『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第26話「佃煮博士の秘密指令」(1985年10月6日放送 脚本:浦沢義雄 監督:佐伯孚治)

【ストーリー】

 レオタード姿の佃煮博士(及川ヒロオ)。

佃煮博士「さあ、エアロビクスしなくっちゃ」

 自宅で音楽に合わせて踊る。そこへ来訪者が。

女性の声「あるときは遊園地のポップコーン売り娘。そしてまたあるときは謎のラーメン屋の女店員。そしてその実態は」

 とらばる聖子(小出綾女)が現れる。

聖子「とらばる聖子、きょうはサラリーローンの取り立てにやってまいりました」

佃煮博士「ええ…」

聖子「さあ、サラ金苦。早くこのおじさんに、お金返してもらって」

 サラ金苦たちがワンワン言いながら突入。

 

 居間でカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)は「さて、読書でもしますかな」と棚から本を取る。そして縁側で本をまくらに、寝るカミタマン

 そこへ伸介(岩瀬威司)が泣いている女の子(小坂光子)を連れてくる。伸介に起こされたカミタマンは「うるせえな」と言うが、泣く女の子を見て目を見張る。

カミタマン「このやろ、このやろ。火野正平みたいな真似しやがって」

伸介「何を?」

カミタマン「あれだよ。女の子泣かして!」

伸介「違うんだって。あの子が謎の宇宙人に狙われてるって言うから。カミタマン、早くぼくをネモトマンにしてくれ。あの子を謎の宇宙人から救いたいんだ」

カミタマン「あ、伸介。お前、完全なスケベ根性にネモトマン使おうとしてるね」

伸介「違うよ。正義だよ、正義」

カミタマン「どこが」

伸介「もう、判ったよ。後でセブンイレブンのじゃがまるくん、ごちそうするから」

 カミタマンは呪文をかけ、伸介はネモトマン(岩瀬威司)に変身。

ネモトマン「この爆発ザ・ネモトマンがお嬢さんを謎の宇宙人から救います。さあ、行きましょう」

 ネモトマンはすかさず女の子の臀部に触り、女の子は泣きながら器用に払いのける。 

 公園ではみなが野球していた。横山(末松芳隆)が滑り込むが、モスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)は「アウト!」。

横山「お前どこに目つけてんの。ボールよりおれの足のほうが。だからこんな奴に審判させるの…」

 両者は喧嘩になり、モスガは横山を踏みつける。

モスガ「ゲームセット!」

 今度は他の子どもたちがモスガにつかみかかる。見ている佃煮博士。

佃煮博士「いい加減な審判しやがって、この。モスガ、きょうこそお前を佃煮にして大もうけして、サラ金苦から逃れてやる」

 その後ろには四つんばいのサラ金苦が。

佃煮博士「判ったよ、もうー」

 唄いながら愉しげに道をゆくモスガと、尾行する佃煮博士。モスガに網をかけるが、佃煮博士は引っ張られてしまう。角を曲がると、網の中身はいつの間にか警官に。「どうもすいませんでした」と逃げ出す佃煮博士。

 佃煮博士が落とし穴を掘っている。また「ランラランララン」とモスガが。モスガは穴の上をそのまま歩いて行ってしまう。あれ?と佃煮博士がモスガの真似をして唄いながら穴の上に乗っかると、中へ落っこちる。

 今度は岩陰でパチンコを構える佃煮博士。飛ばした岩がモスガを直撃するも、モスガは唄って平気そう。佃煮博士が試しに岩で自分を殴ると、のびてしまう。

 佃煮博士がダイナマイトを仕掛けたところに「いい風だなあ」とモスガが。モスガがダイナマイトを持つが、導火線の火は何故か佃煮博士のほうへ向かっていき爆発。

 

 ぼろぼろの佃煮博士が帰宅。

佃煮博士「畜生、この仇はひと眠りしてから考えましょ」

 

 タバコ屋で、赤電話をかける佃煮博士。

電話の声A「学年と名前を大きな声で」

佃煮博士「佃煮博士。えっとね、大人です」

電話の声A「はい、佃煮くん。どんな相談ですか」

佃煮博士「うんとね、根本さんちのモスガを、えっとね、やっつける方法を、お、教えてください」

電話の声A「はい、それじゃ無着先生にお訊きしましょうね」

電話の声B「あのね、佃煮くん。モスガというのはね」

 

 根本家を、髪を撫でつけて紳士に化けた佃煮博士が訪れて「突然あれですけど、これをどうぞ」とお土産を差し出す。

 食卓でカミタマンがぶどうを食していると、パパ(石井愃一)とママ(大橋恵里子)はお土産を奪い合う。

カミタマン「誰?」

 パパは奪い合いながら「モスガを養子にくれって」。

 パパからお土産を奪い取ったママが「あたしはいい話だと思うわ」。

パパ「見たところお金持ちふうだし、これでモスガも幸せになれる」

カミタマン「何言ってんの、ふたりとも! だいたいあの人」

 カミタマンは「こら!」と玄関へ。

佃煮博士「佃煮じゃありません、佃煮じゃ」

カミタマン「でも、見れば見るほど」

 変顔をする佃煮博士。

パパ「カミタマン、いいじゃないか。例えその人が佃煮博士だったとしても」

ママ「そうよ。せっかくこうやってお菓子持ってきてくれたんだし、モスガ養子にやっちゃいましょうよ」

 もぐもぐ食べるパパとママ。

佃煮博士「何とぞ、モスガくんを私の養子に」

カミタマン「モスガくんを養子にしてどうする気だ?」

佃煮博士「もちろん佃煮に」

 

 佃煮博士は、モスガにみりんをかけて鍋で煮るさまを思い浮かべる。

モスガ「煮立ってきたー」

 

 不気味な笑みを浮かべる佃煮博士。いつもの髪型に戻っている。

カミタマン「やっぱり! この野郎」

 「帰れ帰れ」と追い出される佃煮博士。

 

 「ナンデモテレビ相談室」のスタジオで泣く佃煮博士。アナウンサー(大林隆介)が言う。

アナウンサー「じゃああなたは根本さんちのモスガをつかまえないとサラ金が返せないと」

佃煮博士「私がバカだったんです」

アナウンサー「そうみたいですね」

佃煮博士「あら?」

アナウンサー「おまけに奥さんまでゴキブリと駆け落ちしただなんて、ねえ」

 

 夕陽を浴び、「矢切の渡し」に合わせてゴキブリ(奈良光一)と踊る妻(本多知恵子)。

 

佃煮博士「ヨーコ。あのカ、カメラは?」

アナウンサー「あちらですよ」

 佃煮博士は「か、帰ってきてくれ。おれが悪かった」とカメラ目線で叫ぶ。

アナウンサー「すべてモスガをつかまえれば解決するんですね」

佃煮博士「はい」

アナウンサー「じゃ、先生とよく話し合って、いい方法見つけましょ」

 「お願いしますお願いします」とテーブルに頭をこすりつけるようにする佃煮博士。

 

 今度は老婆に化けた佃煮博士が「突然あれなんですけどね」と根本家に現れて果物を差し出す。応対するマリ(林美穂)。

カミタマン「だあれ?」

マリ「それが、モスガにお見合いの話持ってきたおばあさんなんだけど」

 お見合い写真にあるのは、女子高生に化けた佃煮博士!

カミタマン「佃煮博士じゃないか」

マリ「やっぱり」

カミタマン「え、やっぱりって」

マリ「果物もらっちゃったから」

カミタマン「あーマリまで」

 玄関で老婆は「私は佃煮じゃありません!」と強調。怒ったカミタマンは「帰れ化けもの」と追い出す。

 

 「何でばれちゃったのかねえ」と妙に嬉しげに帰って行く佃煮博士。入れ違いにモスガが帰宅。

 

 居間に入ってくるモスガ。

カミタマン「お前がいない間、大変だったんだから」

 佃煮博士がモスガを養子に来たことを聞くと、当然モスガは厭がる。

モスガ「佃煮嫌い!」

カミタマン「大丈夫。養子になんか出さないから」

モスガ「ああよかった。ありがとう」

 頭を下げるモスガ。

カミタマン「2度目なんかおばあさんになって、お前の見合いの話持ってきたんだぞ。な、マリ?」

 モスガはマリに、例のお見合い写真を見せられる。

カミタマン「どう変装したって佃煮博士だってばれちゃうのに、ほら。ひどいだろう?」

 女装した佃煮博士を見るモスガ。

カミタマン「何だそのとろんとした目は?」

モスガ「モスガ、お見合いする…」

カミタマン「えっ!」

 カミタマンとマリは驚愕。

モスガ「この美しい、セーラー服の美女とお見合いしたい」

カミタマン「ひえっ。な、何言ってんの。これは美女じゃなくて佃煮がセーラー服を着ただけじゃない?」

モスガ「ああ、モスガ恋した。100%燃える恋ができそうな気分」

 モスガは「このセーラー服の美女を信じるー」とはばたく。

 

 タバコ屋の前にまた来た佃煮博士。耳の遠いおばさん(山本緑)に近づいて言う。

佃煮博士「どうもありがとう。今度ね、おいしい佃煮持ってきてやっからね」

おばさん「厭らしいね、まったく」

 佃煮博士は電話に出る。

佃煮博士「えっ、モスガがお見合いをしたいって!?」

 その後ろを女の子とネモトマンが通る。

女の子「たしかこのへんに」

ネモトマン「いたの!?」

女の子「あんた、私を信用してないの?」

ネモトマン「いや、そういうわけじゃ」

 女の子は「こっち!」とネモトマンを引っ張っていく。ふたりを思わず見る佃煮博士。

 

 食卓にいるカミタマンとモスガ。

カミタマン「何度言えば判るんだ。このお見合い写真の見事なブスはだな」

モスガ「え、ブスじゃない。ブスじゃないの」

 うふうふと笑うモスガ。

モスガ「お前、妬いてんな」

カミタマン「誰に妬くんだよ!」

モスガ「正直に言え。お前、この美女とお見合いしたいのか?」

カミタマン「誰がこんな」

 怒りそうなモスガを見て、カミタマンは「美女だよ美女。ほんと、うらやましいよ。ああ、妬いちゃった妬いちゃったい」とごまかす。

モスガ「床屋にでも行って、それからお風呂入って、それからお見合いでも行ってくるかー」

 

 床屋で散髪されているモスガ。床屋のおじさん(小池榮)は愛想がいい。

床屋「いやあ、お客さん。来年のジャイアンツはどうなるんだろうね」

モスガ「そうね。そう、ジャイアンツと言えばモスガきょう、お見合いすることになっちゃって」

 とまどうおじさん。

 

 今度は銭湯へ行くモスガ。番台のおばさん(小甲登枝恵)が声をかける。

おばさん「こっち女湯なんですけど」

モスガ「え、いやあごめんごめん。ついモスガね、きょうお見合いするもんだから」

 おばさんは困惑。

 

 「♪ああ私の恋は」とまた唄いながら街をゆくモスガ。カミタマンは見ている。

カミタマン「ばっちり決めちゃって。このままお見合いすれば佃煮博士の罠にかかると言ってるのに、どこまで世話焼かせれば気が済むんだ」

 

 資材置き場へ歩いてきたカミタマンは、モスガを見失う。そこへモスガの糸が飛んできて、カミタマンは絡め取られる。

モスガ「悪いけど、お見合いの邪魔をしないでくれ」

 「あーれー」と縛られて動けないカミタマン。 

 噴水の横で、女装した佃煮博士がいら立ちながらモスガを待っていた。

佃煮博士「ったく遅いな、モスガの奴。何やってんだ。せっかくつくった “自動佃煮機” の電池がなくなっちゃうじゃねえか」

 横には怪しげな “自動佃煮機” が。花を持ったモスガが「待った?」と来る。

佃煮博士「初めまして。女子高校生でーす」

 モスガは嬉しげに花を渡す。

モスガ「お茶でも、あの…」

佃煮博士「それより、ここにかけませんか」

 佃煮博士は “自動佃煮機” へ誘導。「はいはい」とモスガは素直にかける。鎖で固定されるモスガ。佃煮博士は悠々とタバコを吸う。

 

 縛られているカミタマンは「ネモトマンを呼んできてくれ」とブーメランを飛ばす。

 

 土手の橋へ来た女の子とネモトマン。連れ回されたネモトマンは疲れ気味。

ネモトマン「お嬢さん、ほんとに謎の宇宙人っているんですか?」

 女の子は「あれ!」と指差す。だがそれは “立入禁止” と書かれた何の変哲もない看板だった。

ネモトマン「え?」

女の子「あの看板が、私を狙う謎の宇宙人よ」

 女の子は「ああこわい!」とネモトマンに強く抱きつく。よろけるネモトマン。

ネモトマン「きみ、ネモトマンになんか恨みでもあるんじゃないの!」

 女の子は「ひどいひどい、そんな言い方ってひどいひどい」とネモトマンを叩いてなじる。するとカミタマンのブーメランが宙を飛んでくる。

ネモトマン「この音は、カミタマンが助けを求めている音だ」

 笑う女の子。

ネモトマン「ちょうどよかった。行かなくっちゃ」

女の子「待って。謎の宇宙人のほうは?」

 ネモトマンは “立入禁止” の看板を引っこ抜くと、女の子をぶん殴る。

女の子「信じられない。美少女が殴られるなんて」

 女の子は卒倒。

ネモトマン「ブーメラン。カミタマンのいるところへ案内してくれ」

 ブーメラン(声:大林隆介)は「ぬあー」と変な声を発出して飛び、ネモトマンも飛び立つ。

 

 縛られているカミタマンのもとへ来るネモトマン。

ネモトマン「話はブーメランから聞いた。お見合いの場所は?」

カミタマン「噴水公園」

ネモトマン「よし、急ごう」

 ネモトマンとカミタマンは飛ぶ。

 

 噴水の前に駆けつけてくるネモトマンとカミタマン。見るとモスガがスカートを振り回しながら、佃煮博士を追いかけていた(佃煮博士のスカートは脱げている)。

 カミタマンは「見ちゃダメ」とネモトマンのヘルメットに手をやる。乱闘する佃煮博士とモスガ。

ネモトマン「心配することなかったみたい」

カミタマン「だな!」 

【感想】

 本作も折り返し地点で、2回目の佃煮博士編。前回の第22話では台所のゴキブリに妻を寝取られた彼の悲しい事情が強烈に描かれたが今回はモスガとの攻防がメイン(何が「秘密指令」なのだか)。冒頭の自宅で踊るシーンから既に悪夢のようなありさまだけれども、女子高生に化けた姿などもなかなかで22話に負けていない(第6話や第24話でのパパの女装に比肩する出来栄え)。

 佃煮博士とモスガの応酬の一方で、それだけでは足りなかったのかネモトマンが女の子に翻弄されるというドラマ?も盛り込まれている。浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)の第20話ではふたつの騒動が並行して描かれて終盤で巧みにリンクするという高等芸があったが、今回は佃煮博士側とネモトマン側との両者に何の関連もない(本作と同年の浦沢脚本『TVオバケてれもんじゃ』〈1985〉の第6話では主人公と敵キャラクターの戦いとラーメン屋の騒ぎとがやはり同時進行で発生し、ほぼ何の関係もなく終わった)。このように発作的に思いつきをつなげていくのがこの時期の浦沢式脚本術で、結局リンクしない今回はいびつで成功しているとは言い難いけれども、ネモトマンのほうの看板落ちは常人の頭からは出てこないようなもので呆気にとられてしまい、あまり不満も湧いてこない。変なことを言い出す美少女は、この次の27話(寺田憲史脚本)でも2週連続で…。

 伸介はセクハラ狙いで変身し、正調ヒーロー物では描かれない打算ぶりをギャグとしてよくぞ描いたと思わせる。巧みに女の子の臀部に触るのには浦沢脚本『激走戦隊カーレンジャー』(1996)の第30話で巨大モンスターに襲われた少年があわよくば女の子にキスしようとする場面が想起された(やはり90年代となると、臀部を触るのは困難だったのかもしれない)。

 作中の「ナンデモテレビ相談室」は、1964年から2008年まで継続したTBSラジオの『全国こども電話相談室』がモデル。「無着先生」と言われるのは、実際に『こども電話相談室』に出演していた無着成恭氏だと思われる。近い時期では『ウルトラマン80』(1980)の第36話「がんばれ!クワガタ越冬隊」に「電話こども相談室」が、映画『ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986)に「子ども電話相談室」が登場しており、この時代にはよくねたにされていたようだが、実際の出演者の名前にまで言及してしまう大胆さは不コメらしい。

 後半では女装した佃煮博士の写真にモスガが惚れてしまい、同様の展開は『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)で今回と同じ浦沢脚本 × 佐伯孚治演出のコンビによる第20話「ゲームセンターの怪人」にもあった。 

 22話は大井利夫演出で、佃煮博士の回想を合成とワンカットの長回しで舞台のように処理していた。一方で今回の佐伯演出は淡々としたトーンが身上で、クレージーな騒動を穏当に描いている。先述の通り佃煮博士のレオタード姿や女装などはインパクトが強いのだけれども、全体として22話ほどの濃厚さがないのは佐伯流であろう(優劣ということではない)。

 第22話では佃煮博士の妻とゴキブリが自宅で踊ったが、今回は駆け落ち先で砂の上のダンスを演じている。

 変な女の子役の小坂光子氏は『巨獣特捜ジャスピオン』(1985)の第43話「アリスが見た不思議の国のサタンゴース」にも出演。

 アナウンサー役は大林隆介氏で、ブーメランの声も担当。不思議コメディーシリーズでは『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の準レギュラーを務め、『うたう!大龍宮城』(1992)の第39話にも出演している。代表作は『機動警察パトレイバー』シリーズであろう。

 その他のキャストは山本緑、小池榮、小甲登枝恵の各氏など東映作品に多数登場する面々。

 佃煮博士が電話しているロケ地は巣鴨信用金庫付近のタバコ屋で、現在は建て変わって営業中。

 ネモトマンが女の子を殴るのは埼玉県和光市の芝宮橋で、第15話でも使われた。

 ラストの乱闘が行われる所沢航空公園の噴水は第7話にも出てくるほか『ペットントン』など多数の作品に登場する。