

佃煮マン「…判ったよ」

 

 少年はカミタマンから「どうもありがとう」ボールを受け取る。ずぶ濡れの佃煮マンは「古池や 佃煮飛び込み 濡れねずみ」とふらふら。

佃煮マン「お礼もくれないで行っちゃった」

カミタマン「たまにはな、何もくれない奴もいるけど」

 

 自宅で落花生を食べてごろごろする佃煮マン。

佃煮マン「あれ以来、何にもかかってこなくなっちゃった」

カミタマン「正義のスーパーヒーローの仕事はそうそうあるもんじゃないんだ」

佃煮マン「何かこう、一発でっかい正義のスーパーヒーローとしての仕事をやってみたいもんだ」

 佃煮マンはカミタマンを見る。

佃煮マン「お前、適当に見つくろって事件起こしてきてくれや」

 カミタマンは「どうしてカミタマンが事件を起こさなくちゃいけないんだ」と佃煮マンの足に噛みつく。

佃煮マン「それじゃ仕方ない。この佃煮マンが適当に事件を起こして」

 

 想像の中で佃煮博士は公園で子どもを殴って泣かす。そして佃煮マンが現れて「坊やを泣かせたのは誰だ?」。子どもは佃煮マンを指差す。佃煮マンは驚くが、鏡を見て「そうか。こいつか」。自分の首を「成敗してくれる」と絞める。

 

 現実でも自分の首を絞め、「お巡りさん」と電話をかけようとして、自分の手を自分でチョップ。

カミタマン「ばーか、ひとりでやってろ」

 そこへマリが「大変大変」と来る 。

マリ「お兄ちゃんがコンピューターゲームにのめり込んじゃって」

 

 ゲームオーバーになって伸介は「頭にくんなあ!」とテレビをキック。するとテレビが怒りの表情を浮かべ、煙が吹き出る。

 

 マリ、カミタマンとともに駆けつける佃煮マン。 

 居間ではテレビが伸介を襲っていた。「カミタマン、ここはひとつ任せなさい」と佃煮マンは向かっていく。

佃煮マン「伸介殿を助けに参ったわ」

 佃煮マンは踊るようにコンセントを抜く。

佃煮マン「どうです、伸介くん。きみはもう助かったんですよ」

 マリは感心した様子で「もしかして佃煮博士って正義の味方に向いてるのかも」。

カミタマン「ああ、あまりにもあっけないあの解決の仕方。そうなんだ、佃煮マンこそ新しいタイプの正義のスーパーヒーローに」

 佃煮マンは「いやあ、なんのなんの」と調子づいて倒れ、その勢いでテレビゲームを壊してしまう。

佃煮マン「いや、ごめんごめん。この通りだ」

 伸介は「どうしてくれるんだよ」と佃煮マンを殴り倒す。

マリ「やっぱり正義の味方やるには根性なさすぎるみたい」

 

 自宅に戻った佃煮マンは悄然。

佃煮マン「おれなんてな、自分を食べちゃえばいいんだ」

 佃煮マンはまた自分に塩とこしょうをかけて足を食べようとする。止めに入るカミタマン。

カミタマン「やめろ、やめとけやめとけ。それ、腐ってるぞ」

 泣き崩れる佃煮マン。

佃煮マン「これから先、どうやって生きていけばいいんだ。何をやってもダメ。正義のスーパーヒーローもできないおれなんて」

 カミタマンももらい泣き。するとノックの音がして先ほどの少年とその母(島本須美)が訪ねてくる。母親は「子どもがどうもお世話になりまして」と大福を渡す。佃煮マンは「お大福」と即座に元気に。

母親「あの方は?」

子ども「ぼくのボール取ってくれた爆発ザ・佃煮マンさんだよ」

 大福を猛然と食べる佃煮マン。

母親「ほんとに面白い方。あ、いえあの、便利な方だってご近所の方にも宣伝しておきましたから」

 その刹那、電話が鳴る。カミタマンが出ると引越しの依頼だった。受話器を置くと、今度はお風呂掃除。電話はひっきりなしにかかってきてくる。

カミタマン「こら佃煮マン。食べてる場合じゃない。こんなに仕事が!」

 佃煮マンは喉を詰まらせる。

 

 根本家でみなはお茶を飲む。

パパ「じゃあ佃煮博士は正義のスーパーヒーローをやめて、町の便利屋として」

カミタマン「うん、まあ何とか」

 

 佃煮マンは主婦たちに引っ張りだこ。

佃煮マン「話せば判る」

 最後は逃げ回る羽目に。

【感想】

 因縁の佃煮博士との最終決戦…かと思ったら、カミタマンが佃煮博士の世話を焼き、意外なラストを迎える。当初は悪役としてモスガを狙い、とらばる聖子に追われる役回りだった佃煮博士は、やがて両者とは疎遠になり、直近の登場回ではカミタマンとの応酬の比重が大きくなった。前回では家賃が払えなくなってテント生活をしていたが、何か収入があったらしく今回はまたアパートらしき自宅に居住していて固定電話もある。どのように収入を得たのか不明だけれども、第42話で装着したグッドアイディア思いつきヘルメットが棚に置いてあるので、何かアイディアでそれなりの報酬を得た可能性がある。

 ただ新しい自宅に越してからも金には事欠いているようで、飢えてマリの友人を襲おうとしており、本作ではいまの感覚で見ればあぶない光景は過去に何度もあったが、今回の紙袋をかぶった中年男性が女子小学生につかみかかるさまは相当なインパクトではある。またタコの足食い的なギャグとして空腹のあまり自分に調味料をかけて食べようとしていて、かつて山田太一脚本の大河ドラマ『獅子の時代』(1980)にて自分を食べようとする飢餓が描かれ、それを想起して筆者は素直に笑うことがちょっとできなかった(本作の制作時は、第33話のように窮乏が笑いのねたになる時代だった)。

 第40話以降は伸介役の岩瀬威司氏の出番が減り、40話でマリがネモトマンに、第43話で横山がヨコヤママンに変身し、今回は遂に佃煮博士が佃煮マンに変身を遂げる。伸介の出演が少なくなったことの思わぬ付帯効果とも言えるけれども、悪役の佃煮博士が正義のスーパーヒーローを目指し、果ては町の便利屋として売れっ子になるというラストは驚きではある。博士は台所のゴキブリに妻を寝取られて借金まで押しつけられたという悲劇を背負っており、多額の借金がどうなったかは不明だが、そんな彼に便利屋という居場所ができたのはハッピーエンドなのであろう。

 浦沢義雄脚本では『ペットントン』(1983)の第44話「ナイターか!?正義の味方か」が正義の味方の仕事が犬を追っ払うことだったりして、ヒーローを揶揄的に扱っていたけれども、正義の味方は便利屋と大差がないという今回の結論?は本作が終盤にたどり着いた到達点だともとれる。ちなみに浦沢先生が全話の脚本を手がけて今回を演出した佐伯孚治氏がメイン監督のヒット作『美少女仮面ポワトリン』(1990)は「ご町内と宇宙の平和と安全」を守る戦士と規定されていて、今回をさらに発展させた理念だと言えようか。

 伸介はテレビに八つ当たりして、怒ったテレビに追いかけられる。ポリバケツが人を襲うなど無生物が旺盛に活動する世界だけに驚くにはあたらないが、煙を噴いたテレビが横移動する映像には唸った。

 佃煮博士=佃煮マン役の及川ヒロオ氏は自分を食べようとしたり自分の首を絞めたりする、自傷行為のような怪演を披露。さりげないところでは、公園でカミタマンに引っ張られる場面は当然、及川氏のひとり芝居であるわけだが上手い。

 お礼を言いに来る母親役は、近い時期に宮崎駿監督のアニメーション映画『風の谷のナウシカ』(1984)に主演した島本須美氏。他にも映画『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)や『もののけ姫』(1997)、テレビ『小公女セーラ』(1985)や『めぞん一刻』(1986)など声優としての代表作を多数持つ一方で、今回や『ウルトラマン80』(1980)の第4話など顔出しの仕事もある。ちなみにカミタマン役の田中真弓氏は宮崎監督の『天空の城ラピュタ』(1986)の主演者で、宮崎アニメの主役同士が同じ画面で共演している。

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 マリの友人役の東山美鈴氏は『教師びんびん物語』(1988)に出演した。

 ボールを取ってもらう少年役の粟野竜二氏は『巨獣特捜ジャスピオン』(1985)の第11話に出演。

 クレジットはないが、佃煮マンを追いかける主婦役として渡部るみ氏がわずかに登場する。

 佃煮マンが自転車で宣伝したり主婦に引っ張りだこになったりするのは、豊島区雑司ヶ谷。