第2話「突然!トロピカル神社」(1985年4月14日放送 脚本:浦沢義雄 監督:田中秀夫)
【ストーリー】
ねぎを刻むママ(大橋恵里子)、朝食をとっているカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、杉田智子、日向恵子)とマリ(林美穂)。
ママ「カミタマン、悪いんだけど納豆かきまわしてくれる?」
カミタマンは「おれ、一応神さま。神さま納豆かきまわす、イメージダウン」と抗弁。
ママ「いいのよ、食べなくても」
カミタマン「ああ、イメージダウンするする。納豆でも何でもかき回す」
ママはにっこり。食卓につくと今度は伸介(岩瀬威司)を起こしてくるよう命じる。カミタマンが厭がると「いいのよ、食べなくても」。
カミタマン「行く、行く行く行く」
自室で寝ている伸介。カミタマンが呪文を唱えると、ランドセルが浮かび上がって伸介を攻撃。
伸介「何だよ、やめてよ。痛いってば、痛いよ」
食卓に戻るカミタマン。今度はパパ(石井喧一)の「カミタマン」と呼ぶ声。
ママ「ヒゲ剃ってんのよ。なんか用みたい。早く行きなさい」
カミタマンは「ヒゲぐらいでいちいち呼ぶなってんだ」と行く。
洗面所でパパは「すまん、タオル取ってくれ」。カミタマンは「ムカー」。タオルは浮かび上がり、パパの首を締め上げる。
カミタマン「この家、神さまこき使いすぎる、もー」
「ほげー、さあ食べようっと」とカミタマンがまた食卓に来ると、ママがわざとらしく「いっけなーい、きょう燃えないゴミの日だ」。
燃えないゴミを引っ張っていくカミタマン。
家を出るパパと伸介。
パパ「何、お前はランドセル?」
伸介「パパはタオルで?」
パパ「あの野郎」
伸介は「あれでもぼくの親友なんだから」とかばう。
パパ「伸介、お前先週知り合った奴、今週はもう親友になってんのか。もしかしすると来週は結婚したいなんてバカなこと言うんじゃないだろうな」
パパは「お前、信じてるからな」と真顔。
「腹減った」とふらふらのカミタマン。だが食卓では、ごはんがもうなくなっていた。カミタマンは「おらっちのごはんがない」とひっくり返る。そこへママが掃除機をかけながらやって来て、カミタマンを吸い込む。ママはゴミを庭のポリバケツへ。ポリバケツから出てくるカミタマン。
カミタマン「おらっち神さま。とっても尊敬されなきゃいけない神さま。それをこんなゴミ箱に棄てるなんて」
カミタマンは涙する。
公園でカミタマンは「人間に尊敬されるには」と沈思黙考。
下校する伸介と横山(末松芳隆)に、カミタマンは「人間に尊敬される方法」を尋ねる。伸介は困惑。
横山「やっぱり神さまなんだから、神社のひとつやふたつ持たないと箔がつかないんじゃないの」
カミタマン「神社?」
伸介と横山は実際の神社につれて行く。
根本家の庭で何やら働くカミタマン。奥にいる伸介と横山。
ママ「カミタマン神社?」
横山「あいつ、人間に尊敬されたいんだって」
ママ「冗談じゃないわよ。うちの庭に神社なんか建てられちゃ」
伸介「いいじゃん」
横山「おばさん、もしかしたらお賽銭ががっぽがっぽ儲かるかもしれないから」
ママ「お賽銭?」
伸介「そしたらマイカーが買えるかもよ」
ママは「わが家に車!」とすぐその気になる。のこぎりで木を切るカミタマン。
街で伸介と横山はカミタマン神社の告知のポスターを貼った。
庭には怪しげな神社が完成。カミタマンはマリに「カミタマンを尊敬するか」と迫る。
居間ではパパが帰ってきていた。
パパ「駅からうちまで、このカミタマン神社のポスターが5枚くらい目についたぞ」
ママ「ほんと」
パパ「何故止めさせないんだ」
ママはお賽銭でマイカー狙いと説明。パパも「なるほど!」とすぐ乗る。
そこへ呼び鈴が鳴り、早速老人(里木佐甫良)が「カミタマン神社はこちらかな」と訪ねてきた。
老人「ちょっとお参りを」
カミタマンは「いい気分!」。
ママ「あら、お賽銭は?」
老人は100円を入れる。
パパ「これはどえらい商売になるかもしれんぞ」
ママ「そうすれば長年夢に見ていたマイカーも」
老人は「腰の具合が悪くて」と言うので、カミタマンは「パパ、マッサージマッサージ」。居間でパパは指圧師よろしく、老人にマッサージ。
つづいて老婆(大川万裕子)が「持病の神経痛が痛むのです」。カミタマンは「おーい、ママ」。居間でママが老婆にマッサージ。
やがて居間では10人ほどの老人たちが「東京音頭」を唄って宴会に。
カミタマン「さあ諸君、じゃんじゃん食べてじゃんじゃん飲んで、カミタマンを尊敬しよう」
あきれ顔のパパやママ、マリ。そこへ伸介と横山が帰宅。
カミタマン「おーいパパ、ママ。お酒とお料理、どんどん持ってきてよ。そんなところでぼさっとしてないで、サービスサービス」
ママが賽銭を確認すると、わずかだった。
ママ「あなた、あれじゃマイカーどころじゃなくて、このうちの生活がめちゃくちゃよ」
パパ「そんなこと私に言ったって」
ママ「お賽銭だって思ったほど集まんないし、この責任どうとってくれるのよ」
パパ「いい加減にしなさい。最初に儲かると言ったのはママのほうでしょ」
ママ「あなた、あたしに責任があるとでも?」
パパ「いやそういうことじゃ」
「みんなあたしが悪いのよ」と泣き崩れるママ。
パパ「そうだ、みんなお前が悪い」
「何よ、その言い方」とママは猛然とパパのネクタイをつかむ。
庭では老人たちがカミタマンに祈祷していた。茫然と見ている伸介と横山。
部屋ではパパとママがつかみ合いに。止めに入るマリ。居間で残りものを食す伸介と横山。
マリ「お兄ちゃん、のん気に食べてる場合じゃないわ。パパとママが喧嘩して」
出てくるパパとママ。
横山「きみんちの夫婦喧嘩、過激ですねえ」
マリ「お兄ちゃん、あとは任せたわよ。私、友だちんちに逃げるから」
マリは行ってしまい、横山も「ぼくも」と逃げ出す。
庭で乱闘するパパとママ。伸介が止めに入る。
伸介「ママ、何があったか知らないけど、パパを許してあげてよ」
本物の神社でカミタマンは、「信じる者は救われる」とひとりで陶酔。走ってくる伸介。
伸介「お前のためにパパとママが喧嘩して」
カミタマン「おお、離婚したか」
伸介「いや、でもこのままじゃ」
カミタマン「伸介、お前どっちにつくんだよ。覚悟だけはしておけよ」
伸介「バカ、その前に何とか」
カミタマンは「いい気分なんだからよ」と拒否。怒る伸介。そこでカミタマンはステッキを振り上げる。
伸介「お前もしかして、またぼくをネモトマンにして、この事件を解決しようと」
カミタマン「悪いか」
能力を懸念する伸介だが、カミタマンは「まあ心配すんなって」。伸介はネモトマンに変身する。
庭では、ママがパパを叩きのめしていた。現れるネモトマン(岩瀬威司)。
ネモトマン「ふたりとも、無駄な戦いは止めなさい」
パパ「何だ、お前」
ネモトマン「平和を愛する神の使者。ネモトマン」
ママ「あなたどこの小学生?」
パパ「全く人んちの夫婦喧嘩をからかいに来るなんて、親はいったいどういう教育をしてんだ」
ママ「うん」
ネモトマン「そんなこと言われても」
パパ「とっとと帰れ」
パパはネモトマンをこづいて、突き飛ばす。ママはほうきで殴りかかる。ぼこぼこにされてネモトマンは逃亡し、パパとママは喧嘩を再開。
雑木林のドラム缶に頭から突っ込むネモトマン。ボドボドの伸介が出て来る。
伸介「だからネモトマンになるの厭だったんだよー」
神社のベンチではカミタマンが「これでおれも一流神さまの仲間入りか」とふんぞり返っていた。駆けてくる伸介。
伸介「ダメだった」
カミタマン「やっぱりな」
伸介「お前それはどういうことだよ」
カミタマン「え、まあまあ世の中いろいろ」
伸介が怒ると、カミタマンはふたたびネモトマンに変身させる。
庭ではパパとママの肉弾戦がつづいていた。またネモトマンが降り立つ。
ネモトマン「私はただ神からの使者として、ふたりの夫婦喧嘩をこの剣に賭けて止めようと」
ママ「それが大きなお世話だって言うの」
ママは剣を取り上げると、ネモトマンをぶっ刺す。吹っ飛んでいくネモトマン。
ネモトマンは、また雑木林のドラム缶に頭から突っ込む。
神社ではカミタマンが「全世界におらっちを尊敬する奴が増えて、おらっちは人気者」などと妄想していた。そこへ伸介が「ネモトマンになっても何にもならないじゃないか」と棒で殴りかかる。
バトルの果てに、お疲れのパパとママ。ママは「あの子、どっかで見たことない?」と言い出す。
ママ「さっきの変な子」
パパ「ああ、きっとなんか家庭に問題があって」
ママ「そうね。きっとなんか恵まれない家庭の子なのね」
パパ「ママ、うちの伸介もあんなふうにならないように」
ママ「そうね。パパ、仲直り」
「ママー」と抱き合うふたり。するとカミタマンの声が。
カミタマン「助けて」
怒って追ってくる伸介。
パパ「ママ、もとはと言えば、ふたりの喧嘩の原因もあのカミタマン」
ママ「そうね」
パパ「ふたりで力を合わせて」
ママ「やっつけましょう」
屋根へ逃げたカミタマンは「ここまでおいで」。だが、伸介がパチンコを撃ち込む。カミタマンは転落し、屋根瓦も落ちてくるが、カミタマンはカミタンブーメランで吹っ飛ばした。屋根瓦は神社を直撃し、神社は煙を噴いて消えてしまう。
カミタマン「おらっちの神社が」
泣き崩れるカミタマンと静かに見つめる伸介。
夜、絆創膏を貼って仲むつまじいパパとママ。
マリ「ふたりともいい加減にしてよ!」
カミタマンは、伸介の部屋で寝込む。
伸介「神さまでもやっぱ病気になんのか」
カミタマン「おらっちの神社」
伸介「あした病院連れてって、注射打ってやるからな」
厭がるカミタマンに、伸介は思わず微笑んだ。
【感想】
2話目で、メイン脚本・浦沢義雄が初登板。この不思議コメディーシリーズの大半の脚本を担った浦沢先生だが、メインライターなのに1話目はヘルプの人に任せるというパターンは珍しい。
今回も1話と同じく設定紹介編で、ネモトマンの役立たずぶりが執拗に強調されている。神社ビジネスを発端に夫婦の諍いが起きてその渦中へネモトマンが乱入するという構成は、前回と比べるとさすがに特異で面白いのだけれども、台詞や演出にさほどのキレはなく、裏側の時間的制約が想像された。『ペットントン』(1983)のやりたい放題や『どきんちょ!ネムリン』(1984)の洗練を見てきた目には少々食い足りないが、このぐらいの話が『カミタマン』の1クール目はつづく。
この時期の浦沢脚本で目立ったのが夫婦ねたで、『ペットントン』や『ネムリン』でも不和と和解が幾度も描かれており、今回も鉄板ねたを持ってきた感がある。
かつて『ペットントン』の第41話では「喧嘩していた夫婦がね、ひとつの目標に向かって協力して愛が芽生える」と説かれていて、何だか普通ではあるけれども、浦沢先生の夫婦観なのであろう。結局、ネモトマンを撃退することで、ふたりは仲直りするわけだし…。
ペットントンと主人公の少年とはまぶだち、ネムリンとヒロインとは女同士あるいはネムリンがヒロインのオブザーバーという雰囲気だった。『カミタマン』の伸介は、ペットントンと同様の友人関係を踏襲しつつも、今回のラストのようにちょっと兄貴のような匂いを漂わせている(前話のラストではカミタマンは「母ちゃん」と伸介に甘えていた)。
根本家でいちばんほしいのが「マイカー」というあたり、この時代らしい。
神社をつくって儲けようとするのは、神さまの設定を生かしていて面白い。浦沢脚本では後年の『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)の第18話「お兄ちゃん売ります」でも、インチキ宗教の金儲けが描かれた。『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の第39話「悲しみの魔天郎教」ではカルト教団が無気味に描かれてやや怖気をふるってしまったが、今回はあくまでコミカル。
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老人役の里木佐甫良氏は、伊丹十三監督作品の常連として知られる名バイプレーヤーで、『ペットントン』第18話にも出演。
カミタマンたちが訪れる神社は練馬区の高松八幡神社で、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第1話「涙の妖怪ザ・お正月」などでも使われている。
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