『勝手に!カミタマン』研究

『勝手に!カミタマン』(1985〜86)を敬愛するブログです。

第14話「親孝行の三大原則」(1985年7月7日放送 脚本:浦沢義雄 監督:大井利夫)

【ストーリー】

 2階のベランダでカミタマン(声:田中真弓 人形操作:田谷真理子、日向恵子、中村伸子)は空を見上げていて「うわあ」と転落。そのまま「あいてて」と1階に入ると、ママ(大橋恵里子)に留守番を命じられる。

カミタマン「雨降る!」

 カミタマンは傘を飛ばしてママに渡す。ママが外へ出た途端、雨が降り始める。ママは「嘘…」と傘を差すが、バケツをひっくり返したような雨が降ってきて、傘が破れる。ママはずぶ濡れになって怒り出す。

 カミタマンは、伸介の部屋のドアを机や椅子でふさいだ。「カミタマン、開けなさいよ!」とママの声が聞こえる。焦ったカミタマンは地球儀やヘルメットなども使ってふさぐ。

カミタマン「うーやだやだやだ」

 

 下校する伸介(岩瀬威司)を横山(末松芳隆)が呼び止める。

伸介「何だよお」

横山「ちょっとちょっとちょっと」

 横山は「いいでしょう?」とランドセルからローラースケートを取り出す。

伸介「横山、お前1日何回見せれば気が済むの? 休み時間の度に見せびらかされてんだよ、おれ」

 アイスを食べながら閉口した顔で帰る伸介と、横山。

伸介「横山、お前ローラースケート滑れんの?」

横山「いいえ、滑れません。でもこのローラースケートいいでしょう? いいでしょう? ねえ見てよ」

 しつこい横山。

横山「このローラースケート、人がせっかく親孝行して手に入れたのに」

伸介「親孝行!?」

横山「つめたい、つめたすぎる。根本の心はきっとアイスノンなんだ」

 アイスノンを持って微笑んでいる伸介。

伸介「親孝行してローラースケート手に入れた?」

 

 帰宅した伸介は、カミタマンの築いたバリケードを片づける。

伸介「いるわけないじゃん。親孝行されてローラースケート買ってくれる親なんて」

カミタマン「ああ?」

伸介「だいたい親孝行って、法律で禁止されてんじゃないの」

カミタマン「伸介、お前親孝行についてなんか完全に誤りを犯しとるんじゃ」

伸介「親孝行だろ。長い石の階段を、お母さんをおんぶして、子どもが登っていく」

 

 ママをおんぶして石段を登る、伸介の壮絶な姿。

 

伸介「あれだろ」

カミタマン「そうだよ、あれだよ!」

 

 お遍路さんが地蔵に鈴を鳴らしている。ママをおんぶして運んできた伸介は、ママを下ろして投げ棄てる。晴れやかな笑顔を見せる伸介。その窪地にはポリ袋や老母がたむろして「ゴミ捨て場」と書かれている。

 「バカ!」ととんかちで伸介を叩くカミタマン。

カミタマン「親をゴミといっしょにする親孝行がどこにあるんだよ」

 カミタマンは「この歳になるまで親孝行を知らないで生きてきたのか。伸介、もう一度よく考えろ。親孝行というものがいったいどういうものなのか」と叱責する。

伸介「考えるよ、考えればいいんだろ」

 考える人ポーズ、座禅ポーズなどで黙考する伸介。やがてベッドで横になる。

カミタマン「親孝行だぞ」

 逆立ちした伸介は「もうダメだ」と叫ぶ。

伸介「こんなに考えたの久しぶりだ」

カミタマン「ぽげ」

 「頭痛い」と伸介は寝込む。カミタマンは「親孝行も知らない子どもたちに親孝行を教えてやろう」と宣言。

 

 「親孝行講座(時代劇編)」と題された映像が始まる。大学教授ふうのカミタマンが登場して講義を始める。

カミタマン「親孝行には3つの原則がございます。まず ①手伝う、②ねぎらう、③甘える。あーこれを親孝行の三大原則と申しております。レッスンワン!」

 和室で時代劇っぽい女性(柴田理恵)が拭き掃除していると、カミタマンが来る。

カミタマン「母上、手伝いましょう」

 微笑む女性。「よいしょよいしょ」と拭くカミタマン。

 

カミタマン「レッスントゥー。ねぎらう」

 夕日が差す和室で女性が編み物をしていると、カミタマンが「母上、お疲れでしょう」と来る。

カミタマン「たんとんたんとん」

 カミタマンが肩を叩くと、女性は「この子ったら」と目頭を押さえる。

 

カミタマン「レッスンスリー。甘える」

 夜のふけた和室で、カミタマンが「母上、いい香りです」とくっつく。

 

 居間で講義のビデオを見ている伸介とカミタマン。

カミタマン「わかったか、伸介? 親孝行というものはだな」

 ひっくり返る伸介。いつのまにか寝入っていた。

 

 公園で、さっきのビデオと同じ女性(柴田理恵)が洋装で爪を切っていた。

カミタマン「親孝行、レッスンワン」

 伸介が「手伝い」と女性の前に進み出る。

伸介「手伝いましょうか」

 「何よ」と困惑する女性。伸介は足をつかむが、女性に「気持ち悪い子ね」と蹴飛ばされる。

 

カミタマン「親孝行、レッスントゥー」

 伸介が「ねぎらう」とまた女性の前へ。女性はお菓子をもぐもぐ食べている。

伸介「お疲れでしょう」

 伸介は女性の口にお菓子を押し込み、頭と口を押さえて噛ませる。女性は「何すんのよ、この子は!」と伸介の口にお菓子を詰め込んで逆襲。

 

カミタマン「親孝行、レッスンスリー」

 伸介が「甘える」とまたまた女性の前へ。女性は雑誌を読んでいる。

伸介「いい香り」

 女性はうんざり顔。伸介は寄りかかるが女性は避ける。

伸介「いて」

 そのうち「いて」とベンチから落ちる伸介。女性は「変な子ね」と行ってしまう。

 

 居間で掃除機をかけているママ。伸介とカミタマンが庭からのぞく。

カミタマン「親孝行がうまくいけば、伸介もローラースケート買ってもらえるかもしれないぞ~レッスンワン」

 伸介は「ママ手伝ってあげる」と勇んで来るが、ママは「いいの、もう終わったから」とつめたい。「いて」とこける伸介。

カミタマン「レッスントゥー」

 ママが麦茶を飲んでいると、伸介が「疲れたでしょう」と肩を揉む。「ちょっと」とママは迷惑そうに伸介を突き飛ばす。

伸介「いて」

カミタマン「レッスンスリー」

 伸介は「ああ」と意気阻喪の表情。ママがうちわで扇いでいると伸介が「いい香り」と近づく。ママは「暑苦しいのよ」とうちわで伸介の顔を叩く。伸介は冷蔵庫にぶつかり、上から物が落ちてきて、さらに伸介の頭に当たる。

カミタマン「あじゃぱー」

 伸介は「おれ、親孝行なんて大っ嫌いだ!」と行ってしまう。

ママ「どうしたの」

 カミタマンに「伸介がせっかく親孝行しようと思ってたのに」と言われたママはちょっと驚く。

 

 道を駆けてきた伸介は「親孝行なんて!」と自販機の前でやけジュースを飲む。

 

 ママは「知らなかった、ああ」と愁嘆場。呆れるカミタマン。

 

 伸介が大量のやけジュースを飲みまくっているとカミタマンが来て、ママがもう一度親孝行をしてほしいと伝える。

 

 ジュースの飲みすぎでふらふらの伸介とカミタマンが帰宅。すると無駄にお洒落したママが。

ママ「ハーイ、伸介。遠慮しないでしっかり親孝行してちょうだい」

カミタマン「伸介、ここは勇気を出して」

伸介「どうして親孝行するのに勇気がいるの」

 だが伸介はそっぽを向く。

伸介「どうしても照れちゃう」

 「ママ、ごめん」と伸介は逃亡。

 

 伸介はさっきの自販機でまたジュースを激しい勢いで買おうとするが、カミタマンが伸介の足をつかむ。

カミタマン「伸介、やめろ。ジュースの飲みすぎは糖尿病のもとだぞ」

伸介「がく」

 

 ママは玉ねぎを切って、よよと泣き崩れる。そこへがしゃんと音が。

ママ「せっかく親孝行してもらえない悲しい母親やってたのに 」

 

 庭で植木鉢が壊れていた。

 「すいません」とソフトボール選手のとらばる聖子(小出綾女)が現れる。聖子はボールを取ろうとするが、ママは渡さずに受け木鉢の破片を見せつける。マリ(林美穂)が「ただいま」と帰宅。

 

 公園の池に足を浸している伸介。

カミタマン「そりゃそうだな。親孝行なんて突然やれば照れるに決まってるもんな」

伸介「親孝行がこんなに難しいもんだとは思わなかったよ」

 伸介は「仮面かなんかかぶってやれば」と考える。そこへマリが「うちでママととらばる聖子が」と走って来る。カミタマンは「照れないで済む親孝行のやり方」を思いついた様子。マリは「すぐ来て」と帰っていく。

カミタマン「伸介、正義のスーパーヒーローに照れはない。ネモトマンになって親孝行の練習してコツさえつかんじゃえば」

伸介「なるほど」

 カミタマンは伸介をネモトマンに変身させる。

 

 庭でママととらばる聖子の争いはつづき、マリは「やめなよ、ふたりとも大人なんだから」と止める。

ママ「この植木鉢ね、100万円もしたんですからね」

聖子「何よ、こんなもん。たかが縁日で30円ぐらいのものでしょう」

 聖子は破片を放る。そこへ「私は争いを憎む」とネモトマン(岩瀬威司)が。

聖子「それがどうしたの」

ネモトマン「どうもしません。どうもしませんけど」

 ネモトマンは聖子にキック。

 

 ネモトマンは「おばさん、こちら」と外へ逃げ、聖子は追って行く。ネモトマンがかがむと、聖子は思わず馬飛びをして壁に激突。

ネモトマン「正義は必ず勝つ」

 

 庭でママが植木鉢の片づけをしてると、ネモトマンが「手伝いましょう」とちりとりで掃除。ネモトマンは「お疲れでしょう」と椅子を持ってきて、ママを座らせ、電気マッサージをするのだった。

ネモトマン「いい香り」

 ネモトマンはママに膝まくらする。

ママ「いい子ねえ」

 見ているマリは「バッカみたい」。

 公園で「うまくやってるかな」と気を揉んでいるカミタマン。すると伸介が「わっ」と現れてカミタマンを驚かせ、親孝行は大成功だと告げる。

 

 食卓で「親孝行されるって素直な気持ちでいれば簡単なのね」と嬉しげなママに、マリは「ああ、そう」。 

 パパ(石井愃一)が帰宅。

 

 夕暮れどきの公園。

伸介「カミタマン、親孝行してお小遣い値上げしてもらったら、お前にもごちそうしてあげるからね」

カミタマン「ああ、期待してる 」

伸介「じゃあ親孝行してくる!」

 走り去る伸介。

カミタマン「親孝行か、したくったってできない奴だっているんだ

 夕陽のさす公園で音楽に合わせて踊るカミタマン。「♪夕焼け小焼けの赤とんぼ」と歌っていると、またマリが「お兄ちゃんが」とと走って来る。

 

 根本家では伸介が「親孝行なんだから」とパパにつかみかかっている。

パパ「お前の親孝行、気持ち悪いよ」

 伸介がパパの鼻ほじりを手伝おうとしたら、パパはびっくりして指が抜けなくなったのだった。マリは「やめなよ」と止める。

カミタマン「親孝行ってのは難しいなあ」

【感想】

 第6話のスカートめくりにつづいて?今回は親孝行が主題。伸介が親孝行に挑戦してなかなか上手くいかないという構造は6話のスカートめくりとほぼ同様で、6話ほどのクレージーさはないものの親孝行を揶揄しつつも奨励しており、真っ当で安定感のある話だと言えよう。浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは『ペットントン』(1983)の第17話では親孝行が既にねたにされていたが、メインテーマに取り上げるのはおそらく今回が初。またパパやマリに比べて出番の少なめなママが中心のエピソードなのも稀少であろう。

ペットントン

 親孝行に励む動機が小づかいの昇給というのはいかにも生々しいけれども、子は親を「手伝う、ねぎらう、甘える」というのをまずは柴田理恵氏の出演する教育ビデオで見せ、伸介が同じ柴田氏を相手に実践するさまで笑わせ、その反復ギャグの洗練には唸った。開陳される三原則自体はそれなりに道徳的で、後半ではママを相手に親孝行して成功するあたりは意外なほどの良識を感じさせる。親孝行っぷりにマリが「バッカみたい」とつぶやくのは、喧嘩を仲裁するような大人びた彼女の心理的に引いた性格を描いているとも解釈できるし、あるいはべたな親子愛に対してやや懐疑的な視線を制作者が投げかけているのかもしれない。

 伸介もママもいざ親孝行をしようとすると白けたり素直になれなかったりして噛み合わないが、仮面をかぶったネモトマンの姿だとお互いに上手くいく。つまり別人だと設定すれば真情が表現できるわけで、フィクションというフィルターを通して真実を語るという文学の効能を示しているともとれる。このメタフィクションの趣向は、ネモトマンとマリによって第28話でも再演されている。

 前半では老親をポリ袋といっしょに投棄するのは驚きで、この約10年前のバラエティ番組『カリキュラマシーン』(1974)の中に浦沢先生は死体を生ゴミ扱いするギャグをねじ込んでいたけれども、今回はその発展形だと言えるだろう。また近い時期に姥捨てを描いた映画『楢山節考』(1983)がヒットしていたので影響があったとも考えられる。

 横山はローラースケートを1日中伸介に自慢していて、学校で伸介以外に誰からも相手にされないことが暗示される(横山の孤独は第28話でも改めてギャグにされている)。

楢山節考

楢山節考

  • 緒形拳
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 大井利夫演出はとらばる聖子がネモトマンを追いかけるシークエンスでネモトマンが一瞬、姿を消して高所に現れるのをワンカットで撮っており、その後の追跡も映像が単調にならないように画角が凝っている。聖子が壁に激突するシーンでは一度壁にぶつかった後で、演じる小出綾女氏にガラスに顔を押しつけさせてぶつかった様子を表現。面白いが、演じる側は大変だなと思わせる。

 夕暮れどきにカミタマンが踊ったり歌ったりする場面は、親と離れているカミタマンの淋しさを描いているのだろうが必然性はなく、事情としては分数が足りなかったので埋めるために挿入したのだろうと想像される。しかし公園で音楽に合わせて踊り、「夕焼け小焼け」をちょっと歌うことで破綻を感じさせずに押し切ってしまうのは大井演出の技術を感じさせた。大井監督は1984年に『ペットントン』の終盤でデビューし、本作の時点ではキャリアがまだ1年と少しだったにもかかわらず熟達している。

 ビデオに出る女性と公園で伸介の練習の標的にされる女性は、先述の通り柴田理恵氏。第9話ではラーメン屋役だったが今回と第25話ではそれぞれ別人の役で登場し、第30話ではまたラーメン屋を演じている。

 夕暮れでカミタマンが踊るのは所沢航空記念公園にあるステージで、この場所は不コメでは『ペットントン』や『どきんちょ!ネムリン』(1984)などでも使われている。