『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第21話「ネクラ怪獣モスガ登場」(1985年9月1日放送 脚本:浦沢義雄 監督:冨田義治)

【ストーリー】

 朝食をとっているパパ(石井愃一)へママ(大橋恵里子)が合図する。

ママ「伸介、パパお話があるそうよ」

 伸介(岩瀬威司)が「何?」と返事するとパパは「実はママが」。カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)が今朝の味噌汁はまあまあだと言うと、ママは糠味噌を使ったといい、食卓では何やら駆け引きが。マリ(林美穂)は「何でもない」と物憂げ。ママは、マリは年ごろなのだという。パパは夏休みの宿題について切り出すが、伸介は「それがいったいどうしたっていうんだ!」と立ち上がる。

伸介「パパ、ママ。ふたりともぼくに感謝しなくちゃいけないよ。この夏休み、ぼくは非行の道に走らなかったんだから。それを夏休みの宿題がどうのこうのって。ああ、ぼくは非行の道に走ってればよかった。なあ、カミタマン?」

 カミタマンは牛乳を吹き出す。

 

 夏休み明けで登校する伸介と横山(末松芳隆)。

伸介「横山、お前本当に夏休みの宿題やってないだろうな」

横山「大丈夫だって」

伸介「お前、すぐ裏切るからな」

 そこへイトウユーコ(長島優子)が通りかかる。

伸介「あのブス、気取りやがって」

横山「イトウ!」

 驚く伸介。

横山「伸介がお前のこと、ブスで気取って間ぬけでバカだって言ってたぞ!」

 向かってくるイトウユーコ。伸介は逃げ出す。横山が笑っていると、イトウユーコは横山を引っぱたく。

伸介「だいじょぶか」

横山「イトウの奴、おれのこと好きなのかなあ」

 呆れる伸介。

 

 カミタマンが居間でマンガを読んでいると、ママが「邪魔邪魔」と掃除機をかけて激突。

カミタマン「もう、ほんと乱暴なんだから」

ママ「悪いんだけど掃除終わるまでどっか行っててくれない?」

カミタマン「え?」

ママ「それともカミタマンが掃除してくれる?」

 カミタマンは「どっか行くどっか行く」。

 

 公園でカミタマンは売り子になったとらばる聖子(小出綾女)を見かける。

聖子「夏休みの売れ残りのアイスキャンデーはいかが」

 聖子はカミタマンを見つけると売りつけようとする。

カミタマン「他行って、他行って」

聖子「他ってきょうから学校や幼稚園でこの公園に子どもたち誰もいないの」

 カミタマンはいらないと告げるが、そこへ「カミタマーン」と声が。聖子は何かを見て卒倒。空から巨大な蛾が迫ってきた。

カミタマン「モ、モ、モスガ!」

 モスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)は「会いたかった」と寄ってきて、カミタマンは逃げる。

カミタマン「会いたくなかった」

 

 逃げるカミタマン

カミタマン「何であいつがこの町に」

 だがモスガは追ってくる。モスガは飛び上がると「やめてやめて」と言うカミタマンを押しつぶす。

 

 家では絹を裂くようなママの悲鳴が上がる。

カミタマン「まあ、最初は驚くかもしんないけど」

 ママは震え声で読フジ旅行社の「営業の根本」に電話する。

 

 会社でパパが「モスガ?」と電話に出る。

パパ「いま仕事中。帰れるわけないでしょ。離婚? ママ、バカなこと言わないで」

 電話口からまたママの悲鳴が。他の社員(平尾仁彰、三輝祐子)も驚く。

 

 パパはタクシーで慌てて帰宅。ぎゃーと悲鳴を上げてパパも卒倒。ママはうちわで扇ぐ。

カミタマン「あの、モスガっていってね、カミタマンがカミタン島にいたとき、カミタマンファンクラブの会長やってたんだ」

ママ「ほーう。だって?」

 「あ…あ…」と呂律が回らないパパ。

カミタマンカミタマンファンクラブったって、会員はモスガひとりだけど」

ママ「ほーう。だって?」

 もごもご言うパパ。

カミタマン「最近は神さまも人気商売だからファンクラブもないよりはあったほうがましだと思ったんだけど」

モスガ「カミタマーン」

 羽根を広げるモスガ。モスガのこんな感じが厭でカミタマンはカミタン島から逃げてきたという。

モスガ「カミタ、カミタ、カミタマーン」

 カミタマンはモスガを庭へ追い出す。

パパ「まさか、モスガをうちに置いてくれなんて」

カミタマン「うちで置かなくてどこで置くの、あんなばけもん」

 カミタマンは慣れればかわいいと言い、パパは説得されかかる。そこへぎゃーっと悲鳴が。庭ではモスガを前にマリが立ち尽くし、伸介が壁に突っ込んでいた。

伸介「助けてよー」

 

 草っ原へ来たカミタマンとモスガ。

カミタマン「いいかモスガ。あのうちにいたかったら、パパやママやマリや伸介に好かれなくっちゃ」

 モスガは首を振って「カミタマンにさえ愛されていれば」。

 

 根本家では家族会議。

パパ「それでは決をとります。モスガを根本家に置くことに反対の方、手を挙げてください」

 ママとマリが「はい!」と手を挙げる。賛成でパパと伸介が「はい!」。

 

 「カミタ、カミタ、カミタマーン」と言うモスガにカミタマンは「いくらカミタマンのこと好きになったってダメだっつーの」。

 

 家族会議はつづく。

パパ「ではもう一度、決をとります。賛成の方、今度は足を挙げてください」

 パパと伸介が「ぬ!」「はい!」と足を挙げる。反対でママとマリが「はい!」と足を挙げる。

 

 カミタマンはモスガに「いい加減にしないとカミタマンもお前のこと見捨てるぞ」と言い放つ。ショックを受けるモスガ。カミタマンは根本家のみなに好かれるようになれと改めて説諭する。

モスガ「どうやって?」

カミタマン「どうやってって…例えば笑顔をつくって愛されるとか。そんなこと自分で考えろ!」

 カミタマンは「つき合っちゃいらんねえや」と行ってしまう。モスガは何故かふらふらと引き寄せられたドラム缶に水が溜まっていたので、水面に顔を映して「にこっ」と笑顔の練習。

 

 家族会議で結論は出ない。「この問題はもう少し時間をかけて」と伸介が言うと、モスガがまた庭から入ってきた。怯える4人。

ママ「モスガ、あたしたちになんか恨みでも?」

マリ「モスガ、あたしはいっしょに住むこと賛成したのよ」

伸介「嘘つけ!」

マリ「悪いのはみんなお兄ちゃん」

伸介「何するんだよ」

パパ「パパもそう思う」

ママ「伸介、一生に一度の親孝行だと思って」

 パパ、ママ、マリは伸介を押し出す。

マリ「あたし、本当にステキなお兄ちゃん持って幸せだった」

 伸介はモスガに抱きしめられる。逃げるパパたち。

伸介「やめてえ」

 

 草っ原にカミタマンがアイスキャンデーを持って来る。

カミタマン「モスガの奴、どこ行っちゃったんだ? せっかく聖子から夏休みの売れ残りキャンデー買ってきてやったのにな」

 そこへ「カミタマーン」と伸介が駆けて来てネモトマンに変身させろと言う。変身したネモトマン(岩瀬威司)は「神に代わって」とポーズを取るが、現れたモスガに抱きつかれ「ぎゃー」とあっさり逃走。

 

 根本家の庭に戻ってきた伸介とモスガ。伸介は「好きなようにしろ」と大の字で寝そべる。モスガは「モスガ、ダメな奴」と涙を噴き出して泣く。

モスガ「これ以上いると、カミタマンにご迷惑。モスガ、悲しみを乗り越えてこの家を出るのであった」

 無表情で見ているパパとママ、マリ。

モスガ「ここで「蛍の光」、ハミング開始! さん、はい」

 パパとママ、伸介、マリは「蛍の光」のハミングを始める。ジャンプして飛んでいくモスガ。

伸介「何だ、あいつ」

パパ「随分くさい芝居するじゃないか」

ママ「ほんと、エアーシャルダンでも撒いときましょうか」

 用意しておいたと撒くパパに伸介は「さすがパパだ」。カミタマンが「モスガは?」と帰宅。

 

 蝉の声がする中で土手に降りたモスガ。ファンクラブ会長として最後のカミタマンコールをする。

モスガ「カミタ、カミタ、カミタマーン」

 号泣するモスガだが、そこへ「モスガ」とカミタマンが。

カミタマン「行く当てなんてないんだろ? さあ、帰ろう。カミタマンからもう一度頼んでみるから」

モスガ「カミタマン、大丈夫。カミタマンひとりで立派に生きていける」

カミタマン「そりゃまあ、カミタマンは神さまだから」

モスガ「自信持って、自信持って」

カミタマン「いやあ、自信は持ってるけど。心配なのはモスガ、お前のこと」

 モスガは「おれのこと当てにする、よくなーい」と言い出す。カミタマンは「あのな、いやあの当てにしてるわけじゃ」と反論。

モスガ「カミタマン。見ろ、あの夕焼け」

 空は青い。カミタマンが「どこにもないじゃないの?」と見回していると、いつのまにかモスガの姿がない。

 

 夕食をとっている根本家の面々。

マリ「結局モスガ、見えない夕焼けに自分の愛を託して」

伸介「マリ、いまからそんな分別くさいこと言ってると老けるの早いぞ」

 みなは無言で食べる。カミタマンは暗くなった庭を見やる。

 

 電気をつけっぱなしで横になっているカミタマンと伸介。

伸介「カミタマン、もういい加減に寝ろよ」

 カミタマンは「ああ」と電気を消す。

 朝になって伸介とカミタマンを起こすマリ。

カミタマン「何だよ、こんなに早く」

 マリは伸介を踏んで窓を開け、伸介は「いて!」。だが窓の外を見た伸介とカミタマンは驚く。庭でエプロン姿のモスガが洗濯物を干していた。根本家の一同は茫然。

モスガ「朝ごはんの用意、しちゃってある」

 照れるモスガ。確かにご飯が炊けていた。

 みなは食べ、モスガはおかわりをよそう。

伸介「モスガの料理、ママよりうめえよ」

マリ「うんうん」

ママ「何だって! …あら、ほんとだ」

 まめに働くモスガにカミタマンは「ぽげ」。

伸介「モスガを置いててよかったね、パパ!」

パパ「そうだな」

 だがモスガは味噌汁をひっくり返してしまう。

【感想】

 キーパーソン(キーモンスター)と言うべきモスガが初登場。モスガは本作の中盤から後半に至るまでさまざまな騒動を起こし、盛り上げに貢献することになった。怪獣映画『モスラ』(1961)から取られたネーミングだが、当時はリバイバル上映だけでモスラの新作があったわけではなく、本作のターゲットである児童層にどれほど訴求したのか不明である。初登場の今回はカミタマンファンクラブの会長でストーカーのようにカミタマンにつきまとっているけれども、その設定もやがてあいまいになっていく。

 タイトルロールの「ネクラ」はこの時代の流行語で、不思議コメディーシリーズでは『バッテンロボ丸』(1982)のネクラゲ、『ペットントン』(1983)の根本(本作の根本家とは関連がない)、『どきんちょ!ネムリン』(1984)の中山といった具合にトラブルメーカー的なレギュラーは毎度「ネクラ」「根が暗い」と雑駁に形容された。特に根本や中山はネクラというより異常者で、彼らに比すとモスガは泣いたり喜んだり喜怒哀楽が激しく迷惑なだけで幾分ましに思える。ただしカミタマンがモスガを心配しているにもかかわらずモスガはおれを当てにするな、などと言い出す場面は意思疎通のできていない面白さを越えて、精神に支障をきたしているようなブラックさとシビアさを感じさせた。

 カミタマンは、寺田憲史脚本の第5話ではいたずらばかりしていたせいでパパとママにカミタン島を追い出されたと説明されたが、浦沢義雄脚本の今回はモスガが厭だから逃げたことになっており、島を離れた要因は複合的だと思われる(単に浦沢先生が寺田脚本を読んでいなかったのかもしれない)。

 細部では、夏休み明けの放送であるゆえ伸介が宿題をやっていないと改めて強調したり、とらばる聖子が売れ残りのアイスキャンデーを売っていたりする配慮が見られた。

 モスガの声は矢尾一樹氏で、本作と同時期にテレビ『超獣機神ダンクーガ』(1985)や『機動戦士ガンダムZZ』(1986)に主演し、頭角を現したころであった。矢尾氏とカミタマン役の田中真弓氏とはこの後に『ONE PIECE』シリーズで長く共演しており、筆者はそれほど見たわけではないけれどもギャップに笑ってしまった。浦沢脚本では他に『ビーロボカブタック』(1997)や『燃えろ!!ロボコン』(1999)にも出演。

 モスガのスーツアクターは高木政人氏で、氏は不コメは第1作『ロボット8ちゃん』(1981)からほぼレギュラーとして連投。本作では第11話第16話第18話にゲスト的に出演し、今回のモスガ役で満を持してレギュラーに就任。既に『ペットントン』や派生作品『TVオバケてれもんじゃ』(1985)では主役のモンスターを好演し、それらとモスガは似た形状であるのでまさに円熟した演技だと言えよう。やたら羽ばたいてみせるあたり、モスガの情緒不安定ぶりを感じさせて面白い。

 今回の演出は冨田義治監督で、第18話から異例の4話連投であった。どのような事情があったのかは不明だが(スケジュールのためか?)、かつて『帰ってきたウルトラマン』(1971)で組んだ巨匠・市川森一が「感性豊かな方」とコメントしていた(『帰ってきたウルトラマン大全』〈双葉社〉)だけあって無生物が活躍する話、ホームドラマ調、そしてモスガ登場編と濃厚なエピソードを立てつづけに手がける敏腕に感嘆する。モスガの顔が水に映るのは第18話など冨田演出によく出てくる。

 パパの同僚の平尾仁彰・三輝祐子(三輝みきこ)両氏は第20話にも同じ役で登場するが、今回は台詞がない。

 イトウユーコ役の長島優子氏は『巨獣特捜ジャスピオン』(1985)の第12話や映画『子どもたちへ いのちと愛のメッセージ』(1986)に出演している。