『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第44話「伸介はできんボーイ」(1986年2月9日放送 脚本:浦沢義雄 監督:近藤杉雄)

【ストーリー】

 卵焼きにかぶりつくカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。伸介(岩瀬威司)ももりもり食べ、パパ(石井愃一)とママ(大橋恵里子)、マリ(林美穂)も朝食を取る。ママに頼まれ、カミタマンは牛乳を取りに行く。

ママ「パパ、伸介、マリ。早くしないと遅刻よ」

 パパとマリは「行ってきます」と出かけるが、伸介は延々と食べている。

ママ「伸介、きょう確かテストの日じゃ?」

伸介「おかわり!」

 

 学校が終わり、横山(末松芳隆)は女子に「うちでパソコンやろう」と迫る。伸介も「お待たせ!」と来る。だがすぐに平手打ちされてしまうのだった。

伸介「じゃあ1時にいつもんとこでな」

横山「ああ」

 

 根本家の庭では、ママが「♪花咲く娘たちは」と歌いながら水やりをする。その間に「キョロキョロ、ウシシシ」とカミタマンは冷蔵庫を物色。

カミタマン「やっぱりきのうのパパのお土産のおはぎがひとつ残ってると思ってたら、こんなところに」

 カミタマンは「誰にもあげない」と言いながら手を伸ばす。

 庭でママは「♪アンコ椿はー」とひとりで熱唱。伸介が「ただいま」と帰宅すると、ママは節をつけて「お帰りー」。

 伸介がランドセルを置いてすぐ出かけようとするとママが呼び止め、伸介はビクッと固まる。伸介は手裏剣を投げる真似を始め、ママもつられて手裏剣を投げ、その隙に伸介は逃げる。ママははっとして伸介の部屋に駆け込み、でんぐり返りをしてランドセルを開ける。

ママ「18点、45点、28点、39点、45点。ひっどーい」

 ママの顔に青い影が差す。

 

 マリが帰宅すると階段からランドセルが投げ落とされる。「どうしたの?」と伸介の部屋に来たマリは、ママにテストを渡される。

マリ「ふーん……ひどい!」

 倒れるマリ。

ママ「マリ、やめてちょうだい。そういうくさい驚き方するの」

マリ「傷ついた?」

 うなずくママは「ああ」と頭を抱える。マリはママの頭を撫でる。

マリ「お兄ちゃん、昔からこんなに」

ママ「バカじゃなかった」

マリ「いいの? そんな言い切っちゃって」

 ママは「伸介の学力低下は去年の春ごろかな」と床のゴミを拾う。

ママ「5年生になった途端」

マリ「それじゃカミタマンがうちに来たころじゃない?」

ママ「そうなの」

マリ「そう言えばお兄ちゃん、カミタマン来たころから急に性格明るくなって」

ママ「明るくなりすぎて学力低下するってあるかしら?」

マリ「あるみたい。比較的頭のいい子ってみんな暗いもん」

ママ「じゃやっぱり伸介の学力低下の原因はカミタマンに?」

 積んであるマンガ雑誌の前でママとマリは顔を見合わせる。

マリ「ママ、そんなことカミタマンに言っちゃダメよ。カミタマン、傷つくから」

ママ「判ってるわよ。カミタマンはカミタマンなりに、伸介のこと大事にしてくれてるもん」

マリ「そうでしょ」

ママ「さ、お昼何にしようか」

マリ「カツ丼!」

 ママとマリは元気に部屋を出ていく。積んである雑誌が倒れ、その後ろにいたカミタマンが姿を現す。カミタマンは雑誌の後ろでおはぎを食べていたのだった。わなわなとふるえるカミタマン。

カミタマン「もう完全に傷ついてしまった」

 

 道を歩きながらカミタマンは回想する。

 

 はちまきをして、机に向かっている伸介。カミタマンが部屋に入って来る。

カミタマン「伸介、遊びに行こうぜ」

 伸介は激しく首を振る。

 

カミタマン「最初のころは、確かにまだ何となく勉強しなくちゃいけないみたいな気持ち、あったのに。最近じゃ」

 

 はちまきをして、机に向かっているカミタマン。「カミタマン、遊ぼう!」と伸介の声がしてカミタマンが振り返ると、ロックスターのような伸介が。

伸介「ヘイ、カミタマン。遊びに行こうぜ!」

 

 「責任感じちゃうなあ」とカミタマンが歩いてくると石段に伸介が寝そべっている。伸介は横山と待ち合わせ中。

カミタマン「遊ぶのもいいが、もう少し勉強したほうが」

伸介「ふん」

カミタマン「カミタマンもほんとはこんなこと言いたくないんだけど。あのな、昔、薪をしょって一生懸命勉強した力道山という偉い人がいて。知ってるか、伸介?」

伸介「カミタマン。お前、おれに説教する気?」

 伸介はぎろりとカミタマンを見る。

カミタマン「伸介、よせ。そういう目つきでカミタマンを見るのは」

 

 横山は「にんじん、大根、豚肉。母ちゃん、いったい何つくるつもりだろう?」と買い物帰り。茂みから伸介が「わっ」と現れ、横山は驚いて転ぶ。

伸介「イッヒッヒッヒッヒ」

横山「イッヒッヒッヒじゃないって。伸介、驚かすなよお」

伸介「お前が悪いんだろ、約束の時間に来ないから」

横山「しょうがないだろ、お使い頼まれちゃったんだから」

伸介「おれなんか、お前のせいでカミタマンに」

 伸介は顔をしかめる。

横山「なんかあったの?」

 伸介は横山の首を締め上げる。

横山「伸介、落ち着いて」

 

 甘味処でおしるこを「うめえ」と食べる伸介。

横山「どうだ、伸介。おしるこ食ったら少しは落ち着いたか?」

伸介「ああ!」

横山「何かあったの?」

伸介「カミタマンの奴、突然おれに勉強しろだなんて」

横山「ウッソー」

伸介「だろ? どうしておれが勉強しなくちゃいけないんだよ」

横山「あいつ、何年神さまやってんの。神さまが勉強しろなんて。神さまなら勉強しなくても頭よくさせてやる、これぐらい言えなくちゃ」

伸介「だろ!」

横山「おれ、頭きた。勉強しろなんて。学校の先生とおんなじじゃないの。ほんと、頭にきた」

 横山は腕を鳴らす。

横山「カミタマンは死んでいる」

 横山は「だあ」とテーブルにチョップし、伸介は止める。

横山「離せよ」

 

 伸介は横山に鍋焼きうどんをおごる。恍惚の表情を浮かべる横山。

伸介「どうだ、横山?  鍋焼きうどん食べたら、少しは落ち着いたか?」

横山「うん!」

 うどん屋から出てくる伸介と横山。

伸介「じゃ、うちで待ってるから」

 駆けて行く伸介。

横山「なんとなくおしるこ1杯で鍋焼きうどん1杯ごちそうになった気分」

 そこへカミタマンが歩いて来る。

カミタマン「大体、伸介の成績が下がったのはもともとできないから。そうだよ、それをカミタマンのせいにするなんてもう。ああ、もう大人って嫌い」

 「やだやだやだ」と怒るカミタマンに横山は「何となくもう1杯鍋焼きうどんが食べられそう」。横山はカミタマンを抱えると甘味処へ入って行く。

 

 店でおしるこを「うめえ」と食べるカミタマン。

横山「どうだ、カミタマン。おしるこ食ったら少しは落ち着いたか?」

 カミタマンは「うーん」。

横山「よーし、今度はおれが落ち着かない番だ」

 

 カミタマンは横山に鍋焼きうどんをおごる。また恍惚の表情を浮かべる横山。

カミタマン「どうだ、横山?  鍋焼きうどん食べたら、少しは落ち着いたか?」

横山「うん! いったいなんかあったの?」

 

 食べすぎた横山は「カミタマン、お互いしっかりやっていこうじゃないか」と行ってしまう。

カミタマン「何をしっかりやっていくんだ。横山の奴、鍋焼きうどん食べたかっただけじゃないか」

 そこへマリが「何ぶつぶつ怒ってんの」と声をかける。

 

 公園で話すマリとカミタマン。

マリ「え、カミタマン聞いてしまったの?」

 カミタマンは伸介の成績低迷は自分の責任かと問う。

マリ「責任とか、そういうんじゃなくて」

カミタマン「はっきり言ってほしい」

マリ「言うわよ」

カミタマン「伸介の学力低下の原因はカミタマン?」

 マリはうなずく。カミタマンは大ショック。マリは「お兄ちゃんがカミタマンと知り合って以来、成績が落ちたのは事実なんだから」と諭す。

カミタマン「どうすれば…」

マリ「お兄ちゃんの成績、上げるしかないでしょ」

 マリは「しばらくはお兄ちゃんと会わないこと。かわいそうだけど、これしかないわ」と告げる。

カミタマン「そんな」

マリ「成績さえ上げれば、すぐ会えるわよ」

カミタマン「その間、カミタマンどこ行けば?」

 マリは「そうね」と一瞬考えて、通りがかった友人に頼む。

 

 居間で電話している伸介は驚く。

伸介「横山、鍋焼きうどん2杯も食べちゃったの!? 横山お前なあ」

 いますぐ行くと電話を切った伸介は「鍋焼き2杯も食べれば腹痛くなるの当たり前だよ」と呆れる。仏壇が目に留まり、伸介は「あれでいいや」とお供えのみかんを取る。

 

 お見舞いに来た伸介は横山にみかんを食べさせる。

伸介「どうだ横山。このみかん、珍しい味するだろう?」

 匂いを嗅いだ横山は「なんか線香くさいって言うの」。

伸介「それを言うなら香ばしいって言ってくれよ」

横山「香ばしいみかん。本当に珍しいな」

伸介「だろ? 判ってくれりゃあいいんだよ。でもどうして鍋焼き2杯も食べたんだ?」

横山「それがさ。そうそう、お前んちのおばさん、お前の成績下がったの、カミタマンのせいにしちゃったんだって」

 えっと驚く伸介。

 

 走ってくる伸介。

伸介「それでカミタマンの奴、おれに少しは勉強しろなんて」

 

 帰宅した伸介はママに抗議する。

ママ「カミタマンと知り合って成績落ちたの事実じゃない?」

 伸介はテーブルに乗る。

伸介「それはおれが努力しないから」

 ママもテーブルに乗る。

ママ「カミタマンがいると努力できないんじゃないの!?」

 伸介は台をテーブルの上に載せ、その上に乗っかる。

伸介「何でもカミタマンのせいにするのはよくないよ!」

ママ「どうして?」

伸介「だってカミタマンはおれの友だちだもん。友だちの悪口言われちゃ」

ママ「成績が悪くなる友だちならいないほうが」

 マリが来て、脚立をテーブルに載せ、その上に乗っかる。

マリ「お兄ちゃん、カミタマンの気持ちも少しは」

伸介「カミタマンの気持ち?」

マリ「カミタマン、お兄ちゃんのこと思って、成績上がるまで帰って来ないって。あたしの友だちのキョウコの家で働くって」

 

 伸介は焼肉屋に向かう。

マリの声「キョウコんち、焼肉屋さんなの」

 カミタマンは屋外で「ごしごしごし」とコンロの掃除をしていた。

カミタマン「焼肉屋さんの油はひでえなあ。ごしごしごしごし」

 駆けてきた伸介。

伸介「やめろ、カミタマン」

 伸介はカミタマンをつかむが、カミタマンは振り払う。

伸介「だめだよ、そんなの。おれのためにだめだよ」

カミタマン「伸介、カミタマンはどこにも行かない。伸介、約束してくれ。一生懸命勉強して、カミタマンを迎えに来てくれることを。カミタマンはそれまで、この焼肉屋さんで頑張る」

伸介「カミタマン、そんなのやだよ。いっしょに帰ろう」

カミタマン「いけない、伸介」

 伸介は「こうなったらネモトマンになって」と木槌を取ろうとするので、カミタマンは伸介を平手打ち。落ち葉がはらはらと舞う。

カミタマン「伸介…」

 

 夕暮れの空を見上げるカミタマンと伸介。

カミタマン「伸介。おれたち、ちょっと甘えてたみたい」

伸介「ああ、そうみたい。特におれは」

カミタマン「いや、伸介だけじゃなくてカミタマンも伸介に甘えていたんだ」

伸介「カミタマン。おれ、成績上がると思う?」

カミタマン「ああ、勉強さえすればな」

伸介「カミタマン。おれ、やってみる」

カミタマン「伸介。お前が迎えに来てくれる日を、カミタマンは信じて待ってる」

 カミタマンは「見ろよ伸介、夕焼けが綺麗だぜ」と空を指す。

 

 夜になって鍋料理を囲むパパとママ、マリ。

パパ「それじゃ、カミタマンはしばらくその焼肉屋さんに」

マリ「うん、これもお兄ちゃんのため」

パパ「ちょっとかわいそうな気もするが」

ママ「伸介遊びすぎなんだから、このくらい」

 2階のほうを見る3人。

 

 ストーブの横で猛勉強する伸介。

マリのナレーション「それから1週間、お兄ちゃんの猛勉強がつづいた。そしていよいよきょうが、そのテストの日」

 

 焼肉屋の裏でコンロを洗うカミタマン。

カミタマン「頑張れよ、伸介ー」

 

 校門を「じゃあな」と元気に出ていく伸介。女子をナンパしている横山は伸介を見る。

 

 伸介は走って帰宅すると、すぐに「行ってきます」と出かける。ランドセルからテストを取り出したママは驚く。

ママ「15点、8点、11点、10点! 何よ、前より下がっちゃったじゃないの!」

 

 焼肉屋へ走って行く伸介。

カミタマン「伸介、どうだった?」

伸介「下がった」 

カミタマン「え!」

伸介「おれの成績下がったの、カミタマンのせいじゃなかったんだ」

カミタマン「は?」

伸介「あれだけ勉強して下がったんだもん。カミタマンと遊んでたほうが成績よかったんだもん」

カミタマン「え、どういうこと」

伸介「カミタマンと遊んでたほうが、ひとりで勉強するよりいいってこと!」

カミタマン「うーん。いいのかな、こういう結論の出し方」

 伸介に「いいんだって」と言われて、カミタマンも「それもそうだな」。互いに駆け寄るふたりだった。

【感想】

 伸介とカミタマンの友情が再確認され、まるで最終話のような雰囲気が漂い、本作後半のクライマックスと言うべきエピソード。第40話以降は騒動が収束しない、投げやりな感のある話がつづいており、それはそれで笑えるのだが、今回は伸介とカミタマンの再会によってラストが締まる形になっていて風格すら感じさせる。本作はシリーズの中盤で最も奇抜な怪作が目立ち、それらに比すと40話を過ぎた後半はやや食い足りなさを覚えてしまうけれども、今回は傑出した出来栄えである。

 浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)の第25話「根本君のガールハント」や『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)の第16話「長男はマッチ売りの少女がお好き」など勉学の不振が度々描かれているが、特に今回は伸介の成績下落がメインテーマ。今回において興味深いのは結末に時代性と反時代性とが共在しているように感じられる点で、昨年にカミタマンと出会って以降は伸介の性格が明るくなり、その結果として頭が悪くなったのだと論及される。マリの「比較的頭のいい子ってみんな暗いもん」という台詞など面白いけれども(『魔法少女ちゅうかないぱねま!』〈1989〉の第18話「お兄ちゃん売ります」など、浦沢作品では頭が悪い者=明るいと描かれる)、明るくなった伸介はカミタマンと離れて勉強に励んでもテストの結果はさらに悪くなった。『ペットントン』の第41話「のりもの嫌いのドラキュラ」では「子どもは暗いくらいがちょうどいいんだよ」という台詞があり、浦沢先生が明るさと暗さとのどちらを理想としているかは曖昧ではあるが、少なくとも今回は明るく友情を結ぶことは成績よりも重要であると暗に訴えているかのようで、いかにも明るさや身近な人間関係が重要事項だった80年代を反映していると解釈できる。しかし一方で努力してもテストが悪いのは、どれほど頑張ったところで人間にはそれぞれ限界があり、宿命はままならないという現実認識だとも捉えられよう。本作が制作された1985~86年はバブル経済が加熱する入り口で、あきらめないで徹底して可能性を追うことが奨励される時代の始まりであったが、その趨勢に今回の結末は逆らっているとも言える。同時代的要素を取り込みつつもシニカルな現実了知の眼を失わないのが浦沢作品の面白みである。

 今回は助監督を務めてきた近藤杉雄氏の監督デビュー作。冷蔵庫を物色するカミタマンが冷蔵庫の中から映され、またテストを見て暗然とするママに青い照明が当たり、伸介とママとマリが言い合うシーンでは3人が発言する度にテーブルの上に上がるなど新人監督らしい?力の入った演出が見られる。近藤氏は、不コメでは本作の後に『もりもりぼっくん』(1986)と『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』(1987)にて監督し、『警部補・古畑任三郎』(1994)などの演出補も務めた。

 挿入歌も凝っており、カミタマンが焼肉屋で働く場面では乃生佳之「だいじょうぶマイ・フレンド」が流れ、伸介とカミタマンの友愛を象徴すると思われる。終盤では中村あゆみ「翼の折れたエンジェル」が流れ、「少しずつ ため息おぼえた Eighteen」の部分でママがテストの悪さに憤激し、「もし俺がヒーローだったら悲しみを近づけやしないのに」の件りではテストの成績は悪くなってもカミタマンにまた会えることになった伸介が嬉しげにジャンプし、意識したのかは不明だけれども歌詞と画面のシンクロぶりに唸る。

 横山と伸介のコントも面白く、『北斗の拳』(1984)のねたもある。

 伸介のロックスターのような衣装は『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第26話「アイドルDJ!玉三郎」でも着用された。

 伸介と横山、カミタマンが食べるのは練馬区光が丘のゆりの木商店街の店で、同商店街は『ネムリン』や『うたう!大龍宮城』(1992)、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)などでも使われた。

 焼肉屋の外観は安楽亭の、かつて練馬区内で営業していた店舗。