第4話「タタリの怪人 タタリ君」(1985年4月28日放送 脚本:浦沢義雄 監督:佐伯孚治)
【ストーリー】
誰かを呼ぶ子どもの銅像の後方で、伸介(岩瀬威司)がカミタマン(声:田中真弓 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)を呼んでいた。公園のベンチでごろ寝をしているカミタマン。
伸介「ぼくの大事なクミコちゃんが!」
団地の前の広場で、クミコ(林桂子)が男の子たちにいじめられている。
カミタマン「クミコ、伸介にとって大事でも、カミタマンにとって大事じゃない」
カミタマンは「自分で助けろ」と、伸介をネモトマンに変身させる。
広場ではクミコが鞄を振り回して逆襲。男の子たちを叩きのめした。
クミコ「さっきはよくもやったわね」
そこへネモトマン登場。
ネモトマン「はっはっは。クミコさん、もう大丈夫。きみの安全はこのネモトマンが保証する」
クミコは「何よあんた」と胡乱な目で見る。「ザ・ネモトマン」とポーズを決めるネモトマンだが、クミコはネモトマンを容赦なく鞄で殴りつける。
クミコ「いい加減にして」
すごすご引き揚げてくる伸介。カミタマンは爆笑。
伸介「笑いごとじゃないぞ、カミタマン。お前がぼくのこと、ネモトマンにするから」
カミタマン「いや、わりいわりい」
伸介「きっとぼくは性格的に正義の味方には向いてないんだ」
カミタマン「そんなことないない、そんなことない」
伸介は、第一自分には体力がないという。
カミタマン「つければいいさ」
カミタマンは変な機械を出し、伸介に装着させる。
カミタマン「スーパーヒーロー養成ギブスだ。立派なネモトマンになってくれたまえ」
サイレンが鳴り、特訓をさせられる伸介。カミタマンは行ってしまう。
カミタマンは池で釣り。
カミタマン「人間って奴は何でもかんでも相談したがるんだ。たまには自分で解決しろってんだ」
池から奇妙な実が釣り上がる。
カミタマン「アーモンドみたいだな」
噛みついたカミタマンは悲鳴を上げる。
「まずいまずいまずい」と言いながら、帰宅したカミタマン。ママ(大橋恵里子)は洗い物。
カミタマン「カミタマン、世界でいっちばーんまずいものかじった」
驚くママ。
カミタマン「ママしゃん、口直し口直し。早くー」
ママが牛乳を出すと、カミタマンはストローで飲む。
公園に戻ったカミタマン。
カミタマン「こんな種、見たことないなあ。突然芽なんか出しちゃったりして」
すると種から芽が。驚いてカミタマンは逃げ出す。
種から突然芽が飛び出したと聞いたパパ(石井喧一)は、呆れ顔。
パパ「何をバカなことを言ってるんだ」
カミタマン「バカなことじゃないよ。ほんとにあったことだもん」
パパ「それじゃいまごろ、木になって実がなってるんじゃないのか」
種は本当に木になって、極大な実がなっていた。
カミタマン「パパしゃんの言った通りだ。それにしてもこの木は何の?」
そこへ「タタリの木ー」「大丈夫、お前の味方」と声が。実が地面に落ち、中から奇怪な男が「どぴゃどぴゃどぴゃ」と現れる。
男「タタリの木から生まれた、タタリ怪人タタリくんー」
驚くカミタマン。タタリ(花房徹)は「タタリにとって神さまと言えば親も同然」と言い出す。
タタリ「カミタマンをバカにする奴がいたら、このタタリくんが祟って差し上げますから」
「触るな、気色悪いなもう」と厭がるカミタマン。
伸介は養成ギブスでトレーニングをやらされていた。
伸介「助けてくれ、もう十分鍛えられたから」
カミタマン「助けてほしいのはこっちだよ」
「いいじゃないの」と追いかけてくるタタリ。伸介は汗を流しながら「何だあいつ」。
居間のテーブルで寝ているマリ(林美穂)。外からカミタマンが飛んでくる。
カミタマン「ひらけ、サッシ!」
入ってきたカミタマンは、マリを起こす。
マリ「タタリ、誰それ?」
畳の上にタタリが「それ、ぼくぅ」と現れる。マリはカミタマンを放り出し、ママを呼びに行く。
タタリ「大丈夫、カミタマン? 仲良くしよう」
カミタマン「よせ、その気になったらどうする」
タタリはカミタマンのトサカをブラシで優しくなでる。
カミタマン「ダメだ、ダ、いや。そこ感じる。いやん…」
マリがママを連れてくる。
タタリ「タタリの木から生まれたタタリ怪人・ターターリくんー」
ママ「タタリくん?」
マリ「自分のことくんづけで呼ぶ人にいい人いないって、塾の先生が言っていたわ」
ママとマリはタタリをにらみつける。タタリはカミタマンに対して無礼だと抗議。
タタリ「あんたたちみたいに神さまをバカにする、このタタリが許さない」
タタリは「そよそよそよ」とタタリ風を起こす。ママとマリのスカートがめくれる。カミタマンは「何考えてんだ、お前」とタタリを木槌で叩いて一喝。マリが「もう二度とうちに来ないで」とほうきでタタリを追い出す。
公園へタタリが「カミタマンの奴、覚えてろ」と逃れてくる。横で伸介がまだトレーニングをさせられていた。
伸介「すいません、助けてくれますか」
タタリ「それにしてもあの木槌、痛かったなあ」
伸介「そうでしょう、あの木槌さえなければカミタマンなんて」
タタリは「お前カミタマンのこと、詳しいの?」と振り向く。
伸介「まあいっしょに住んでるから。ところで、おじさんだあれ?」
「おじさん?」とタタリは不満げ。
タタリ「神さまをバカにした奴をやっつける、あのタタリ」
伸介「じゃあ、カミタマンの友だち?」
タタリは「ところがカミタマンの奴ときたら、ぼくの頭をあの木槌で」と悔しがり、勢いで養成ギブスの取っ手を外してしまう。機械は壊れ、伸介はトレーニングから解放される。怒るタタリを茫然と見る伸介。
居間で将棋を指しているパパとカミタマン。伸介が帰宅。
伸介「タタリくんとかいう奴が、お前のことを!」
将棋に夢中のカミタマンは、伸介の口にせんべいを突っ込む。伸介がカミタマンを無理やり庭へ連れ出す。カミタマンは仕方なく伸介からせんべいを外した。
カミタマン「タタリだろ? 大丈夫、あいつ弱いから」
伸介「そんなことないよ。あいつ、ぼくを鍛えたスーパーヒーロー養成ギブス、簡単に壊したもん」
カミタマン「ほんとか?」
伸介「だからぼくがここにこうやっているんじゃないか」
カミタマンは将棋で忙しいので、「ゆけ、ネモトマン!」と命じる。
伸介「そんなあ、ぼくは体力がないって言ってるじゃないか」
無理にネモトマン(岩瀬威司)に変身させられる伸介。
カミタマン「頼んだぞ」
ネモトマン「任せなさい。とお」
飛んでいくネモトマン。カミタマンは見送る。
パパ「何やってんだ。カミタマンの番だぞ」
タタリは飲んでいたジュースの缶を投げ捨て、歩き出す。そこへネモトマンがキック。
ネモトマン「タタリくん、きみをやっつけろとカミタマンから頼まれた。さあ、戦え」
タタリは「黙れ。ザ・小僧」とカミタマンの足を踏みつける。「はっはっはっは」とネモトマンは余裕綽々。タタリは驚く。だが「いて!」と遅れてダメージを受けるネモトマン。タタリは勝ち誇る。
居間ではパパが「どうだ!」と笑う。
パパ「カミタマン、ゆっくり考えてくれ」
パパはトイレへ。電話が鳴るが、カミタマンは「ちんちろげー」と頭を回して考え込む。
公衆電話からタタリが電話をかけていた。
タタリ「おかしいな、誰も出ないな。こら、ネモトマン。電話番号違うんじゃないか」
手すりに縛りつけられているネモトマン。
ネモトマン「正義の味方に間違いはない。はっはっはっはっは」
居間でまた電話が鳴る。カミタマンは「うるさいな、もう!」とやっと出る。
カミタマン「もしもし、はい、あたし。何だ、何だタタリか。うん、ネモトマンをつかまえた? いまそれどころじゃないんだよ、もう! うるさいな。ふんだ」
カミタマンは電話を切る。
公衆電話の前でタタリは憤激。
タタリ「あの野郎、友だちだろ。こうなったら、にゅー」
居間に現れるタタリ。
タタリ「こら、カミタマン。お前には友情というものがないのか」
カミタマンは気づかない。
タタリ「それでもお前は神さまか」
タタリは「この隙に」とカミタマンの木槌を奪い、カミタマンを叩こうとする。だがカミタマンは「こうなると…」と浮かび上がり、よけてしまう。
庭へ飛び出し、路上を歩いて行くカミタマン。追いかけるタタリ。叩こうとしたりつかみかかろうとしたりするが、よけられてします。
神社の前で、占い師のとらばる聖子(小出綾女)が大あくび。
聖子「占い師のアルバイト面白そうだからやってみたけど、こうお客が来ないんじゃな」
カミタマンが飛来。
聖子「あ、タヌキ!」
悩んでいるカミタマン。
聖子「ちょうどよかった。あたしが占ってあげるね」
カミタマン「あ、いいよいいよ。いいってば」
追ってきたタタリは、カミタマンを殴ろうとして聖子の頭を一撃。星が出て、角が浮かび上がった。
カミタマン「角! そうか」
のびている聖子。
タタリ「痛いの痛いの、飛んでけー」
居間に戻ったカミタマンは「王手だい」と喜ぶ。
タタリ「何、王手」
カミタマンはすんなり木槌を取り戻すと「やったやった」とタタリの頭を叩く。
カミタマン「パパ、早く!」
タタリは「この野郎」と激怒してうちわを扇ぎ、ゴミやら大根やら缶ビールやらが宙を飛んでカミタマンを襲う。だがカミタマンは「これで勝ったぞ。パパしゃん遅いな」と、文字通りどこ吹く風。
タタリ「何て奴だ」
カミタマン「かたかた勝った、べろべろべー」
タタリ「こいつ、神さまじゃない。化けものだ」
「うるさいよ。静かにしてくれよ」とカミタマンはブーメランで攻撃。逃げ出すタタリ。
ようやく戻ってきたパパは、テーブルにあった缶ビールを飲んで「まいったなあ」。そしてビールを見て怪訝な顔に。
タタリは一目散に道を逃げていった。
食卓で、ごはんをかきこんでいる伸介とカミタマン。
伸介「嘘、あいつそんな弱かったの?」
カミタマン「ああ? あんまり強いとは言えねえよな」
さりげなく顔を見合わせるママとマリ。
屋台でラーメンを食べているタタリ。
タタリ「カミタマンの奴、今度会ったら必ず。おじさん、ここのラーメン、なると小さいね」
タタリは、なるとをはしでつまむ。
食卓にパパの姿はない。
マリ「ところでパパは?」
カミタマン「うん、ちょっとね」
パパはベッドでビールを飲みながら、次の一手を考え込む。近づくカミタマンも酔っぱらっていた。
カミタマン「あーらパパしゃん、もう一杯いかが? ねえ、寄ってらして、うふふふふ。どうぜおらっちには勝てっこないよーだ。おらっち神さまだもんね、ひっく」
【感想】
前回のとらばる聖子につづいて、準レギュラーのタタリが登場。聖子ほどではないが、ほぼ定期的に登場してカミタマンとバトルを展開する。
不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)の葉っぱバーガー博士や『どきんちょ!ネムリン』(1984)のイビキといった準レギュラーの仇役がおり、特にイビキは演じる佐藤正宏氏の怪演や演出・美術の悪乗りもあって異彩を放っていた。タタリもその系譜に属する人物であろうが、初登場の今回はいささか盛り上がりに欠ける。
仇役が主人公をつけ狙うも相手にされなかったり逆に振り回されたりという構図は『ペットントン』の第34話や『ネムリン』の第19話、『もりもりぼっくん』(1986)の第20話などを彷彿とさせる(終盤で屋台が出てくるのも『ネムリン』と同様)。だが今回は前半のタタリが実から生まれるシーンがちょっと面白いのを除けば、際立ってユニークな趣向があるわけでもなく凡調だと言わざるを得ない。
ただ1話の寺田憲史脚本では番長につかまっていたクミコが、今回は逆に男の子を叩きのめしているのは浦沢義雄脚本らしいと言えよう。1話では男子を従えてもてもてだったはずだが、今回は彼女を快く思わない勢力に襲われたということだろうか。
ちなみに1話ではブーメランは「よっぽどあぶない」ときでないと使えないと解説されていたけれども、4話にして早くもあぶなくも何ともない場面で使われている。
屋台でタタリがなるとに注目しているが、浦沢脚本では『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989)の第1話「あの娘が街にやってきた」にて、恋人がなるとのないラーメンに姿を変えられるという展開があった。
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タタリ役の花房徹氏は、当時から自由劇場など多数の舞台に出演していた舞台俳優。不コメには小劇場の役者が常に登用されていたゆえ、その流れでの起用であろう(20代のころの氏は “エノケンの再来” と称されていたという)。この時期には劇団黒テントの斎藤晴彦・福原一臣・吉田重幸の各氏が不コメに出演しており、花房氏も黒テントに客演していたので、声がかかったのかもしれない。特撮では『ウルトラマンレオ』(1974)の第24話「かぶと虫は宇宙の侵略者!」にて、タタリ同様のタイツ姿で宇宙人役を熱演。『レオ』では、白で統一された無性格なセットでハイテンションに振る舞う花房氏が無気味だったのに対して、今回はあくまでもコミカルに演じている。不コメでは『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第1話「神様の贈り物」でのゲスト悪役も印象に残る。
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カミタマンが念力で?ドアを開けたり受話器を浮かせたりするのは、人形操作の限界ゆえの措置であろう。主人公が神さまというのはその点では好都合な設定であった。演じる田中真弓氏のアドリブであろう小芝居は、一本調子の展開の中で異彩を放っている。
冒頭のシーンは赤塚新町公園。『カミタマン』によく登場するほか、『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の第18話や『不思議少女ナイルなトトメス』の第30話などでも多数使われている。
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