『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第45話「謎の地底大探険」(1986年2月16日放送 脚本:浦沢義雄 監督:近藤杉雄)

【ストーリー】

 寺の境内で、子どもたちが「メン!」と剣道の寒稽古をしている。伸介(岩瀬威司)、マリ(林美穂)、横山(末松芳隆)がいつになく真面目に取り組み、パパ(石井愃一)が指導する。子どもたちに混じってカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)も竹刀を振る。

カミタマン「冗談じゃないっていうの。こんな朝早くから、何が心身を鍛えるだよ。えらい迷惑だっつーの、ったく」

 パパは「やめ。つづいて前進後退面、始め!」と指示を出す。

カミタマン「ついていけないよ。寒稽古がなんか知らないけど、勝手にやってくれっての」

 カミタマンが竹刀を放り出すと、パパに「こら」と叩かれてカミタマンは気絶。パパは「ちょっとやりすぎたかな」と静かに言い放つ。

 その日の稽古は終わり、子どもたちは豚汁を食べに行く。門を出るカミタマン。

カミタマン「伸介もマリも横山も豚汁1杯であーんな一生懸命練習しちゃって、浅ましい奴ら。大体パパが町会長に頼まれて、寒稽古の先生やっちゃうのがおかしいっていうの。剣道なんて中学のときちょこちょこってやったくらいなのに、さも剣道の名人みたいな顔しちゃってさ。やることが見え透いてんだよな。きっと次の町会長の座、狙ってるんだぜ」

 カミタマンは「こんなもん」と寒稽古の看板の脚を折り、看板は倒れる。

カミタマン「町会の仕事、一所懸命やる奴っていうのはだいたいそういうこと企んでんだから」

 カミタマンがぶつくさ言いながら歩いていると「あーれー」と悲鳴が。探検隊の格好で傷だらけのとらばる聖子(小出綾女)が現れて倒れる。

カミタマン「せせ聖子、どどどどどうしたんだ」

 カミタマンは根本家の居間で聖子を寝かす 。

聖子「私に代わって」

カミタマン「聖子、いまは何も言うな」

聖子「アントニオの宝」

 聖子は「さがして」と意識を失う。聖子のポケットからは地図がはらりと落ちる。それはアントニオの宝のありかだった。

カミタマン「アントニオの宝か」

 いつの間にか聖子の姿はない。

カミタマン「残ったのは地図だけ」

 地図はふわりと浮かび上がる。

 

 カミタマンはマリに相談する。

カミタマン「きっととらばる聖子がアントニオの宝をさがしている途中、何者かに狙われ、やられたんだ」

マリ「何者かって?」

カミタマン「何者かだよ」

 マリは「この地図に書かれているマーク、さっきまで剣道の練習していたお寺のマークにそっくりよ」と指摘。

カミタマン「じゃアントニオの宝はこの町内に」

マリ「きっとそうよ。カミタマン、さがしましょ」

カミタマン「うん。聖子もそれを望んでいたことだし。でも伸介や横山に教えるのはよそう」

マリ「どうして?」

カミタマン「あいつらが入るとさがせるものもさがせなくなる」

マリ「それもそうね」

 

 伸介と横山は影響を受けたのか、広場で竹刀を振り回す。

 

 また寺に来たマリとカミタマン。

マリ「祠を訪ねて200歩半」

カミタマン「もしかして、それ神社の裏山にある古い祠のことじゃ?」

 マリとカミタマンは10000歩を歩いてみたが、もとの寺に戻った。

カミタマン「もう1度やってみよう」

マリ「そうね!」

 

 伸介と横山は居間で「がんばれ!赤胴鈴之助」を熱唱。そこへ電話が。

 

 とらばる聖子が電話ボックスからかけていた。

聖子「カミタマンとマリがあんたたちにないしょでアントニオの宝をさがしに行ったのよ。いいの、それでも? そう、よくないでしょ。だったらすぐさがしに行きなさい」

 

 伸介は「へいへい」と返事。

横山「ほう」

伸介・横山「♪ヘイヘイホー ヘイヘイホー」

 

 カミタマンとマリは再度もとの寺に戻ってしまった。

 

 伸介と横山は「きょろりきょろり」と見回したりポリバケツを開けたりして、カミタマンとマリをさがす。

 

 カミタマンとマリは、また寺に戻ってしまう。

カミタマン「マリ、カミタマンもうダメ」

マリ「何言ってんの。あたしの肩に乗ってただけなのに」

 カミタマンは笑ってごまかす。地図を見直したマリは「この地図に書かれている古井戸は、このお寺の中にあるのよ」と気づく。マリとカミタマンを見つけた伸介と横山。

横山「伸介、あいつらにアントニオの宝を渡しちゃいけない」

伸介「ああ」

 

 古井戸を見つけたマリとカミタマン。

カミタマン「だったら古井戸は最初っからお寺にあると書いとけばいいんだ」

マリ「それじゃ宝さがしにならないじゃない? 宝さがしはこうやってひとつひとつつ謎を解いていくのよ」

カミタマン「なるほど」

 マリは小声で「感心してる場合じゃないわ。誰か来るみたい」。

 

 灯篭の中を駆けて来る伸介と横山。

 

マリ「さあカミタマン、入りましょ」

 マリとカミタマンが井戸の中に入る刹那、画面の色が反転。伸介と横山が来る。

伸介「確かこのへんで消えたと」

横山「そんなバカな…」

 伸介と横山は行進して井戸に近づき入ろうとするが、井戸の陰からとらばる聖子が「わ!」と現れる。驚いたふたりはひっくり返る。

 

 古井戸の中は森だった。

カミタマン「まさかあの井戸の下がこんな密林になってるなんて」

マリ「私、怖い」

カミタマン「大丈夫、カミタマンがついてる」

 だがカミタマンは鳥の声に驚く。ピンクの花があったので、マリが「綺麗」と近寄ると、花が機関銃を発射。

カミタマン「あぶない!」

 カミタマンとマリは石に隠れる。

カミタマン「どうやらこのジャングルの花はおそろしい武器になってるらしい」

 花は銃撃をつづける

カミタマン「マリ、逃げるんだ」

 だが次はイエローの花が機関銃を発射。火花の中を逃げるマリとカミタマン。

 

 洞窟を通ったマリとカミタマンは岩場へ出る。

マリ「カミタマン、帰りましょうよ」

カミタマン「まさか、ここまで来て」

マリ「何だか気味の悪いところじゃない?」

 切り立った崖が見える。

カミタマン「急に崖崩れなんかしちゃったりして」

マリ「そういう悪い冗談はやめて」

 すると本当に崖崩れが起きて、岩が落ちてくる。慌ててマリとカミタマンは逃げる。

 

 川沿いにいるマリとカミタマン。

マリ「あたしもうへとへとで動けない」

 カミタマンにはごうごうという音が聞こえる。

カミタマン「洪水だ!」

 マリは「カミタマン、あたしたちもうおしまいみたいね」と淡々と言う。

マリ「短い間だけどとても愉しかった」

 カミタマンは涙する。

マリ「やだカミタマン。顔、汚れちゃったじゃない? 私が洗ってあげる」

 マリは湧き水を汲みに行くと、激しい流れの音が聞こえる。

マリ「カミタマン、私たち助かったみたいよ」

カミタマン「あ?」

マリ「洪水なんてどこにもなかったの。音がしただけよ。ほら、こうやって穴を塞げば」

 マリは石で岩の穴を塞ぐ。上から落ちる水が岩の穴に入る際に激しい音が聞こえたのだった。

カミタマン「マリ、何それ」

 マリがどかした石の下に何かある。掘ってみると宝箱だった。

カミタマン「こ、これがもしかして」

マリ「アントニオの宝?」

 マリが宝箱を開けると、中から金色の光が溢れ出す。

カミタマン「何という輝きなんだ」

マリ「私、こんなの初めて」

 そこへ「残念だけどアントニオの宝はお前たちには渡せないよ」と声がして、海賊の格好をしたとらばる聖子が立っていた。聖子は伸介と横山を連行している。

聖子「カミタマン、お前の役目はもう終わったんだよ」

 カミタマンと伸介、マリ、横山は檻に入れられる。

カミタマン「聖子、お前がこんなにあくどい奴だとは思わなかった」

聖子「ふん、お人よしじゃあ生きていけないんだよ」

 聖子はコントローラーのスイッチを入れる。

聖子「上を見てごらん」

 鋭い棘の付いた吊り天井が上から迫ってくる。吊り天井を必死に押さえる伸介と横山、マリ。

伸介「カミタマン、このままじゃあ」

 とらばる聖子は「このスイッチがなけりゃ助からないんだよ」とコントローラーを川に放ってしまう。宝を持って行く聖子。

横山「もうダメだ。よし、こうなったら」

 横山はマリに触り始める。

横山「いいだろ、マリちゃん」

マリ「やめて」

横山「いいでしょ」

マリ「お兄ちゃん、何とかしてよ」

伸介「やめろ横山」

 カミタマンは「伸介をネモトマンにしてこの鍵を開ければ簡単なんだけど。しょうがない」と、マリと横山にブーメランを当てる。ふたりは気絶。

伸介「カミタマン、何てことを」

 カミタマンは伸介をネモトマン(岩瀬威司)に変身させる。ネモトマンは吊り天井を押さえながら何とかポーズを取り、檻をこじ開けて、みなは脱出。 

ネモトマン「久々の活躍だ」

カミタマン「バーカ」

 だがカミタマンに檻を壊すように言われたネモトマンは「どうしてアントニオの宝さがしにマリを選んだんだ」と難詰。

ネモトマン「カミタマン、きょうこそ根本伸介であるネモトマンの底力を見せてやる」

 走っていくネモトマン。檻に入ったままのカミタマンは「ひとりで気取っちゃって」と呆れる。

 「助けて!」と声がして、ネモトマンが逃げてくる。「待て」と追ってくるとらばる聖子。

カミタマン「あのウルトラバーカ」

ネモトマン「カミタマン、助けてよ」

カミタマン「だから言わないこっちゃない」

 聖子が発砲した弾が、檻に当たる。

カミタマン「ネモトマン、苦しい…」

 檻が壊れる。

カミタマン「ということは、弾は鍵に当たり、カミタマンは無事」

 とらばる聖子の銃は弾切れで、聖子は逃げ出す。

 

 古井戸から出てくる、とらばる聖子とカミタマン。

カミタマン「聖子、どこにいる!?」

 聖子は「これでもくらえ」と銃を放り投げる。よけるカミタマン。

カミタマン「聖子、覚悟しろよ」

 だが後ろから何者かがカミタマンを「メン!」と竹刀で叩く。怖い顔をしたパパだった。パパは機関銃をとらばる聖子に渡し、聖子はカミタマンめがけて発射。

カミタマン「うわー」

 

 パパが「カミタマン、カミタマン」と介抱していた。カミタマンが気づくと、パパと伸介、マリ、横山がいた。

カミタマン「アントニオの宝は?」

パパ「何バカなこと言ってるんだ。悪かった。私がちょっと強く叩きすぎたせいだ」

カミタマン「え?」

 寒稽古はまだつづいていたのだった。ママ(大橋恵里子)が「さあみんな、冷めないうちに飲みなさい」と豚汁を運んで来る。

ママ「じゃパパに頭打たれて、そのままアントニオの宝の夢見たわけ?」

 パパは「いやあ、すまんすまん」と笑い、みなも笑う。

 そこへまた傷だらけのとらばる聖子が現れて倒れる。

聖子「カミタマン、お願い。今度はジャイアントの宝をさがして」

 地図がまたふわりと浮かび上がり、カミタマンの頭に乗る。驚いて逃げ出すカミタマン。

【感想】

 カミタマンたちが宝さがしに出かける幻想的なエピソードで、夢落ちかと思わせて、ラストで視聴者をさらに混乱させる。

 浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)の第26話「不思議な森の白雪姫」が純然たる夢落ちで、一方で同作の第36話「豆腐がおこった日」や第42話「エッ?ガン太が乙姫様」や『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第14話「爆笑!タイムスリップ」、そして本作の第16話などは夢か現実かあいまいな結末を迎える。今回はそれらの言わば発展形で、特徴的なのは前半に傷だらけで倒れたとらばる聖子がラストでも再度傷だらけで現れる点。「今度は」と言い出すあたり、聖子自身も2度目であることを認識しているようで、そのループに夢ではなかったのか、いやまだ夢が覚めていないのかと惑乱する。そもそも序盤に剣道の寒稽古をしている段階でパパがいつになく厳かな態度で、伸介たちも別人のように真摯に稽古に取り組んでいて、すべて夢だとすれば得心できなくはない。本作は『ペットントン』や『ネムリン』に比べるとバラエティ的な笑いの要素が強いゆえ、第16話や今回のようなミステリアスな話は異色ではある。3年後の『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第48話も今回と酷似したループ的な構造で、しかもよりシュール度の高い演出になっていた。

 不コメでの宝さがしは前作『ネムリン』の第27話「イビキのガイコツ作戦」にもあり、主人公が宝の地図を渡されて罠にはまり、檻に入れられてしまうので今回は事実上、焼き直しではあろう。ただし先述のようにループ構造になっており、新味は確保されている(『ネムリン』では宝は完全にデマであったが、今回の後半でとらばる聖子が奪った宝はどうなったのか不明)。なお浦沢先生は後年のインタビューで映画『地平線がぎらぎらっ』(1961)の影響によって「宝の地図を追いかける」るパターンを使うようになったと語っていて、今回もその一例であろう。

 「地底大探険」と銘打たれているけれども、地底らしい場面はマリとカミタマンが洞窟の中を歩く短いシーンのみで、大半は森や川沿いなどの探訪が描かれた。ちなみに2年後の不コメ『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の第3話「恐怖の地底探検」(江連卓脚本)では対照的に暗い地下道を延々と冒険している。

 カミタマンに宝の地図を渡して巻き込む役回りがとらばる聖子で、聖子はいつも存在感があるとは言え出番が多いわけではなく、騒動を起こすのは第41話と今回ぐらいか。伸介と横山をつかまえるのは意味不明だが、宝を奪って殺そうとするあたりは過去にない悪辣さで驚かされる(小出綾女氏の怪演も切れている)。

 伸介と横山は真面目に剣道をしているかと思ったら唐突に「与作」をいっしょに歌い出したり、今回のハイテンションぶりは印象的(夢の中だから?)。横山はピンチに乗じてマリにセクハラし始め、第43話ではマリに一方的に攻撃されていたので逆襲に転じた感がある。後年の浦沢脚本では『激走戦隊カーレンジャー』〈1996〉の第30話でも男子小学生が同様にどさくさに紛れてキスしとうとして、ややマイルドな形の変奏だと言えよう。

 近藤杉雄演出は、暗めのライティングによって夢っぽい感覚を漂わせており、前半にカミタマンが居間でとらばる聖子を介抱したりマリの部屋で相談したりする場面では、本作としては第16話を除けば異例の謎めいた雰囲気が醸し出された。聖子が姿を消して地図がふわりと浮かぶシーンではその呼吸に感嘆。

 マリの部屋の机には『スケバン刑事』(白泉社)の単行本が並んでいる。

 冒頭と終盤で寒稽古をしているのは埼玉県和光市の妙典寺。

 マリとカミタマンが出て来る洞窟とその付近は埼玉県比企郡吉見町にある場所で、80年代の東映作品では頻繁に使われている(本作の2か月後の『もりもりぼっくん』〈1986〉の第1話にも登場)。