『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第25話「扇風機はひとりぼっち」(1985年9月29日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

 カミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)と伸介(岩瀬威司)は「45、46、47」と数えながら入浴。モスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)は居間で寝そべって「やったやった」とナイター中継を見ている。するとママ(大橋恵里子)がモスガを鍋で叩く。ママとパパ(石井愃一)は駅前のカラオケスナックに行くという。

パパ「その間にこの鍋のでこぼこ、直しておきなさい」

 パパは鍋を放る。ふたりは「銀座の恋の物語」を唄いながら行く。

モスガ「ターコ」

 パパとママが戻って来る。

パパ「なんか言ったか!?」

 

 モスガは修理のためにトンカチをさがしていて、脱衣所でカミタマンの木槌を見つけて「トンカチだぞー」。

 伸介とカミタマンは9999まで数えて「おまけのおまけのきしゃポッポポーとなったら あがりましょポッポー」と出てくる。

カミタマン「ダイエットできたかしら…」

 見ると木槌がない。

 

 モスガは鍋を木槌で叩いて修理していた。カミタマンが来る。

カミタマン「カミタマンの木槌は鍋のでこぼこを直すためにあるんじゃない。カミタマンのこの木槌は…そうモスガ、お前の頭を叩くためだ!」 

 カミタマンは「こうしてくれるわ」とモスガを叩く。モスガは「痛い」と庭に出て「死んじゃうわ」と昇天。

カミタマン「バーカ、勝手に死んだまえ」

 星空に浮かび上がるモスガ。

 

 寝ている伸介とカミタマン。

伸介「いいのか?」

カミタマン「何が?」

伸介「モスガ」

カミタマン「ああ、あしたになればけろりと帰って来るだろう」

伸介「つめたいんだな」

カミタマン「あたたかくすればつけあがる。それがモスガの欠点なんだ」

伸介「へえ」

 パパとママの「ただいま!」「お土産買ってきたぞ」という声が。慌てて電気を消す伸介。

 

 テーブルで上機嫌のパパとママ。

パパ「伸介、カミタマン。お寿司買ってきたぞ」

ママ「早く来て食べなさい」

 寿司を食べようとするパパとママは「昭和枯れすすき」を歌い出す。

 

 伸介とカミタマンが寝ている部屋に歌声が聞こえてくる。

伸介「やめてくれないかな。回る回るの唐草寿司で釣って、パパとママの下手な歌聞かせたがるの」

 うるささにふたりは布団に潜り込む。

 

 翌朝、モスガは畑で目ざめる。

モスガ「アーサー!!」

 畑にさつまいもがあり、モスガは「わーい、いもだ。いもがいっぱいだぞ」と勝手に収穫。

 

 横山(末松芳隆)が頭を抱えて「秋、秋」 と言いながら歩いて来る。

横山「秋の空、ああ秋の空」

 すると空からさつまいもが落下。横山は下敷きに。舞い降りるモスガ。

モスガ「悪い悪い、つい手から落っこっちゃって。ごめんね」

横山「モスガ、お前このさつまいもどうするつもり?」

モスガ「カミタマンにプレゼントして機嫌を直してもらうつもり」

 横山は焼きいもにしたほうがいいと提案し、焚き火を始める。

横山「お前、本当に知らなかったの。最近の神さまは虚弱体質で、生より焼いたほうがいいっての」

 モスガは「まさか。ほんとかなあ」と疑う。

横山「キョウコ、立派な焼きいもになるんだよ」

モスガ「ん?」

 さつまいもを火に放り込む横山。

横山「チエミ、おじさんは待っているよ」

モスガ「え?」

 横山は唾を飲み込む。

横山「ユキ、おじさんに任せなさい!」

 引いているモスガ。

横山「うちなんか神さまにあげるお供え、マグロの刺身まで塩焼きにしているんだ」

 横山はモスガの焼きいもに「味見してやろうか?」。モスガは断る。

横山「何すんだ! おれのキョウコに何すんだ!」

 横山は豹変。驚くモスガ。

横山「チエミ、ユキ。いま助けてやるからな」

 すると地震が。

横山「これが死んだおばあちゃんに聞いたことのある関東大震災?」

 揺れが収まると落ち葉の中から風が吹き上がり、扇風機が飛び出す。扇風機は強風を起こし、横山とモスガを直撃。

横山「さみー」

モスガ「寒いよ」

 

 居間でカミタマンは「ネモトマンはそんな仕事できません」と電話で固辞。雑誌を読んでいる伸介。

伸介「どうしたの。何ができないっていうの?」

カミタマン「ネモトマンを引っ越しの手伝いに貸せって言うんだ」

伸介「ええっ、正義のスーパーヒーローのネモトマンを引っ越しに!?」

カミタマン「ああ」

伸介「全く庶民はいったい何を考えているんだ」

カミタマン「きっとネモトマンとアート引越センターは同じだと思ってんだ」

伸介「よし、0123に抗議してやる」

 モスガが激しくくしゃみをしながら帰宅。

モスガ「扇風機、扇風機に襲われて」

カミタマン「何、扇風機?」

モスガ「ああ、熱も出てきた」

 ダウンするモスガ。カミタマンが「悪い夢でも見たんじゃないの」と言うと「夢じゃない、夢じゃない」。ふらふらの横山が現れる。

横山「ひょうたん池で扇風機が。ひょうたん池で扇風機が」

 横山は「ああ熱が出てきた。頭痛え。死にそうだ」と庭へ去って行く。

伸介「どうやらこれは」

カミタマン「ああ、正義のスーパーヒーローの出動だ!」

 カミタマンは伸介をネモトマンに変身させる。

 

 ネモトマン(岩瀬威司)が「横山が言うには確かこのへん…」と見ると、池のほとりにコートの男が立っている。

ネモトマン「あのう、ちょっとお聞きしますがこのへんに扇風機の姿を」

 男は振り向き、コートを脱ぎ捨てる。それは扇風機だった。驚愕するネモトマン。

 

 ネモトマンは咳き込みながら帰宅し、「頭痛え」とダウン。その横でモスガが寝込んでいる。カミタマンは自分の額をネモトマンに押し当てる。

カミタマン「微熱ありか。ネモトマン、お前もか。よーし」

 

 池に来たカミタマン。

カミタマン「こら、扇風機! 何の恨みがあってうちのモスガやネモトマンに風邪をひかせた?」

 カミタマンは扇風機に勝負を挑む。すると茂みから扇風機が浮上し、また強風を起こす。一瞬風が止まった隙に、カミタマンは「いまだ」。しかしまた強風を繰り出す扇風機にカミタマンは逃亡。扇風機は追いかけてきて、颶風が吹き荒れる。追いつめられるカミタマン。

カミタマン「このままではカミタマンまで風邪をひいてしまう」

 扇風機の風力の最も強い「3」のボタンがかちゃっと押され、さらなる強風が。

カミタマン「さっきよりすげえや」

 襲い来る扇風機。

カミタマン「もうダメだ」

 だが突進してきた扇風機は自分で鉄柱にぶつかってしまう。

 

 ネモトマンはうどんにお湯を注ぐ。

ネモトマン「これがさっき宅急便で届いた、瞬間インスタント鍋焼きうどんだぞ」

モスガ「便利な世の中になったもんだね」

 ネモトマンとモスガは氷嚢をつけて「いただきまーす」。

 

 扇風機は急に停止。カミタマンが様子を見て帰ろうとすると「負けた」との声が。扇風機(声:阿部渡)が「ああ負けた負けた」とひっくり返る。驚くカミタマン。

扇風機「さあ分解しろ分解しろ。おれの負けだよ。さあ好きなように分解しろっつってんだよ、もう」

 扇風機は「お前が分解しないなら自分で分解してやる」「これでもか」とあちこちにぶつかる。カミタマンはブーメランを発射し、扇風機はのびた。

 

 食べているモスガとネモトマン。

ネモトマン「やっぱり風邪には鍋焼きうどんがいちばん」

モスガ「んだんだ」

 マリ(林美穂)が部屋に入ってくる。

マリ「あ、私の瞬間インスタント鍋焼きうどん!」

 

 カミタマンは扇風機の手当てをしていた。

カミタマン「じゃあ秋になって扇風機がもう使われないから地面の中で冬眠していたところを、モスガのたき火で起こされたというわけか。いやあ、それはすまなかった。モスガに代わって、このカミタマンが謝る。ごめん」

扇風機「いやいや、いいんです。いいんです」

 責任を取って、カミタマンは「ねーむれねーむれ」と子守唄を歌う 。

扇風機「あのね、もしもし」

カミタマン「あ、子守唄ダメ? じゃ仕方がない」

 カミタマンは「カーミタマンが1匹。カーミタマンが2匹。カーミタマンが3匹」とジャンプ。扇風機は「いい加減にしてくれ!」。

 

 家ではほうきを持ったマリがネモトマンとモスガを追い回して「よくも食べたわね」としばく。

 

カミタマン「でもちょっとおかしいなあ。普通、扇風機って使われなくなると押し入れにしまわれるはずだけど、どうしてきみは冬眠しなくちゃいけないんだ?」

 泣き出す扇風機。

カミタマン「あ、なんか悪いこと言っちゃったかな」

扇風機「いや、いいんだ。実はおれ、クーラーに負けて棄てられちゃったんだ」

 驚くカミタマン。

扇風機「夏なんかどぅわいっきらいだい!」

 カミタマンは言葉を失う。

扇風機「畜生、クーラーばっかりかわいがりやがって」

 

 女性(柴田理恵)が「クーラーちゃん、涼しい」とクーラーに抱きつく。扇風機が「奥さん、どうですか。涼しいでしょ」と言うと、女性は「何よ、お前なんか」と扇風機を蹴り倒す。

扇風機「ひどい」

 

 扇風機は悲しげに述懐する。

扇風機「そりゃあ、扇風機の風よりクーラーの風のほうが気持ちいいことは。でも、でもよ、おれだってクーラーの風に負けないように」

 

 扇風機は工夫したのか、吹き流しをつけている。

扇風機「どう、奥さん。涼しい?」

 女性は「ん、ふざけんじゃないわよ」と扇風機を蹴り倒す。

扇風機「あっ、また蹴る。おればっかり蹴るんだもん」

女性「うるさいね、厭なら出ていけ。お前なんかいらないんだから出ていけ、ほんとに」

扇風機「畜生、出ていくよ!」

 クーラー(声:西尾徳)は嘲笑う。

クーラー「くーら面白いや。あははは」

 

 カミタマンは泣く。

カミタマン「ひどすぎる。扇風機、お前の気持ちはよーく、あら?」

 扇風機の姿はない。

 

 扇風機は「よくもクーラー、おれのことを」と布につつまれた物体に暴行する。

扇風機「どうだ、まいったか。はあはあ」

 カミタマンは止めに入る。

扇風機「止めないでくれ、カミタマン。おれはこのクーラーにバカにされたんだ」

カミタマン「やめろ、やめろって。これはクーラーじゃないぞ」

扇風機「何!?」

 カミタマンが布を取ると洗濯機だった。扇風機は「あちゃー」と倒れ、バラバラになってしまう。

 

 カミタマンは資材置き場で扇風機を組み立て直した。

カミタマン「できた!」

 扇風機は「どうしてお前ってそんなに優しいんだ」と問いかける。

カミタマン「どうしてって…」

扇風機「いまのおれには、その優しさが身に応える」

 扇風機は「ひとりにさせてくれって言ってんだ!」。カミタマンは「甘えるな」と平手打ち。

扇風機「久しぶりだ」

カミタマン「え?」

扇風機「死んだ親父によく叩かれたっけ」

 

 夕陽の差し込む部屋で旧式の扇風機(声:篠原大作)が息子の扇風機を殴る。

旧式の扇風機「センキチの馬鹿野郎」

扇風機「父ちゃん!」

 

カミタマン「扇風機…」

扇風機「おれは子どもじゃねえよ。ひとりにさせてくれ」

カミタマン「判った」

 カミタマンは歩み去って行く。

扇風機「すまねえ、カミタマン」

 がくんと首を垂れる扇風機。

 

 道を歩くカミタマンは「なんか気がかり…」と引き返す。

 カミタマンが「わっせわっせ」とさっきの資材置き場に戻ると扇風機はいない。

 扇風機はガソリンスタンドでやけ油を注入していた。店員(吉村よう)は「お客さん、もうそのくらいで」と諌める。

扇風機「うるせえな、お前。油、油もっと飲ませろ」

 カミタマンが「扇風機」と来る。

カミタマン「すみません、ちょっと油飲みすぎちゃって」

 

 扇風機は、次は工場で「もっと飲ませろ」と潤滑油を飲んでいた。おじさん(木村修)は「これで終わりだよ」。カミタマンが来ると、扇風機は逃げる。

 

 今度は酒屋で、扇風機は「サラダ油だって何だっていい」と油を要求。酒屋は「うちは酒屋なんですけどね」と困惑。

カミタマン「お前って奴は」

 

 公園に扇風機を引っ張ってくるカミタマン。

扇風機「放せよ、放せったら」

 カミタマンは「許せない。分解してやる」とスパナを出し、扇風機に近づく。

扇風機「おい。やめろ、やめろ。やめてくれえ!!」

 

 夕食をとっているパパとママ、伸介、マリ、モスガ。

ママ「それじゃその扇風機、カミタマンが分解しちゃったの?」

カミタマン「いやあ、ただあいつ扇風機として根性なかったから、ちょっと組み立て直して」

 

 扇風機は改造され、シャボン玉を宙に発生させる機械になっていた。

扇風機「おれはこれからは立派なシャボン玉製作機になってみせる。カミタマン、見ていてくれ!」

 夕空に無数のシャボン玉が浮かぶのだった。

【感想】

 第19話につづく本作2度目の無生物路線は、居場所を追われた扇風機が苦悩して荒れ、最終的に第2の人生を歩むまでが描かれる。浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは、前作『どきんちょ!ネムリン』(1984)の第10話「バス停くん田舎へ帰る」でバス停が田舎に行って案山子に転身し、第24話「燃えろ!タコ焼きの青春」で道を踏み外してタコが苦難を乗り越えて受験に合格する。バス停もタコも苦難を経て再出発を果たすハッピーエンドを迎えたわけだが、今回の扇風機が苦境に陥って最後はシャボン玉メーカーになって再生するというプロットは『ネムリン』の2本を踏襲している。有り体に言えば焼き直しだけれども、一方で安定感は随一。扇風機の声には『ネムリン』でタコ役を熱演した阿部渡氏が再起用されており、阿部氏の演技は文句なしだが、そのキャスティングに今回のセルフリメイク的なありようが象徴されている。

 クーラーが「新・三種の神器」と言われたのは1960年代で、本作の約10年前の1976年に発表された『ドラえもん』の「風神さわぎ」では「ことしはじめてクーラー買ってさ、めずらしくて昼も夜もつけっぱなしで」との台詞がある(『藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん6』〈小学館〉)。それから月日は流れて本作の時点ではクーラーは生活家電としてとっくに普及はしていたであろうけれども、まだ21世紀のような酷暑の時代は到来しておらず、クーラーがないと熱中症で命の危険につながるわけではない。笑いのねたにするにはころ合いだったとも言えよう。

 『ネムリン』第10話ではバス停が自殺未遂し、第24話ではタコが暴力団に入ったり夜の遊びに明け暮れたりしている。今回はどうするのかと思ったらクーラーに地位を奪われた扇風機がやけ酒ならぬやけ油を飲んで荒れるという展開で唸った。不コメでは『うたう!大龍宮城』(1992)の第45話「スズメダイ」ではコントラバスがやけ酒をあおる場面がある。

 序盤でパパとママが「銀座の恋の物語」をデュエットしていたが、この曲は『ペットントン』(1983)の第20話「根本君はスーパースター」でも唄われている。パパとママが夜遅くに帰宅するくだりでマリが全く出てこないのが気になるけれども、いつも早めに就寝しているゆえかもしれない。

 横山は焼きいもにキョウコ、チエミ、ユキと当時の人気アイドルの名前をつけて「おれのキョウコに何すんだ」などとわめき、イマジナリーガールフレンドのようで不気味(モスガ役の高木政人氏による呆れる動きも上手い)。『ペットントン』の第36話「豆腐がおこった日」でも行商の豆腐売りが豆腐にキミヒコ、ジロウ、エリカなどと名づけていた。モスガやペットントンのような怪獣や宇宙生物がクレージーな人間に振り回される構図は、特に80年代前半の不コメのお家芸である。

 横山は「死んだおばあちゃん」と言っているが、彼の大正生まれの祖母は第16話に登場した。あの後で死去した可能性もあるけれども、おそらくもうひとりの祖母を指していると想像される。

ペットントン

 扇風機がカミタマンを追いつめるシーンは、扇風機と追い込まれて狼狽するカミタマンとそれぞれの操演に感嘆。坂本太郎演出の映像設計も上手く、両者の攻防を見ていると『七人の侍』(1954)のクライマックスの死闘を何となく想起した。

 扇風機の声は先述の通り、『ネムリン』の第24話でタコ焼きを演じた阿部渡氏。東映特撮の仕事ではタコ焼き役と今回の扇風機役はベストワークだと言えよう。他に『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)の白虎真剣役などもある。

 クーラーの声は第24話第30話にも登場する西尾徳氏。

 扇風機の父の声は第18話にも出演した篠原大作氏。

 扇風機を虐待する女性は不コメ常連の柴田理恵氏。第9話第30話ではラーメン屋役で、第14話と今回はそれぞれ別の役を演じており、今回は柴田氏の登場にびっくりした。

 ガソリンスタンド店員役の吉村よう氏はテレビ『ついでにとんちんかん』(1987)などで声優として活躍。今回の他に不コメには『ネムリン』の第3話「不思議なブローチ」、『もりもりぼっくん』(1986)の第34話など俳優として出演した。

 工場のおじさん役の木村修氏は第3話第15話第27話にもそれぞれ別の役で出演。 

七人の侍

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