『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第31話「ほえろ恐怖の佃煮爆弾」(1985年11月10日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

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【ストーリー】

 朝の食卓。パパ(石井喧一)やママ(大橋恵里子)、伸介(岩瀬威司)、マリ(林美穂)が朝食をとっていると、カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)が「グッドモーニング、おはよう諸君」と2階から降りてくる。

カミタマン「今朝のおかずはしらたきと長ねぎか。そして若干お豆腐が残るきのうのすき焼きの残り」

 ママは「あんたうちの朝のメニューになんか文句でも?」

カミタマン「ピンポンピンポンピンポン、大当たり! がらんがらーん」

ママ「んーさあ言ってちょうだい!」

パパ「ママ」

 ママは「あんた黙ってて!」と憤然。カミタマンは咳払いして「では言わせてもらいます」と「カミタマンめも」を取り出す。

カミタマン「きのうの朝のおかずは、おとといの夜のシチューの残り。おとといの朝は、さきおとといの夜の湯豆腐の残り。あーあ、根本家ではいつから朝のおかずが前の晩の残り物になったんでしょうねえ。あーあ、カミタマンは納豆とか鰺の干物とか卵焼きとか、朝らしいおかずで朝ごはんが食べてみたい」

 激怒したママにはさるぐつわがはめられ、パパと伸介、マリがママを押さえつけていた。

パパ「カミタマン、いい加減にしないか」

ママ「言いすぎよ、居候の分際で」

伸介「カミタマン、ここは逃げたほうが」

 カミタマンは「あ、ああ」と慌てて逃げ出す。

パパ「殿中でござる!」

 

 公園に来たカミタマン。とらばる聖子(小出綾女)が「ほらざがせ」と、犬のようなサラ金苦たちを連れていた。

聖子「このへんにサラ金を払わない奴がいる」

 茂みの中でサラ金苦たちが暴れ、佃煮博士(及川ヒロオ)が逃げてくる。

佃煮博士「聖子ちゃん、もう少し待って」

聖子「だーめー」

 佃煮博士が「ジャンボ機!」と空を指差すと、みなが静止。その隙に逃げ出す佃煮博士。「待てー」と聖子たちは追いかける。みなは髪がふさふさの中年男性(久保晶)とすれ違い、彼の頭にカミタマンが当たると、かつらが落ちてしまう。男は急いでかつらを拾って装着。

カミタマン「あらー」

 

 ほうほうのていでアパートに帰宅した佃煮博士。

佃煮博士「サラ金には追われるし、女房は…女房は…」

 

 「矢切の渡し」をバックに、佃煮博士の妻(本多知恵子)はゴキブリ(奈良光一)と踊る。

 佃煮博士が「おれの人生は!」と叫んだ拍子に箱が落ち、奇妙な音が。

佃煮博士「おお、研究中の佃煮化自動販売機が」

 佃煮博士は10円を入れて、金魚鉢に狙いを定める。販売機からは風船が発射され、命中すると金魚は佃煮に。

佃煮博士「おどろいとデトロイトのセニョリータ。佃煮化自動販売機は遂に完成したのであります。この機械でモスガの奴を佃煮化して、サラ金苦から逃れてやるわい」

 佃煮博士は販売機にキス。

 

 居間ではモスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)が「♪愛しちゃったのよ」と歌いながら、掃除機をかけていた。やはり歌いながら後ろから入ってくる佃煮博士。いっしょに歌いながらモスガと対峙。販売機に10円を入れ、風船を発射するが、ポットに当たってポットが佃煮に。

佃煮博士「佃煮化された感想は? あれ」

 モスガは「いま掃除中なの」「あっち行け」と佃煮博士を追い出す。

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 「何だ、さっきのあのざまは」と不機嫌に歩く佃煮博士。

 

 ママは「佃煮博士が佃煮化していった?」と驚く。

モスガ「モスガね、よけたらポットが」

ママ「何でよけたの!?」

モスガ「モスガ、佃煮化…」

ママ「なればいいでしょ」

モスガ「そんな」

ママ「何でこのポットがあんたの犠牲になんなきゃいけないのよ」

 モスガは行ってしまう。

ママ「あ、モスガ…。ふん!」

 

 公園の花壇の前で怒るモスガ。カミタマンもいる。

カミタマン「きょうのママは朝からちょっとおかしいんだって」

 カミタマンが「落ち着いて」となだめていると、あの中年男性が歩いてくる。「いけね」と逃げるカミタマン。男性はモスガとにらみ合う。

男性「そうですよ。あたしゃアデランスですよ」

 男性はかつらを取り、はげ頭が。驚くモスガ。男性は「何か文句ありますか」とかつらを装着し、ステッキでモスガを幾度も打ち据える。「隠れてよかった」とふるえるカミタマン

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 アパートで佃煮化自動販売機をいじる佃煮博士。販売機が急に開いて佃煮博士のあごに当たり、博士は痛がる。

佃煮博士「♪頭にきたよ 静かにあけよ」

 今度はモスガが「♪泣かずに踊ろよ もう夜もおそい」と歌いながら入ってくる。モスガが突然「わっ」とでかい声を出す。

モスガ「博士! 佃煮化しろ」

佃煮博士「何だ急に」

 「ぶっ壊れてんだ、いま」と佃煮博士は「この石! 思い出すだろう」と漬け物石を持ち上げるが、自分の頭に当たってひっくり返ってしまう。「思い出した」と佃煮化自動販売機の直し方を思い出したらしい佃煮博士。

モスガ「佃煮化しろ」

 

 カミタマンは商店街で子どもたちを集めて、インチキ神社の営業を行っていた。

カミタマン「そこの社長、日本一!おがんでかない?」

 声をかけられた男性が言ってしまうと、カミタマンは「いけず!」 そこのお嬢さん」。佃煮博士が駆けてくる。

佃煮博士「大変なんだよ。ちょっとお茶でも飲みながら、な?」

 

 「雨のロードショー」のかかるカフェにいる佃煮博士とカミタマン

カミタマン「え、モスガがやけを起こして?」

佃煮博士「あ、ねえちゃん。ここんち、モーニングサービスつかねえのかい?」

カミタマン「バーカ、いま何時だと思ってんだよ」

 佃煮博士は腕の機械?で「3時25分」と確認。

カミタマン「つくわけねーだろ」

 佃煮博士はモスガのことを相談しながら、カミタマンカップに砂糖を入れようとする。

カミタマン「おっとととと!」

佃煮博士「ブラックだっけな?」

 外をママがためいきをつきながら歩いて行く。カミタマンは「ママ、どうしちゃったのかな」と外へ。

佃煮博士「勘定、勘定。おれ30円しか持ってねえんだよ!」

 

 モスガはアパートで佃煮化自動販売機をいじっていた。「これだ」と風船を発射すると、当たったテーブルは佃煮に。ほうき、虫かご、メガホンなどが次々と佃煮にされる。目をつり上げ、無気味に笑うモスガ。

 

 食卓でせんべいをぼりぼり食べる佃煮博士。横でカミタマンはママから委細を聴いた。

ママ「このポット、あたしがお嫁入りしたとき持ってきた中でただひとつ残ってる、お嫁入り道具なの」

 佃煮博士はせんべいを懐にこっそり入れる。ママは佃煮化したポットを抱きしめる。

ママ「ちょっと言い過ぎちゃったみたいね」

カミタマン「モスガの奴、みんなに心配かけやがって」

ママ「あの、もう少しのりせんべいありませんか」

 「あるよ」とカミタマンは容れ物のふたを取り、佃煮博士を殴り倒す。

カミタマン「ママ、モスガのことはカミタマンが何とかするから」

ママ「お願い!」

 佃煮博士は手を伸ばしてせんべいをさがす。

 

 カミタマンと佃煮博士がアパートに来ると、家具類が佃煮にされていた。佃煮化自動販売機もない。

カミタマン「モスガの奴〜」

 

 公園でモスガは「よしよし」と佃煮化自動販売機を愛撫。そこへ「モスガー」とマリが。モスガの目が光り、マリは驚く。モスガは販売機に10円を入れる。

 

 坂道でカミタマンは「モスガー」、佃煮博士は「佃煮化自動販売機ー」とさがしていた。マリが「モスガが、モスガが」と駆けてくる。

 

 モスガはあの中年男性を追いつめていた。

男性「やめろ、私には妻や子どもがいるんだ」

 モスガは「うるさい」と風船を発射。一度はよける男性だが、2発目であえなく佃煮に。

  

 歩いてさがすカミタマンと佃煮博士。

カミタマン「あっモスガ」

佃煮博士「佃煮化自動販売機」

 モスガはふたりに風船を発射。佃煮博士はカミタマンの後ろに隠れるも、カミタマンはよけて佃煮博士も佃煮に。モスガはたくさんある10円玉を自動販売機に入れる。次々と放たれる風船。

 

 学校帰りの伸介と横山(末松芳隆)が歩いていた。「あいたたたた」と頭を押さえる横山。伸介はランドセルを持ってあげる。

伸介「でも知らなかった。横山が現代医学じゃ治らない病気だったなんて」

 横山は「再起不能みたい」と朦朧。

伸介「おんぶしてやろうか」

横山「すまない」

 伸介はランドセルをふたつ持って、横山をおんぶする。横山は「もうだめだー」と言いながらもにやにや。そこへカミタマンが「ふらふらしてる場合じゃない。モスガが」と来る。

あ、横山。お前いたのか

横山「いちゃ悪いか!」

カミタマン「あ、いやあ、その…」

 カミタマンは伸介にウインク。

 

 話を聞いた伸介。

伸介「じゃあモスガが、いままでの昆虫としての恨みを?」

カミタマン「うん、いままで昆虫として人間たちに採集されてきた恨みを、今度は人間を佃煮化して採集しているとしか考えられない」

ネモトマン「判った、カミタマン。よしここはネモトマンに」

 カミタマンが「カモンカカモン」と呪文をかけようとすると「何だ?」と横山が現れる。

横山「モナカがどうしたって?」

 

 草むらにいるカミタマンと伸介。だが「モナカおれにもちょうだいよ」とまた横山が。

カミタマン「そ、それがふたつしか」

横山「お前たちさっきからいったい何やってんの?」

カミタマン「伸介、しょうがない。モナカやれ」

伸介「うん。横山、食え」

 伸介は横山を押さえつける。カミタマンはステッキで横山を殴り、横山は卒倒。

 

 神社でカミタマンは伸介をネモトマンに変身させる。

 草むらで「モナカおいしい…」とのびている横山。

 

 佃煮博士の横で不敵に笑うモスガ。ネモトマンが飛んでくる。

ネモトマン「全人類を佃煮化から守るためにやってきた」

モスガ「何!」

ネモトマン「モスガ、大人しくその佃煮化自動販売機を渡しなさい」

 首を振るモスガ。

ネモトマン「では仕方がない。ネモトマンはきみをやっつけなくっちゃいけない。モスガ、覚悟!」

 モスガは10円を入れて風船を発射。ネモトマンもあっさり佃煮に。カミタマンが「ネモトマンまで」と来る。

カミタマン「こらモスガ。お前は自分のやっていることが?」

 モスガは「260円」と10円玉を次々に放り込む。

カミタマン「このままじゃ全人類が佃煮化されてしまう」

 モスガは風船を連打。

カミタマン「そうだ! こらモスガ、ここだここだ。ここ狙え!」

 何か思いついた様子のカミタマン。モスガが風船を放つと、カミタマンはあの男性の佃煮のかつらを外す。はげ頭で風船はつるりとすべり、モスガのほうへ向かっていく。

カミタマン「行け!」

 風船はモスガに命中し、モスガも佃煮に。「カミタマン」とママの声が。

ママ「佃煮化は洗濯せっけんで洗うと落ちちゃうみたい。ほら」

 ポットはもとに戻っている。

カミタマン「何!」

 

 庭でせっけんまみれのモスガとカミタマン

モスガ「くすぐったいよ」

カミタマン「もうちょっとだから動くな」

 モスガは全身を振り、見ていたパパとママ、伸介、マリにもかかりそうになる。モスガは逃げだし、カミタマンは追う。

 

 佃煮博士はサラ金苦に追いかけられていた。「10円落ちてる」などとごまかそうとする佃煮博士。聖子は今川焼きを食べている。

佃煮博士「つかまっちゃったー」 

ほえろ恐怖の佃煮爆弾

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【感想】

 モスガと佃煮博士との最後の対決編。今回はモスガが凶暴化するというもので、これまでとは様相が異なっている。

 今回のモスガが採集された恨みを、人間を襲って晴らそうとするあたりは不思議コメディーシリーズの前作『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第18話「さすらいの除夜の鐘」では長年叩かれつづけた鐘が人間を叩こうとするというねたを想起した。

 浦沢義雄脚本では『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第48話「不気味なバビロニア人」や『うたう!大龍宮城』(1992)の第31話「トビウオ」、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の「いじけたジューサー」などで自動販売機が活躍するが、今回の「佃煮化自動販売機」は10円を入れると男性器のような風船を発射して当たったものを佃煮にしてしまうという機械で、どう見ても「自動販売機」の体をなしておらず呆気にとられる(サブタイトルの「爆弾」は劇中で言及されていない)。

不気味なバビロニア人

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 佃煮博士がとらばる聖子やサラ金苦に追われている際に「ジャンボ機!」と唐突に言うシーンは、この年の8月に衝撃的な日航機墜落事故があったからで、見ていてぞくりとする。『ネムリン』の第23話「受験生の敵、バーカ!」でも「金属バットだけはやめなさい」と金属バット事件をねたにしていた(このような事件関係の台詞はアドリブかもしれない)。

 中年男性のはげ頭がクライマックスで活きるわけだけれども、この以前のアニメ『怪物くん』(1980)の第55話 「ミイラは王子だ」でもやはりはげが事件解決の鍵となっていた。 

第55話 怪ミイラは王子だ

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 今回の演出は坂本太郎監督で、過去の佃煮編における凝ったアイディアを詰め込む大井利夫演出(第22話)、穏健だがシュールな場面では張り切る佐伯孚治演出(第26話)と比較すると、いきいきしたテンポのよさが際立った。

 佃煮博士が根本家に忍び込むシーンとモスガがアパートに入るシーンとでは、カメラのパンで反復するような撮り方なのには笑わされる。

 

 佃煮博士の及川ヒロオ氏はおそらくアドリブも交えて、やりすぎなくらいの熱演。

 はげた中年男性役の久保晶氏は、不コメでは『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)の悪魔役が強烈で忘れ難いが、今回のモスガを痛めつけるシーンもインパクトがあり、久保氏のクレージーな表現力が伺える。『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)の第16話「川崎大三郎の秘密」ではアラビアの王さま役で、やはりはげ頭をねたにされていた。近年も大河ドラマ『いだてん』(2019)などに出演。

 

 カミタマンが神社を開いている商店街は光が丘の “ゆりの木商店街” で『ネムリン』の第12話第17話など頻繁に使われている。

 ネモトマンが変身するシーンのロケ地は練馬区内の神社で、本作の第9話や『ペットントン』(1983)の第36話「豆腐がおこった日」などにも出てきた。 

川崎大三郎の秘密

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