『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第20話「末は博士かダメパパか」(1985年8月25日放送 脚本:浦沢義雄 監督:冨田義治)

【ストーリー】

 夕食をとっているママ(大橋恵里子)、伸介(岩瀬威司)、マリ(林美穂)、カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。

マリ「パパきょうも遅いの?」

ママ「残業だなんて言ってたけど、どうせいつものとこでしょ」

 伸介が「養老乃瀧チェーン?」と問うとママは「最近はつぼ八チェーンに変えたんだって」。

 

 高橋真梨子「桃色吐息」が流れて、つぼ八の看板が映る。パパ(石井愃一)が飲んでいるが、女子社員(三輝祐子)は隣の男性社員(平尾仁彰)にビールを注いでパパを無視。パパは女子社員の腕にべたべた触って「デスコ行こう、デスコ」。

女子社員「あのう、母が病気なもんで」

 周囲に相手にされず、ひとり飲むパパ。

 

 テレビで野球を見ている伸介とカミタマン。ベルが鳴ってマリが戸を開けると泥酔したパパだった。「パパですよ。チュウ」と迫るパパにマリは逃げ出す。パパは伸介に抱きつこうとして伸介はカミタマンを押しつける。パパはカミタマンにキスしようとする。

ママ「あ・な・た」

 鍋を持った笑顔のママは、パパに鍋を渡して「こっちん」。パパは自らを鍋で殴って卒倒。ため息をつく伸介。

 

 深夜に寝ている伸介とカミタマン。伸介が目を閉じたまま立ち上がる。

伸介「ママ。お願い、別れて。こんな人と別れて。こんな人、ぼくのパパじゃない。ただのおじさんだ。ぼくは認知しない」

 また寝る伸介。

カミタマン「伸介、そんなにまでパパのこと」

 伸介はまた立ち上がる。

伸介「絶対ぼくはパパみたいにならない」

 また寝る。

カミタマン「伸介…」

 やがて寝てしまうカミタマン。

 

 庭で歯を磨いている伸介。「もう酒やめた」と出てくるパパ。

パパ「伸介、悪いけど水1杯」

 伸介は無視。「何だあいつ」とパパ。窓から見ていたカミタマンは「全くダメな父親」と呆れる。

パパ「何がダメなんだ?」

カミタマン「自分の胸に手を当てて考えてみろ!」

 胸に手を当てて変顔で黙考するパパ。判らなくて首を振る。

カミタマン「じゃ自分の頭に!」

 パパは判らなくて「んぶぶぶぶ」と首を振る。

カミタマン「ええい、思い切って自分のしりに!」

 おしりに手を当てるパパ。

カミタマン「性格的に素直なところは認めるけど、やっぱり…」

 

 根本家の前に来た横山(末松芳隆)。

横山「ねーもーとくん。プール行こう」

 横山はいきなり服を脱ぐ。伸介は「こんなところで裸になんかなんなよ」と出てくる。通行人は「おかしな子だなあ」と失笑し、伸介は「あっちー」と暑いふりをしてごまかす。

 ママに漱石の1000円札を渡され、買い物かごを持って伸介はプールへ。

 

 ママは伸介がちゃんと宿題をやったか疑っていた。パパがダイニングで競馬をチェックしていると、2階からママの悲鳴が。パパが駆けつけると、伸介は宿題を全くやっておらず、ママは「全部やってない」とショックを受けていた。

ママ「あなた、ぼけっとしてないで早く伸介をプールから連れ戻して。行きなさーい!!」

 

 プールでカミタマンは「ああ気持ちいい」と浮かび、横山は犬かき。隅で伸介とパパが話していた。

パパ「全然やってないそうだな」

伸介「当ったり前じゃん。まだ夏休み、いっぱいあるもん」

パパ「そりゃそうだが」

 伸介は口を尖らせて「大体パパだって夏休みの宿題やったことあるの?」。パパは「そう言われてみると」と回想。

 

 三橋美智也「おんな船頭唄」の流れる中、少年時代のパパは友だち(金杉太朗、金澤和、篠崎健士)とメンコをしていた。

 

パパ「あんなもんはやんなくても別に人生には」

伸介「でしょう? だったら残り少ない青春を元気に遊ばしてよ」

パパ「私はいいが、ママが」

伸介「ママはパパの妻でしょ。妻のひとりやふたり、何とか上手くごまかしてよ」

 パパは「伸介、ここはパパを立てて宿題をやってくれよ」と頼む。

伸介「パパぁ!」

パパ「伸介、このまんまじゃお前」

 黙る伸介。

パパ「パパみたいになっちゃうぞ」

 伸介は「嘘ぉ」と愕然。

 

 泥酔して帰ってくる伸介。

 

伸介「やだやだやだ。絶対パパみたいになりたくなーい」

パパ「だろう?」

伸介「ああ」

パパ「でも、このままじゃ」

 伸介は卒倒。

 

 自宅で寝ている伸介。「誰が伸介に熱出させろって言ったの!」と怒るママ。

ママ「あたしはただ伸介をプールから連れ戻してほしいって!」

パパ「だから」

 ママはパパの首を締め上げる。

ママ「このまま伸介が風邪こじらせてガンにでもなったらどうする気!?」

 「ママしゃん、静かに」と慌てて止めるカミタマン。伸介は「ぼく、ガンにならないから」と起きて、淡々と宿題をやりに2階へ向かう。

ママ「あなた、どうしちゃったの?」

パパ「さあ」

カミタマン「おい、伸介。ふらふらしてるじゃないか。そんな体で勉強なんて」

 だが伸介は「パパみたいになりたくないからね」と行く。

ママ「何でもいいけど、ようやく伸介もやる気を出してくれたのね。あなた、ありがとう」

 だがパパの姿はない。

 

 パパはサンダルでとぼとぼと道を歩いていた。「パパみたいになりたくない」という伸介の声が響く。

 

 伸介が机で唸っていると「パパの小学生のころの写真だって」とアルバムを持ったマリが。風呂敷を背中につけたパパが写っている。

マリ「なんとなく、ときどきうちに現れるネモトマンに似ていない?」

 伸介のイメージの中でパパとネモトマンが重なる。

 パパはショックで街をさまよっていた。「どうしたの?」と来るカミタマン。昼間なのに居酒屋に入るとカウンターにカミタマンがいて「パパ!」。パパは涙ぐむ。

 

 自室で「パパも子どものころはぼくとおんなじことを」とつぶやく伸介。

 少年時代のパパは「爆発!ザ・ネモト仮面!」と塀から飛び降りるが「あいた」とつまづき、他の子どもたちにやられてしまう。

 

伸介「ということは、ぼくが成長すると」

 高橋真梨子「桃色吐息」が流れて、伸介が飲んでいるが、女子社員は隣の男性にビールを注いで伸介を無視。伸介は女子社員の腕にべたべた触って「デスコ行こう、デスコ」。

女子社員「あのう、母が病気なもんで」

 周囲に相手にされず、ひとり飲む伸介。

 泥酔して帰宅した伸介は鍋で「こっちん」と自らを殴って卒倒。

伸介「やだやだやだ。絶対パパみたいになりたくなーい」

 伸介はひょっとこ顔に。

 

 公園でパパもひょっとこ顔をして涙する。

パパ「こういうときはお酒で自分をごまかすのがいちばん」

 カミタマンは「ごめん」と謝り「ちょっと待ってて」。

 

 伸介が自室で「ぼくの将来はパパみたいに!」と叫ぶと、幻想の中でネモト仮面(石井愃一)が「その通りだ。ネモトマンくん」と現れる。

ネモト仮面「きみの将来は私みたいに」

 ネモトマン(岩瀬威司)は「やだやだやだ」と抵抗するが、ネモト仮面は「それが運命というものです」と断言。

 カミタマンは缶ビールやワンカップの日本酒など大量の酒を公園のテーブルに並べる。パパは「こんなに」と困惑気味。

カミタマン「さあ、飲んで」

パパ「いいのか」

カミタマン「だって息子にパパみたいになりたくないって言われたんだもん。お酒ぐらい飲んで自分をごまかさなくちゃ」

パパ「だろう?」

 パパはぐいぐい飲み、カミタマンは「イッキ! イッキ! イッキ! おお、すごいぞパパ」。

 

 ママは伸介がやる気を出したお祝いに、赤飯を炊いていた。

 

 悪酔いしているパパ。

カミタマン「ちょっと飲ませすぎたかなあ」

パパ「何だと?」

 「いや何でも」とカミタマン。パパは木に「さっきからぼけっと立ちやがって」「お前までおれをバカに」とからむが、そこへ「パパやめてよ」と伸介の声が。パパはまた涙する。

 

 マリが伸介の部屋にお茶を運ぶと、伸介は、机の上で四つんばいになっていた。思わずお盆を落とすマリ。

伸介「日本の総理大臣はダンプ松本じゃなくて」

 ママも伸介の姿に驚く。

マリ「慣れない勉強したから頭の中がこんがらがっちゃって」

ママ「そんな」

マリ「大体、パパみたいになりたくないっていうのが高望みなのよ」

ママ「高望み?」

マリ「パパの子はパパの子。お兄ちゃんせいぜい出世してもパパどまりじゃない?」

 ママも「そう言われれば」と得心した様子。

 

 橋の上にいるパパとカミタマン。パパは「バカ野郎!」と叫ぶ。すると下でジョギングしていた男(岡田勝)が「バカに向かってバカとは何だ、このバカ野郎!」と怒る。

男「そうだ。おれはバカだよ。バカなんだよ!」

パパ「いや、それはどうも」

 

 パパとカミタマンは笑って帰宅。するとママとマリが慌てて階段を駆け下りてきて、伸介の勉強をやめさせるように言う。

ママ「伸介はパパみたいでいいの。だから勉強やめさせて」

カミタマン「パパ、よかったね。伸介はパパみたいでいいんだって!」

 嬉しげなパパ。

パパ「さあ、カミタマン。行くぞ!」

 

 机の上に寝そべって煩悶する伸介。はちまきをしたパパが入って来る。

パパ「伸介、勉強なんかやめてパパみたいになるんだ!」

【感想】

 第7話以来となるパパがメインのエピソードで、7話ではパパがネモトマンと化してトラブルを引き起こしていたが、今回はネモト仮面に変身する趣向はあるものの全般としては無能さが淡々と強調される(強烈な話がつづいていた中で、ひと休みの感がある)。浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは特に『ペットントン』(1983)では父がダメ男で第4話では「父さんみたいになるんじゃないぞ」と今回と同様の台詞が吐かれてその苦衷がシリアスに描かれた。次作『もりもりぼっくん』(1986)でも家庭内で父が妻子に罵られる場面が散見され、特に『ぼっくん』は見ていてあまりいい印象ではなかったけれども、今回はダメさが糾弾されても『ペットントン』ほど悲惨ではなく『ぼっくん』ほど刺々しくもなく、わりと平穏で見やすい。『ペットントン』での父は東京ヴォードヴィルショーの佐渡稔氏、本作はやはりヴォードヴィルの石井愃一氏、『ぼっくん』はテアトル・エコーの永井寛孝氏とこの時期の不コメは演劇系の俳優がダメ父を好演して、定番となっていた。

 また80年代は相対化の時代で父親の権威が崩壊し、特に1985年は男女雇用機会均等法が制定された。それゆえかこの時代の作品には父親がダメだったり、女性が強くなって男性が取り残されたりする構図は多く、不コメも例外ではない。

 しかし蛙の子は蛙で頑張っても仕方がないという結論に落ち着くのは『ペットントン』の第23話でもあったが、可能性を徹底して追うことが奨励された80年代としてはユニークで注目すべきであろう。優秀だろうが無能だろうが親子とはつまり宿命で、ギャグでありつつも極めて普遍的なメッセージでもある。

ペットントン

 パパの少年時代や伸介がサラリーマンになっている姿は、石井愃一氏や岩瀬威司氏がそのまま演じている。第10話でも老婆になったマリは林美穂氏が、この後の第28話では赤ちゃんの伸介とマリをやはり岩瀬・林両氏がベビーベッドに入って演じて、そのアイディアには笑わされる。今回は序盤でパパが酔ってみなに無視されるシーンを後半で伸介がそのまま再現していて、相当な凝り方である(石井・岩瀬両氏のシンクロ感もすごい)。

 パパが変身するネモト仮面は『月光仮面』(1958)を模しており、浦沢先生が少年時代に見ていたのかと想像される。浦沢氏は本作の14年後にアニメ『ごぞんじ!月光仮面くん』(1999)を手がける。

 カミタマンが「イッキ! イッキ!」と飲ませるのは当時の流行で、同じ年の『ふぞろいの林檎たちⅡ』(1985)などにもある。

 パパと飲んでいる女子社員役の三輝祐子(三輝みきこ)氏は第21話第27話にも出演。不コメでは『ぼっくん』の第20話、『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の第38話、『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第12話と第28話に顔を見せている、この後の代表作『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)での小田切長官役で強烈な印象を遺した。

 男性社員役の平尾仁彰氏は第21話にも登場。後年に平尾仁名義で『仮面ライダードライブ』(2014)などに出演している。

 ジョギングしている男は大野剣友会の岡田勝氏。『仮面ライダー』(1971)のスーツアクターと殺陣師を兼任するなど多数の作品のアクションに携わっており、不コメでもアクションアドバイザーを担当。本作では第9話にも出演しているほかに『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第19話、『美少女仮面ポワトリン』(1990)、『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)にも登場。

 子どものひとりを演じた金杉太朗氏は『兄弟拳バイクロッサー』(1985)の第4話や『時空戦士スピルバン』(1986)の準レギュラーなど多数の特撮ドラマに出演し、『金曜日の妻たちへⅢ 恋に落ちて』(1985)や『3年B組金八先生』の第3シリーズ(1988)、『天までとどけ』(1991)などでも知られる。

 パパがさまよう西新宿の居酒屋・あばらやと港屋酒店は現在も営業中のようである。