『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第16話「お化けより愛をこめて」(1985年7月28日放送 脚本:浦沢義雄 監督:大井利夫)

【ストーリー】

 小学校の校門で「夏休みの宿題は必ずやるように」と教師の声が響く。「夏休みだー」と走り出てくる子供たち。

 

 公園でジュースを開けるカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。夏休みはハワイやアメリカ西海岸へ行くという子どもたちの声がして「根本んとこは?」。カミタマンは思わず反応する。歩いて来た伸介(岩瀬威司)が「うちは…」と口ごもって南極へ行くと言い出す。カミタマンが呆れていると、シルクハットの男(市川勇)がジュースを勝手に飲み干していた。カミタマンが「こら」と言うと男は逃げ出す。伸介が「わっ!」と現れる。

男「カミタマン…」

 

 カミタマンはジュースを飲まれた件を報告。

カミタマン「そうなんだ。この暑いのにサーカスの団長みたいな服着ちゃってさ」

 伸介は「この暑さで頭を…」とカミタマンの額に触り「あちち、南無阿弥陀仏」と拝む。

カミタマン「こいつー」

 

 芝生の上に寝転ぶ伸介。やがて伸介は「やったー」「あしたっから学校行かなくて済むのー」と欣喜雀躍して転がる。

カミタマン「でも宿題があんだろ」

伸介「あんなの9月になって最初の2週間くらい先生に怒られてれば、そのうち許されちゃうの」

カミタマン「なるほど。あ、そうそう。さっき聞いちゃったんだけど、伸介お前、今年の夏休み南極行くなんて言ってたけど、やっぱ嘘つくのはさ…」

伸介「いいだろ。ああやってみんな精いっぱい見栄張ってんだから」

 横山(末松芳隆)はハワイに行くと言ってたが、本当は伊豆の民宿に行くらしい。

 

 さっきのシルクハットの男が「おばけ出張スケジュール」の予定表黒板に「根本家 カミタマン」と書き込んでいた。

 

 その根本家の食卓ではカミタマン、伸介、ママ(大橋恵里子)、マリ(林美穂)が暑さでばて気味。

マリ「うちぐらいじゃない? この真夏に湯豆腐しちゃうの」

ママ「しょうがないでしょ。パパ、1年中でも湯豆腐食べていたい性格なんだから」

 パパ(石井愃一)のみが元気で、湯豆腐をもりもり食べる。

 

 深夜2時。伸介は爆睡して「よくこんな暑さで」とぼやくカミタマンを吹っ飛ばす。やがて電気が明滅し、置物やオルゴールが動き出す。カミタマンは外へ逃げようとするが、ドアは開かない。カーテンが開いて、ちょうちんおばけ(声:本多知恵子)が現れる。カミタマンは「ようやくこれで寝つかれる」と気絶。ちょうちんおばけは赤くなる。

 明け方の路上にあるワゴン車で、シルクハットの男がタバコを吸っていた。そこへ「やれやれ」「終わった終わった」と一つ目小僧(声:東美江)、スイカおばけ(声:神山卓三)、からかさ小僧(声:上田敏也)といったおばけたちが集まってくる。車のナンバーには「墓場」。おばけは冷たい水がいい、シャワーがいいなどと言い合う。サーカス団ならぬおばけ団で、シルクハットの男はその団長だった。

 団長の隣の助手席にはちょうちんおばけが。団長がカセットをかけようとすると、ちょうちんは「やめて」「気分じゃないわ」。アダルトな雰囲気が漂う。

 

 朝になって「伸介は寝相が悪いんだから」「寝相が悪いのはお前のほうだろ」と言い合いながら食卓に降りてくるカミタマンと伸介。お互いにこぶができている。

伸介「カミタマン、やっぱりこの暑さのせいで。大体おばけが出たなんて夢見て」

 カミタマンは夢じゃなくちょうちんおばけが出たと主張するが、みな信じない。

 

 事務所のデスクでコーヒーを飲む団長。ロケットの中にちょうちんおばけの写真を入れていた。団長は「ちょうちん」と写真にキス。だが外から笑い声が聞こえて、団長はとぼけたふり。

 団長が戸を開けて出ると、そこは神社の墓場。おばけたちが大笑いしていた。

ちょうちんおばけ「そんなに笑わないでよ」

イカおばけ「だって初恋が蝋燭だなんてもう」

ちょうちんおばけ「いいじゃないの」

一つ目小僧「でもきょう失神したそのカミタマンとかいう奴、そんなに初恋の蝋燭に似ていたのかい」

ちょうちんおばけ「ええ、瓜ふたつ」

 

 ちょうちんおばけはカミタマンそっくりの蝋燭を思い浮かべる。本物のカミタマンが重なる。カミタマンはウインク。

 

 おばけたちは「思い出してる」と爆笑する。ちょうちんおばけは「意地悪」と憤然。おばけたちは眠りにつく。見ていた団長は「危険だ」とつぶやく。

 

 カミタマンが公園にいると、横山が「ちょうちんおばけ見たんだって?」と田舎の祖母(小甲登枝恵)を連れてくる。

横山「ばあちゃん、こいつ神さまなんだ」

 祖母は「あらら」と拝む。

 横山は「こいつね、ちょうちんのおばけ見たんだって」と嘲笑し、祖母も拝みながら笑い出す。

カミタマン「何だ何だ、この大正生まれまで!」

 横山と祖母は「あっはっはっは」とふたりで踊るように行ってしまう。

カミタマン「こうなったらあのちょうちんおばけをつかまえて、みんなを信用させてやるぞ!」

 

 夜、伸介の部屋でおばけ退治をするというカミタマン

伸介「判った判った。今夜はおれもつき合ってやるから」

カミタマン「うん」

伸介「こう暑いと簡単に眠れそうもないからな」

 しかし午前2時になって、伸介は寝てしまっていた。また電気が消え、怯えるカミタマン。伸介をネモトマンに変身させるが、ネモトマンは寝ているだけ。

 

 そこへ「カミタマンさまー」との声がしてちょうちんおばけが庭に現れる。

 カミタマンはブーメランを発射し、喰らったちょうちんおばけは倒れる。「やった」と喜ぶカミタマンだが、ちょうちんおばけは涙を流していた。カミタマンがみんなを起こしておばけがいることを証明すると騒ぐと、団長が背後からカミタマンを殴り倒す。

団長「かわいそうに、ちょうちん」

 

 気がつくと、暗がりの中でカミタマンは縛りつけられていた。

カミタマン「鎖を離せ!」

 「カミタマンくん」と団長が現れる。

団長「私は、これらのおばけたちのマネージメントをしている者です。彼らは私のことをマネージャーと呼んでいます」

カミタマン「おばけのマネージャー?」

団長「最近、おばけ社会も芸能化しまして」

カミタマン「そのマネージャーが何でカミタマンを!?」

 次第に明るくなると、そこは事務所だった。

団長「カミタマンくん、お願いがあります。ちょうちんと結婚してやってください」

カミタマン「あ?」

団長「ちょうちんはきみを愛してます。結婚してやってくれ」

 「ええ?」と困惑するカミタマン

団長「喜びなさい。カミタマンが結婚してくれるそうだ」

 後ろからぬっと、ちょうちんおばけが。

カミタマン「誰がお前なんかと」

 泣いてしまうちょうちんおばけ。団長は「貴様」とカミタマンに拳銃を突き出す。ちょうちんおばけが団長に噛みつき、団長は拳銃を落とす。その隙にちょうちんおばけはカミタマンの鎖を外して「さ、逃げるのよ」とカミタマンを包んで連れ出す。団長は「待て!」と一応銃を向けるが「これでいいのです。逃亡するふたりに愛が芽生え、ふたりは幸せになれる」としゃがみ込んで泣くのだった。その場に木槌が落ちていた。

 墓地へ来たちょうちんおばけとカミタマン

ちょうちんおばけ「ここまで来れば大丈夫」

カミタマン「ありがとう」

ちょうちんおばけ「ごめんなさい、あたしのために。忘れ物はないわね?」

 カミタマンは木槌を忘れて来たことに気づく。

ちょうちんおばけ「私が取ってきてあげる」

カミタマン「いいよ。これ以上、きみに迷惑かけたくないから」

ちょうちんおばけ「いいのよ。私のせいでこんな目に遭ったんだから」

 「いいよ」「厭」と言い合うふたりだが、神社を覗くと団長が「さよなら、私の愛したおばけちょうちん」と写真を焼いていた。

ちょうちんおばけ「知らなかった。マネージャーが私のことを、そんなに愛してくれていたなんて」

 泣くちょうちんおばけ。

団長「おばけのマネージャーがおばけを愛するなんて失格だ」

 団長は銃を自らのこめかみに当てる。カミタマンは「早まるな」と止める。ずどんと銃弾が発射された。

 

 カミタマンは伸介のベッドに吹っ飛ばされる。

カミタマン「苦しい、やられた」

伸介「うるさいな。もう夜中の3時だぞ。いい加減にしてくれよ。きょうも寝られないじゃないか」

 伸介はカミタマンを引っ叩く。

カミタマン「またやられた。苦しい。ちょうちん、団長。これでいいのだあ」

 見栄を切って倒れるカミタマン

 

 夕焼けをバックに抱き合うちょうちんと団長

ちょうちんおばけ「そんなに強く抱きしめちゃ厭。骨が折れちゃうじゃない?」

 団長は夕焼けを指して「夕陽がぼくたちを祝福して真っ赤に燃えてるじゃないか」。

 「何だ、かっこつけちゃって」と腐るカミタマン。伸介は寝ている。「君といつまでも」をバックに「苦しい、ばたーり」とカミタマンは何度も倒れてみせる。

【感想】

 夏休みの怪談編でおばけちょうちんと団長の情愛が描かれ、本作としてはかなりシリアスなエピソード。団長とおばけちょうちんがワゴンに乗る場面など大人の不倫ドラマのような雰囲気だが演じているのはちょうちんで、通常ならば平凡に映る作劇が、人外やら無生物やらが務めることで面白みを醸すという浦沢義雄脚本の技が発揮されている。また今回のように恋愛がらみになると普段の底抜けぶりから一転して意外にリリカルな面を覗かせるのも、浦沢脚本の特質であろう。

 不思議コメディーシリーズでは『バッテンロボ丸』(1982)の第46話「お化けを飼う少女」にて、今回と似たようなおばけグループが登場するけれども、人間界に居場所がなく車で町から町へさまよっているという、70年代を引きずったような設定であった。それから数年を経た今回は「おばけ社会も芸能化」してビジネス的に働いて?いると言及され、荒涼としたさすらいの70年代からアイドルブームや漫才ブームに湧く80年代へと、メンタリティの変容が明瞭に感じられる。

 レギュラー陣の登場は少なくほぼゲストがメインで、ラストは夢か現実かはっきりしない。浦沢脚本で夢落ちはままあるのだが、現実とのあわいがあいまいなのは前作『どきんちょ!ネムリン』(1984)や『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の第39話「哀しみの魔天郎教」などを連想した。

 伸介は夏休みの宿題などやらないと豪語しており、『ットントン』(1983)の第45話などでもほぼ同様の台詞がある。浦沢先生は、あの子ども像は理想というわけでもなくただ自分自身に過ぎず、宿題など「やるわけがない」と回想していた(「東映ヒーローMAX」Vol.14)。

 子どもたちが夏休みの旅行先で見栄を張り合うのは『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)の第30話「ワルサの恋人」にもある。

 団長とカミタマンが対峙するシーンでは、暗がりが次第に明るくなっていくという舞台劇のような長回し。大井利夫演出は『ネムリン』でも長回しを多用していたけれども、今回はワンカットが長いだけでなくライティングに凝っている(同様の大井演出は第22話にもある)。また大井監督による『ネムリン』の第10話「バス停くん田舎へ帰る」でもバス停の動きが自然で、操演のスタッフの功績であろうが、今回のちょうちんの扱いの巧緻さを思わせる。

 車の場面では窓の外はよく見えず、おそらくスクリーンプロセス的な?処理を行っているのだけれども、昔のアルフレッド・ヒッチコックや後年の黒沢清作品を彷彿とさせた。おばけの乗る車の風景であるゆえ、幻想的でよい。

 おばけの事務所の黒板には東映撮影所から近い「三宝寺」や『ネムリン』の「大岩家」、撮影所内にある「大森坂」などが書き込まれている。

 団長役は不コメ常連で『ロボット8ちゃん』(1981)から『ロボ丸』、『もりもりぼっくん』(1986)など大半の作品に出演した市川勇氏。『ネムリン』の第25話「出た!ベートーベン」での変態的なベートーベン役などコミカルな印象だが、今回はシリアスな好演で特筆すべき素晴らしさである。

 ちょうちんの声は『機動戦士ガンダムZZ』(1986)や『キテレツ大百科』(1988)などで知られる本多知恵子氏。このちょうちん役がよかったからか第22話では別の役で女優として画面に登場し、第47話では違う役でまたゲスト声優を務めている。

 おばけたちの声は神山卓三、東美江、上田敏也の各氏。神山氏は不コメでは『ペットントン』や『ネムリン』、『ぼっくん』に登場。上田氏も『8ちゃん』や『ロボ丸』、『ペットントン』などに出演している。

 おばけのスーツアクターは山﨑清、高木政人、藤山健剛の各氏。

 横山の祖母の小甲登枝恵氏は東映作品に多数登場しており、不コメでは『ロボ丸』や『覇悪怒組』、派生作品『TVオバケてれもんじゃ』(1985)などに出演。本作には、今回とは異なる役で第26話第33話にも出てくる。