『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第23話「届け!モスガの愛の歌」(1985年9月15日放送 脚本:浦沢義雄 監督:大井利夫)

【ストーリー】

 居間でテレビゲームをするカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)。失敗し、伸介(岩瀬威司)は「下手!」。

カミタマン「うるさいな、もう」

 つづいて伸介がやり、カミタマンは「いいぞ」。そこへ野球少年が来て、ボールがフェンスに引っかかったいう。

伸介「ネモトマンに用? ネモトマンはいまちょっと」

野球少年「いえ、モスガでいいんです」

伸介「モスガー!」

 モスガ(声:矢尾一樹 スーツアクター:高木政人)が来る。

カミタマン「仕事だって」

 モスガは快く行く。

カミタマン「ほら、ネモトマン。よかったな?」

伸介「うん!」

 

 モスガはフェンスに上がってボールを取り、野球少年たちは「モスガはぼくらのアイドルだ」「ばんざーい」。微笑むモスガ。

 

 伸介とカミタマンはまだゲームに興じていた。モスガが「こんなにプレゼントもらっちゃっていいのかな」とプレゼントをたくさん抱えて帰宅。そこへ電話がかかってきて、ゲームに夢中の伸介は「ああもう!」と出る。

伸介「え、悪い奴と戦ってるからすぐ来てくれ? 2丁目の路地で? あの、ネモトマンはいまちょっと。え、モスガでいいの?」

 伸介は「モスガ、仕事!」と呼び、場所のメモを渡す。

カミタマン「いいのか?」

伸介「何が?」

カミタマン「みんながモスガモスガって」

伸介「いいだろ。みんなモスガに来てほしいって言うんだから」

 

 空き地で札束の入ったケースを前に警官(坂口進也)と泥棒(田中耕二)が格闘していた。「お待たせいたしました」とモスガが現れる。

泥棒「早く来てくんなきゃ困るよ、まったく!」

モスガ「すいません」

 泥棒は「遅いんだから」とモスガにタッチ。

泥棒「おれちょっとトイレ行ってくるから。その間、ふたりで頼む」

 泥棒は行ってしまう。

 

 モスガは「こんなにもらっちゃっていいのかな」と札束を4つ持って嬉しげに帰宅。伸介はまだゲーム中でカミタマンはテーブルでうたた寝。「電報です!」との声が。

 カミタマンは「トツゼンセンソウニナツタ。タスケテクレ。」 と読み上げる。伸介は驚く。

伸介「遂にネモトマンにも戦争をやめさせる依頼が来たか」

カミタマン「いや、モスガにだ」

 伸介はがっくり。

 

 戦場でモスガは「戦争反対」のプラカードを持って「戦争をやめましょう」と呼びかける。激しく戦っていた兵士たちは武器よさらばとばかりに銃を棄てる。戦争は終わり、兵士たちは抱き合って喜び、モスガは「わっしょいわっしょい」と胴上げされる。

 

 根本家の食卓では、伸介は「どいつもこいつもモスガモスガって」と不機嫌に。

伸介「そう言われてみると、このごろあんまり事件らしい事件もないしな」

 カミタマンは「大丈夫だって。ネモトマンはもうみんなの心の中に深ーく」となだめるが、伸介の姿がない。

 

 公園のベンチで、男の子ふたりがリカちゃん人形で盛り上がっていた。

男の子A「リカちゃん人形に今度、リカちゃんキッチンママタイムが出たんだぞ」

男の子B「ほんと? おれも買おう」

 伸介が来て人形を勝手に取り「リカちゃんは素晴らしい」「やっぱりいちばんはネモトマンじゃない?」と口を挟む。迷惑そうににらむ男の子。

 

 やはり公園で女の子ふたりが歩いていた。

女の子A「ああ、腹減った」

女の子B「おれカツ丼食いてえ」

 伸介が来て「カツ丼はうまいに決まってる。でもネモトマンがいちばん!」。変な目で見る女の子。

 

 伸介は老人に「ムシムシ コロコロ ネモトマン!」と唱える。

老人「ムシムシ コロコロ ネモトマン!」

 女性が来て「うちのおじいちゃんに変なこと教えないでちょうだい」。

 

 居間に戻った伸介。

カミタマン「え、町中ネモトマンの噂でいっぱい?」

伸介「うん、やっぱりネモトマンはみんなの心の中に深く刻み込まれているんだなあ」

カミタマン「ほんとかな」

 伸介は激しく訴える。

伸介「おれが嘘ついたことあるか!?」

カミタマン「ある!」

 「カミタマン」と黒服の老女が飛び込んでくる。

カミタマン「何だお前は?」

 おばあさんのコスプレをしたとらばる聖子(小出綾女)だった。

聖子「魔法使いのおばあさんにとらばって、電車に乗ってシルバーシートに座ってたら」

 

 「極楽、極楽」とシルバーシートに悠然と座る聖子。女子高生たちが来て「ばあさんどけ」と聖子の胸ぐらを掴んで突き飛ばす。

 

 聖子は不良女子高生を倒すために、ネモトマンの力を借りたいという。

聖子「こういうことはネモトマンでなくっちゃ」

 カミタマンが「よかったな伸介」と言うと伸介は嬉し泣き。聖子は「どうしたの?」と驚く。

 カミタマンは伸介を2階でネモトマン(岩瀬威司)に変身させる。

カミタマン「ゆけ、ネモトマン。正義がきみを待っている」

 

 聖子の前にネモトマンが飛んできて「聖子くん、さあ行こう」と引っ張る。

聖子「それはいいの、モスガにやってもらうから。ネモトマン、早くモスがをさがして来てよ」

 冷蔵庫にぶつかってダウンするネモトマン。

カミタマン「だいじょぶか、ネモトマン」

 ネモトマンは「ひとりにしといてくれ」と行ってしまう。不思議そうな聖子にカミタマンは「聖子のバカ!」。

 街をさまようネモトマン。公園で男子小学生(値賀忠士)が女子小学生(矢野方子)にバットで殴られていた。男子小学生は「助けてくれ、ネモトマン」と叫ぶが、ネモトマンは行ってしまう。

 

 同じく公園で男性(小坂井秀行)が女性(水谷優子)にいじめられていた。男性は「ネモトマン、助けてよ」としがみつくが、やはりネモトマンは行ってしまう。

女性「聞きなさいって言ってるでしょ」

男性「うわー」

 ネモトマンは茫然と坂を転がり落ち、「やだやだやだ」と走り去る。その後ろでおじいさん(高杉哲平)がおばあさん(飯田テル子)に引っぱたかれていた。

 

 広場で女子高生はモスガに倒された。「やったやったやった」と喜ぶ聖子。

女子高生「やられた」

 ネモトマンに無視された3人が根本家に抗議に来ていた。

おじいさん「ネモトマンのこと、今度の敬老会でみんなに訴えてやりますよ」

カミタマン「落ち着いて落ち着いて。暴力はいけません」

男性「暴力なんか振るってませんよ」

 カミタマンは「ああ、そうでした」と動揺。

 

 モスガは聖子にお礼のジュースをもらっていた。

 

 「もうやだやだ」とやけになっているネモトマンは木にぶつかりつづける。「やめないか」と止めるカミタマン。

カミタマン「自分の体をいくら痛めつけても気持ちは晴れないんだぞ」

 自信をなくしたネモトマンをカミタマンは励ます。見ていたモスガ。

モスガ「ネモトマン、モスガのためにあんなに悩んでるなんて、知らなかった。知らなかった」

 

 居間に戻ったネモトマンとカミタマン。モスガから電話がかかってくる。

 

 モスガが公衆電話からかけている。

モスガ「助けてくれ、カミタマン。いま、モスガ女子高校生につかまえられて」

 ネモトマンを呼ぶように頼んだモスガは「これでよしと。カモン」。取り巻いていた女子高生たちは「はい」「へい」。

 

 居間で憂鬱そうなネモトマン。

カミタマン「判った判った。じゃあカミタマンもいっしょに行ってやるから」

 

 カミタマンを肩に乗せて、ネモトマンが道を走ってくる。モスガは「来たぞ」。女子高生たちは「はい」と従順。

モスガ「ネモトマン、助けて」

 女子高生たちは「おらおら」とモスガをカバンで叩いてリンチする。モスガは小さい声で「ちゃんと殴れよ」。女子高生は「ごめん」。リンチはモスガの仕組んだ狂言であった。

カミタマン「さあ、行くんだ。ネモトマン」

 暴行芝居はつづく。だがネモトマンは後ずさりして動けない。カミタマンは木槌で布団叩きを出して、ネモトマンを引っぱたく。

ネモトマン「ぎゃー」 

 ネモトマンは女子高生に体当たりして、そのまま茂みに突っ込む。お礼を言うモスガ。

モスガ「ネモトマン、ありがとう。やっぱりネモトマンは正義のスーパーヒーローだ」

 笑うネモトマン。ネモトマンが女子高生に「おい、きみたち」と説教しようとすると、モスガはごまかすために「あとはね、このモスガにおまかせを。わー!」と一喝。女子高生たちは「きゃー」と逃げ出す。

カミタマン「すごいじゃないの」

ネモトマン「いやあ、これぐらい」

 

 気をよくしたネモトマンはシャドウボクシング。

ネモトマン「やったやった。おれはヒーローだ」

 安心した様子のカミタマン。

ネモトマン「もしかして立ち直ったネモトマンの姿を見て、感動なんかしちゃったりして」

カミタマン「じょじょじょ冗談でしょ」

 ネモトマンとカミタマンが追いかけっこをしていると……モスガが女子高生たちに缶ジュースを配っている!

モスガ「はーい。これはさっきのお芝居のお礼」

 驚くカミタマン。

ネモトマン「がーん」

 ショックで倒れるネモトマン。モスガと女子高生は「♪空に燃えてるでっかい太陽」と唄う。カミタマンは怒ってブーメランを発射。モスガはこけ、女子高生たちは逃げる。

カミタマン「お前が女子高校生を使ってくだらない芝居をするから!」

モスガ「モスガはただネモトマンに元気出してほしいから」

カミタマン「それが余計なお世話だっていうんだ」

 カミタマンはモスガを叩く。ネモトマンは「やめろ」と怒鳴る。

ネモトマン「それ以上やると、ネモトマンがみじめになるだけだ」

 ネモトマンはカミタマンを投げ、カミタマンは「うわあ」と木に激突。やがてカミタマンとネモトマンは抱き合って泣く。「おれってどうしてこうバカなんだ」とモスガは飛び立つ。追っていくネモトマン。

モスガ「おれなんかこの町にいないほうが」

ネモトマン「そんなことない。この町にはネモトマンよりモスガのほうが」

カミタマン「おい、ふたりともいい加減にしろよ」

 カミタマン、ネモトマン、モスガは砂の中へ墜落。砂まみれで笑い出すネモトマン。

ネモトマン「おめえもきたねえ顔してんな」

カミタマン「ふたりとも同じような顔のくせに」

 

 夕日が差し込む居間で新聞を読むパパ(石井愃一)。向こうにママ(大橋恵里子)とマリ(林美穂)がいる。

パパ「伸介もカミタマンもモスガも遅いじゃないか」

ママ「ほんと。何やってんのかしらね」

 

 布施明「貴様と俺」の流れる夕暮れの土手で、ネモトマンとカミタマン、モスガは元気に遊ぶのだった。

【感想】

 第21話から3本連続でモスガメインのエピソードがつづいて、この第23話で落ち着くことになる。前回の第22話が濃厚だっただけに今回は比較的ゆる目の回だが、細かいねたに加えて演出も凝っており、スタッフ・キャストに油が乗り切っている。

 ネモトマンが仕事をさぼっていたら、あっという間にそのポジションがモスガに入れ替わっていたわけだけれども、悪い奴を倒してくれという依頼かと思えば泥棒から警官との戦いを手伝ってくれと頼まれたり、戦争を調停するために戦場に出向いたりとオファーの内容も飛んでいて驚かされる(そもそもネモトマンは第18話で寿司やおでんと戦っていたが)。

 中盤で女性が男性をいじめており、浦沢義雄脚本では『ペットントン』(1983)の第31話や『TVオバケてれもんじゃ』(1985)の第5話など男性虐待はギャグ的に繰り返し描かれていたので定番だけれども、しかし今回は暴行にとどまらず男の子がリカちゃん人形(本作のスポンサー・タカラの商品)の話題に花を咲かせたり、女の子が「おれカツ丼食いてえ」と言い出したり、小学生がジェンダー撲滅状態で80年代としては衝撃的だったであろう。おそらく浦沢先生はありきたりでない面白さを狙って男女を入れ替えたり、先述の通り泥棒に警官を悪い奴呼ばわりさせたりしたと想像されるが、結果的に男女や善悪を相対化した風刺性・批評性が生起している(男の子がリカちゃんを愛好しても何らおかしくないし、泥棒の見た目をした男が善人で警官が悪人だった可能性もある)。

 ネモトマンとモスガが空に飛び上がって何となく和解してしまうのは、アイディアや話の展開を重視して人物像や心情は描こうとしない浦沢脚本のポリシーを感じさせる。

ペットントン

 根本家でネモトマンがショックを受けて床に倒れる場面では階段の上にいるカミタマンが、カメラが下を向くと床にいる。2体の人形を使ってワンカットの長回しで処理しており、カミタマンの実在感がさりげなく強まっている。

 後半でカミタマンが激昂して『相棒』(2000~)の杉下右京ばりにわなわな震えるが、その操演の巧みさには感嘆。

 「やだやだやだ」と熱演する岩瀬威司氏には今回も笑わされる一方で、モスガの高木政人氏は『ペットントン』のころに比べてあまりオーバーな動きをしない演技で円熟している(序盤で高いフェンスに登っているのもすごい)。

 暴行する女性役はテレビ『機動戦士Zガンダム』(1985)や『ちびまる子ちゃん』(1990)、映画『となりのトトロ』(1988)などで声優として知られる水谷優子氏。不コメでは『じゃあまん探偵団魔隣組』(1988)の第6話にも出演している。

 乱闘する泥棒と警官は田中耕二・坂口進也両氏。アクション系の俳優でないだけに、武骨でない肉弾戦はコミカルで面白い。田中氏は不コメでは『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第13話、『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)の第27話、『うたう!大龍宮城』(1992)の第8話に出演。坂口氏は本作の第35話にも登場するほか『じゃあまん探偵団魔隣組』の第1話にも出演している。

 野球少年の太田速人氏は『時空戦士スピルバン』(1986)のレギュラーを務め、不思議コメディーシリーズでは『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)の第43話に出演。

 暴行される少年役の値賀忠士氏は『超電子バイオマン』(1984)の第24話に出演したほか、『兄弟拳バイクロッサー』(1985)にレギュラー出演した。

 老人役の高杉哲平・飯田テル子両氏は第13話にも揃って出演しており、その際は足もとがおぼつかなかったのに対して今回は矍鑠と喧嘩していたゆえ、おそらく別人の設定だと思われる。